『ニッキン』2025年3月21日号「金融界、サロン破綻警戒 消費者庁が初注意喚起」
◆『ニッキン』2025年3月21日号の表紙

◆『ニッキン』2025年3月21日号の19面(弊社コメント有)

金融専門紙『ニッキン』の特集記事「金融界、サロン破綻警戒 消費者庁が初注意喚起」にて、金融機関の事情をよく知る弊社が、専門家としてコメントをしております。記事では、サロンや学習塾といった前受金ビジネスの破綻件数が増加したことで、消費者庁が初めて注意喚起を出したこと、また、それに伴い、融資する金融機関側の姿勢にも影響が出ていることが記載されています。日々、経営者の融資のご支援をする弊社も、金融機関が前受金ビジネスの顧客に対して警戒をしていることをコメントしております。
また同時に、2025年3月23日のニッキンONLINEでも、同特集がトップ配信で取り上げられました。合わせて、ご覧ください。
<ニッキンONLINE 記事>※会員限定
金融界、サロン破綻警戒 消費者庁が初注意喚起
ニッキンに提供した、弊社の融資コンサルタントの「前受金ビジネス融資」についてのコメント
弊社に所属している、メガバンク・商工中金・地方銀行・信用金庫・日本政策金融公庫出身の融資コンサルタントから、以下のコメントを徴収しました。
金融機関にいたからこそわかる、リアルで生々しい情報を情報提供することができました。
前受金ビジネスの「融資の必要性判断」
前受金ビジネスのエステサロンを担当していたことがありましたが、設備資金に対する融資、もしくは設備資金を手元から出してしまったことによる資金不足に対する融資(要は設備資金のバックファイナンス)が主でした。特に前受け金でまとまってお金が入ってくるため、設備導入を手元の現金でやりがちな業種であとからお金が足りないということがよくあるので、都度都度設備は融資で対応するように依頼しておりました。
※運転資金で借りて、それを設備資金に回してしまって資金繰りに窮するというケースもある。そうなると、運転資金の枠が逼迫してしまって詰むということがある。そのために、運転資金を設備資金に付け替える(=バックファイナンス)ことで、資金繰りを支えるという手法が発生する。
前受け金の処理がキチンとできた上で増加の運転資金(人件費や諸経費等)が必要とあれば、それはそれで対応しています。製造業のように、「売上が増加するから先払いが増えて、増加運転資金で調達」というより、業績が上がって、人件費や広告費が追加で必要だから、といったロジックで運転資金調達することが多い。
前受金ビジネス「倒産を防ぐ方法」
前受け金はあくまで負債勘定のため、途中退会等による返金リスクがあることを踏まえ別勘定(別口座)で管理し、施術(受講)の進捗に応じて売上計上することを依頼してました。(業界的には当たり前ですが、やっていない企業も多い)
前受金ビジネスの「融資の必要性判断」
資金使途の妥当性がポイントかと思います。一般的に前受金ビジネスは、経常運転資金が殆ど存在しないので、通常の年度資金として運転資金を調達するのはややハードルがあります(設備資金は収益償還なので別途)。
したがって、売上が急拡大するタイミングや投資・経費が先行するタイミングにおける所謂増加運転資金(前受金でカバーしきれない部分)であれば、資金使途として認められるケースが多いです。
一方で、業績が良ければ、前受金でキャッシュリッチだったとしても、上記ロジックに関係なく貸してくれる先はあろうかと(一方で、最近当該業種の倒産が相次いでいるので、倒産経験のある金融機関は、無関係に当初からかなり懐疑的にみられます。)
前受金ビジネス「倒産を防ぐ方法」
キャッシュフローコントロールに尽きると思います。具体的には財務モデルを作成し、月次でPL/BS/CFを更新して、毎月ケース分析を行います。経常支出がマイナスの場合、ランウェイの確認や広告の投資効果がどの程度に達すれば、キャッシュが回っていくのかなどを分析します。
あとは、借りれる時や業績が良いタイミングでできる限りのローンを調達しバンクフォーメーションを固めておくことですかね。この手の業態さ業績が悪化したら、そもそも再建するのが至難の業なので、貸し渋りが生じると思いますので。
前受金ビジネスの「融資の必要性判断」
前提として、前受金ビジネスにおいても人件費は先行して発生しますので、融資が必要と判断するケースとしては、「創業期や成長期で人員を拡大している際に先行して発生する増加人件費」が主に融資が必要であると判断します。
人件費以外、例えば家賃負担などの人件費を除く経費支払い資金の申込では、赤字補填資金として見られやすいので、人件費以外の経費は融資として認められないかな、と思います。
前受金ビジネス「倒産を防ぐ方法」
私の今までの経験で言えば、会計処理のミスによる倒産といった経験はないです。一方で、事業拡大を行って、手元資金が枯渇し、倒産はありました。
ただ、原因は根本的には競争力の低下により、事業拡大したが売上が増加せず経費(主に人件費)負担が増えて、資金繰りが悪化するパターンがほとんどですので、倒産を防ぐための助言としては、以下のとおりです。
- 事業ポートフォリオの見直し
- 中長期の計画作成
- 資金繰り表の作成
上記を実行すれば、倒産といった最悪の状況は避けられると考えます。 ポートフォリオ見直しでは、今は補助金もたくさんあるので、積極的に見直しをしていくべきだと考えます。
前受金ビジネスの「融資の必要性判断」
以下のケースでは融資が必要。
- 事業規模拡大や生産性向上のための新たな設備投資が必要な会社
- 新たに店舗を出店する場合(店舗等の設備や軌道に乗るまでの運転資金)
- 余裕がある会社が社員の社宅建設や収益物件を購入する場合
- 赤字補填や事業再生を行いたい時(但し、資金繰り管理をしている、かつ長期的な展望がある企業限定)
何も考えず、単に赤字の補填をしたい場合は、融資を案内しませんが、経営者が本気で立て直せると考えており、そのために資金が必要な場合は、応援します。 実際に融資が通るかは経営者の人柄、財務内容、担保の有無、今後の展望をメインに会社によって違うと思います。
前受金ビジネス「倒産を防ぐ方法」
私の経験上、以下の2つのケースが多いです。
- 資金繰り管理ができていない
- 資金繰り管理はできているけど、行動が伴っていない(考えすぎて行動できていない)
そのため、「1.」に対しては、まず資金繰り表の作成を案内します。その後、現状の資金繰り分析やそこから資金繰りの月次目標を計画し、資金繰りを管理する体制をつくります。
「2.」に対しては、資金繰りの目標を達成するための行動計画を立てます。1年後の目標、次回面談時までに行う目標のように行動目標を設定し、資金繰り改善を図れるように案内します。
また、上記のような状態に陥ることが多いのは、創業時や2店舗目以降の出店時が多い印象です。その場合は、採算が合うかどうかの事前のシミュレーション不足(事前に損益計算書を作っていない)のことが多いように感じます。私に相談があった場合は、事前にシミュレーションを行い、財務面から事業運営が問題なくできる場合に、出店を案内しています。