セール&リースバックのメリット・デメリット|融資との違いも解説

「日本政策金融公庫」や「銀行」、「信用金庫」、「商工中金」からの資金調達は、知識・経験なく「何となく」で進めると必ず失敗します。資金調達の成功には、金融機関の幅広い知見と一定のノウハウが欠かせません。

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セール&リースバックとは、不動産や機械、機器、設備、自動車などを売却することでまとまった資金を手に入れる方法です。売買契約と同時に資産のリース契約を行い、リース料金を支払うことで、一定の期間資産をいままで通り使い続けることができます。

セール&リースバックのメリットは、下記の5つが挙げられます。

  • 短期間で資産現金化
  • 売却後の資産をそのまま使用できる
  • バランスシートのスリム化
  • コストの平準化
  • 周囲の人にバレずに売却ができる

ただし、下記のようなデメリットもあるため、活用は慎重に検討しましょう。

  • 売却価格は割安になってしまう
  • リース料が若干割高
  • リース契約が更新できないこともある

今回は、セール&リースバックについて、その仕組やメリット・デメリット、借入(融資)との違いや、活用ポイントなどを詳しく紹介します。

目次

セール&リースバックとは

考えている人たち
セール&リースバックとは、所有している資産(不動産や機械、設備、車など)を売却したあと、売却した資産をリース物件として賃借する賃貸契約付き売却のことです。

まとまった資金を入手しながら、売却後も同じ資産を活用できます。

例えば、不動産を売却して資金調達したいが、オフィスを売却したことを世間にバレたくないというケースで考えてみましょう。

セール&リースバックなら、まとまった資金が手に入るうえ、リース料を支払えば売却した不動産をオフィスや倉庫としてそのまま使用できるため、今まで通り事業を続けられます。

セール&リースバックの仕組み

電球
まずは、まとまった資金が必要な企業が、不動産会社などセール&リースバックを行っている業者に、所有している資産を売却します。売却する資産の種類によって、申込み先のリース業者も変わってきます。

申込みをする際は、次のような情報や必要書類を提出し、審査を受けます。

  • 売却希望価格
  • 希望のリース期間
  • 資産の現状(購入価格)
  • 企業の経営状況(決済書の提出など)

審査に無事通過すれば、リース業者から「買取価格」や「リース料」、「リース期間」などが提示され、条件に問題がなければ、リースバック業者と売買契約を結び、この売却代金で、企業はまとまった資金を手に入れることができます。

また、売買契約と同時にリース契約を行い、毎月の賃料を支払うことで、売却した資産を一定期間賃借できます。

期間については、不動産の場合で2〜3年の定期リース契約が一般的です。多くの場合は、契約の再延長の相談が可能です。

セール&リースバックできる資産の種類

パズル
セール&リースバックできる資産は、不動産や設備、機器、自動車などさまざまです。セール&リースアップ対象となる主な資産は次のとおりです。

1.不動産

戸建てやオフィスビル、マンションほか、店舗、工場、駐車場、土地などが対象です。不動産でセール&リースバックすることを、「不動産リース」と呼ぶこともあります。

2.機器

パソコンなどの情報機器や、コピー機やシュレッダーといった事務用機器などのオフィス関連の機器ほか、医療機器や商業機器、コンテナーなどの輸送用機器などさまざまなものがあります。

3.機械

クレーンなどの土木建設機械や、食品加工、印刷機などの産業機械、溶接機などの工作機械も含まれます。

4.設備

スポーツジムなどに設置されているトレーニングマシンやパチンコ設備、自動販売機などのサービス機器もセール&リースバックの対象です。

5.自動車

自家用車から運搬用トラック、バイク、そのほかブルドーザーなどの特殊車両もセール&リースバックできる資産に入ります。「オートリースバック」と呼ぶこともあります。

セール&リースバックと借入(融資)の違い

考える人
企業の資金調達方法の1つとして、セール&リースバックと比較されることが多いのが、借入です。借入は、金融機関、または公的機関から期限付きで融資を受け、元本+利息を返済していく資金調達方法です。

銀行からの借入は、比較的審査基準が高い反面、利便性が高く、融資を受けることで対外的な信用を獲得することができます。さらに銀行以外でも、日本政策金融公庫の公的融資は創立したばかりの中小企業でも審査が通りやすく、銀行よりも低金利です。

このほか、不動産を担保にした不動産ローンほか、自宅を担保に融資を受けるリバースモゲージなど、借入方法もさまざまです。借入は負債となるため、融資を受けた分だけ自己資本比率が下がります。(銀行などの金融機関は、自己資本比率自体はあまり気にしていない傾向ですが)

また、融資を受けるまでにさまざまなプロセスが必要で、資金調達までに時間がかかる点もデメリットといえるでしょう。

しかし、銀行、公的機関、信用金庫、制度融資など、融資先の選択肢が多く、セール&リースバックよりも利息負担が少ないという大きなメリットがあります。

また、不動産ローンやリバースモゲージの場合は、売却することで資産の所有権が移転してしまうセール&リースバックと違い、資産の所有権を手放さずに融資を受けることができます。

銀行や公的機関から融資を受けられる状態の企業であれば、

  • 「銀行からの融資枠を残したい」
  • 「短期間でまとまった資金調達が必要」

など、特別な理由がない限り、借入による資金調達を選択するのが一般的です。

セール&リースバックで資金調達する6つのメリット

数字の6
セール&リースバックでの資金調達には、さまざまなメリットがあります。最大のメリットは、資産の迅速な現金化と、売却後の資産を継続して使用できる点でしょう。

このほかにも、セール&リースバックには、さまざまなメリットがあります。それぞれ詳しく見ていきましょう。

1. 短い期間で現金化できる

セール&リースバックは、時間をかけずにまとまった資金を入手できます。

いつ買主が見つかるかわからない不動産売却やプロセスが多くて手続きに時間がかかる借入と違い、リース業者に直接資産を売却できるからです。

すぐにまとまった資金が必要な場合は、短期間で現金化できるセール&リースバックがおすすめです。

2. 売却した資産をそのまま使用できる

セール&リースバックは売買契約と同時にリース契約を交わし、リース料を支払うことで売却した資産をそのまま使い続けることができます。

たとえば、オフィスの売却した場合、売却代金でまとまった資金を手に入れながら、移転先を決めたり引っ越しをする手間が必要ありません。売却したオフィスで事業を継続できます。

3. バランスシートのスリム化を図れる

セール&リースバックによって資産を売却することで、バランスシートのスリム化にもつながります。

固定資産を現金化し、その資金を借入などの債権に充てれば、不要な固定資産税などの維持管理の負担を軽減するほか、借金が減ることで自己資金比率や総資産回転率などがアップするなど、資本効率の向上や財務体質の改善を図れます。

企業の財政体質が改善されれば、銀行からの融資も受けやすくなるでしょう。

4. コストの平準化で経理作業の効率化を図れる

不動産などの資産を所有していると、固定資産税や減価償却費、保険料などの資産維持コストが発生します。

これらは毎年納める金額に変動があるため、経理作業に手間がかかります。セール&リースバックによって、資産の所有権が移動すれば、このような経費を支払う必要がなくなり、毎月決められたリース料を支払うことになります。

支払い額が固定されればコストを平準化でき、資産計画が立てやすくなるでしょう。

5. 周りにばれることなく売却できる

セール&リースバックは、資産の所有者とリース業者のあいだで取引が行われるため、公な売却活動が必要ありません。そのため、周りに知られることなく資産の売却を売却することが可能です。

ローンの返済が滞ったなど、金銭的な問題で売却を余儀なくされた場合、周囲にその事実を知られたくない場合もあるでしょう。

セール&リースバックであれば、周囲に気づかれないまま資産を売却し、その後のその資産を手元に置いておくことができるため、生活環境も変わりません。

6. 資産を買い戻せるケースもある

通常、売却した資産を再び自分の手元に買い戻すことは困難です。売却後、第三者の手にわたってしまうからです。

セール&リースの場合、一度売却してリース契約した資産を買い戻し、再び所有権を手に入れることが可能です。

一時的にまとまった資産が必要だが、資産を完全に手放したくない場合や、いずれ余裕ができたときに買い戻したと考えている場合に便利です。

ただし、買い戻し金額は、売却価格よりも1〜3割高くなることがほとんどです。

セール&リースバックで注意すべき3つのデメリット

綱渡りしている人
セール&リースバックでの資金調達には、注意しなければならない点もあります。主なデメリットは次の3つです。

1. 売却価格が相場の7〜8割程度になる

セール&リースバックで資産を売却した場合、通常の売買契約よりも売却価格が安くなることを事前に理解しておきましょう。

セール&リースバックで売却したときに売却価格を算出したい場合は、まずは市場の相場価格を確認し、その額の7〜8割程度と考えておくとよいでしょう。もちろん、資産の状態や買取を依頼するリース業者によって価格は多少変動します。

2. リース料の金利負担が高め

セール&リースバックは、資産を売却して現金化し、資産をリースとして月々のリース料を支払って使用します。リース料は金利負担が高く、銀行や公的機関から借り入れたときより利息が割高になる傾向があります。

セール&リースバックが、銀行や公的機関から融資を受けられない、銀行の借り入れ枠を残しておきたい、資産を使用しながらまとまった資金が欲しいときに適した資産調達方法です。

資産に余裕がある、銀行や公的機関からの借り入れができる企業には向いていません。

3. リース期間があり更新できない場合もある

セール&リースバックのメリットの1つに、売却した資産をリース契約によって継続して使用できるという点があります。リース契約には期間が設けられていることがほとんどで、業者によっては契約終了後の更新ができない場合があります。

リース期間終了後に、資産を売却する予定を立てていることもあるからです。セール&リースバックで売却する資産を永続的に使用したいという場合は、リース期間や更新の有無などをしっかり確認しておきましょう。

セール&リースバックの資金調達がオススメできる人

明るい電球を囲んでいる人たち
セール&リースバックを活用するなら、次のようなケースが良いでしょう。主な例を2つ紹介します。

1. 資産売却したら経営ができなくなってしまう人

まとまった資金が必要で資産もある、しかし、その資産を売却してしまうと経営ができなくなってしまうという場合は、セール&リースバックによる資金調達がおすすめです。

たとえば売却する資産が産業機械だった場合、毎月のリース料を支払うことで今まで通り機械を使用できます。

2. 調達資金を自由に使いたい人

セール&リースバックによって資産を現金化して入手した資金は、自由に使うことができます。

債権の支払いだけでなく、資金繰りが上手く行かなくなったことで苦しくなった生活を立て直すための費用ほか、大きな怪我や病気で経営が困難になった際の治療費、子供の教育費など、どんな使い道をしても構いません。


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セールス&リースバックでよくある質問(Q&A)

リースバック済みの資産でも、融資の担保にすることは可能でしょうか?

結論から申し上げると、資産を担保にして融資を受けたい際に、所有権がリースバック業者に移行している場合においては、融資の担保対象とはなない可能性が非常に高いです

ただし、融資を受ける際には、他の担保や収入状況などの要素も考慮されるため、具体的な融資条件・要件については、金融機関に直接お問い合わせするのが確実です。

また、リースバック済み資産を担保に融資を受ける場合、リースバック契約やリースバック業者との関係によっても担保対象可否の影響を受けることがあります。融資を検討される場合は、リースバック業者との契約内容や条件を確認し、専門家に相談するのが良いでしょう。

セール&リースバックは資金繰りが困難&資産を使い続けたい向きの資産調達方法

セール&リースバックは、資産はあるが資金繰りに困っている企業や、売却後の資産を継続して使用したい場合に向いている資金調達方法です。資産を売却することでまとまった資金を調達できるだけでなく、リース契約によって一定期間資産を継続して使用できます。

一方、リース料の金利負担が高めであること、リース期間が終了したあと、契約更新できない場合があります。

セール&リースバックを活用する場合は、リース料や期間などについてしっかり確認しておきましょう。セールス&リースバック以外にも、中小企業やベンチャー企業の資金調達方法はたくさんあります。

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