営業権譲渡とは?価格相場や資金調達のメリット・デメリット

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営業権譲渡とは、企業が既存事業の一部、または全てを他企業に譲渡するM&A手法です。譲渡する事業は売り手企業が自由に選択できるため、不採算な事業を譲渡し、その利益で新たな事業を立ち上げる、中核事業の立て直しを図るといったことが可能です。

営業権譲渡の価格は一般的に、

譲渡資産時価 + 営業権(事業の正常利益3〜5年分)

で算定します。この記事では、「営業権譲渡の価格相場」や、「営業権譲渡による資金調達のメリット・デメリット」について詳しく解説します。

目次

営業権譲渡とは

考えてる人営業権譲渡とは、企業が事業の営業権利の一部、またはその全てを他社に譲渡することを指します。株式譲渡と並び、代表的なM&A手法の1つです。

営業権譲渡は個別承継にあたります。そのため、契約が一部譲渡の場合は、譲渡する対象を自由に選択できるという特徴があります。株式譲渡とは異なり、企業を売買するわけではないため、経営権は保持したままとなります。

営業権譲渡と事業譲渡はほぼ同じ意味の言葉

営業権譲渡と似たような言葉に、「事業譲渡」があります。営業権譲渡と事業譲渡はどちらも「事業の売却」を表しており、ほぼ同じ意味と捉えてよいでしょう。

なぜ同じ意味合いの言葉が2つあるのかというと、2006年の法改正により、営業権譲渡から事業譲渡という名前に変更されたためです。

商法が適用されるシーンでは「営業権譲渡(営業譲渡)」、社会法が適用されるシーンでは「事業譲渡」と言葉を使い分けますが、一般的には、この2つを混同して使用することに特に問題はありません。

そもそも営業権とは?

なんだろう?と考えている人たち営業権とは、企業が保有しているさまざまな財産のなかで、営業権や特許権、商業権などの「無形固定資産」を保有する権利のことです。

営業権には、

  • 企業の社会的信用や伝統
  • 顧客リスト
  • 特殊技術
  • 取引先関係
  • 立地条件

などが含まれます。

無形固定資産は、現金預金や売掛金、固定資産などの「有形固定資産」とは異なり、はっきりとした数字や形のないものですが、企業の価値を高めるものとしてM&Aの評価基準として、非常に重要な要素となります。

営業権とのれんの違い

企業の価値を高める無形固定資産のついて、「のれん」と呼ぶこともあります。

営業権とのれんは同じ意味合いで用いることに特に大きな問題はありません。しかし、M&A価格を決める手順については、根本的な考え方が異なります。

まず、営業権は、対象となる企業の純資産(有形固定資産)に対して無形財産(営業権)を合算してM&A価値を決定します。一方、のれんは対象企業の総合的に評価して出したM&A価値から、純資産(有形固定資産)を引いた差額のことを指します。

営業権譲渡の価格相場は?

電卓を叩いている企業が営業権譲渡について考えた際、あらかじめ買取価格の相場を知っておきたいところでしょう。

営業権譲渡の譲渡価格は、

譲渡資産時価 + 営業権(事業の正常利益3〜5年分)

で算定するのが一般的です。

営業権は企業の資産価値だけでなく、企業の立場や置かれている状況などさまざまな要因によって評価が決まるため、算定方式も変わってきます。そのため、明確な価格相場を導き出すことは難しいでしょう。

営業権譲渡による資金調達のメリット

電球売り手側が営業権譲渡によって資金調達するメリットは、主に次の3つがあります。

1. 不採算の事業を切り離せる

営業権譲渡は、不要なコストがかかっている事業や負債がかさんでいる事業、似たような役割を持つ事業が重複しているなど、さまざまな問題によって不採算の事業を譲渡することで、企業にとって不要な組織を切り離すことができます。

営業権譲渡は売り手側が譲渡したい事業を選択できるため、存続させたい事業は残すといった調整ができる点も大きなメリットです。

不採算事業を譲渡して得た資金や分散していた人材は、企業の中核事業に充填することで、企業の発展につながるでしょう。借入先の金融機関から許可が得られれば、過剰債務を抱えた企業であっても、存続させたい重要な事業から債務を切り離すことも可能です。

金融機関の許可を得ないままこのような営業権譲渡を行うことは、違法行為にあたります。専門家に相談するなどして、正しく手続きすることが重要です。

2. 売却益でまとまった資金を調達できる

営業権を譲渡して得た売却益は、まとまった資金として新規事業や中核事業に充てることができるため、企業の事業拡大や収益向上に大変効果的です。

経営が思わしくない企業にとっては、営業権譲渡によって企業を立て直す大きなチャンスを得られます。

3. 既存事業を売却しながらも法人格を継続できる

企業が行っている事業のなかで、ある事業を譲渡によって売却しながらも、一部の事業については保有している法人格を継続させたい場合は、営業権譲渡がおすすめです。

企業の既存事業を全て譲渡する「全部譲渡」であっても、現在保有中の法人格で新規事業を立ち上げることが可能です。

営業権譲渡による資金調達のデメリット

営業権譲渡には上述したようなメリットがある一方、いくつかのデメリットがあります。手続きを行う前に、予めしっかり把握しておきましょう。

1. 譲渡後の事業制限(協業の禁止)

営業権譲渡をした売り手側の企業には、企業法21条1項により、競業避止義務が発生します。競業避止義務とは、営業権譲渡後20年間は同一または近隣の市町村で、同一の事業を再開すること禁じたものです。

また、買い手側と売り手側の双方が合意すれば、競業の禁止期間を20年から30年間に延長する特約を付帯することも可能です。

そのため、譲渡後その事業について可能性を見出したとしても、事業をすぐに再開することはできません。

2. 手続きが猥雑で時間がかかる

営業権譲渡のデメリットの1つとして、譲渡手続きに時間とコストがかかる点があります。

営業権譲渡によって事業を譲渡する際は、対象事業の関係する全ての契約手続きや、買い手企業への登記の変更などさまざまな手続きが必要です。契約が多ければ多いほど作業は猥雑になり、手間もかかるでしょう。

営業権譲渡に関する手続きをスムーズに済ませたい場合は、あらかじめ取引先や従業員、債務先に報告し、合意を得ておくことが大切です。

3. 従業員や取引先への説明が必要

営業権譲渡によって企業の組織が整理されると、譲渡された事業に関わっていた従業員の配置転換ほか、取引先への引き継ぎ、事業変換の報告などが必要です。

売却後の従業員が混乱や不信感を抱かないよう、また、取引先の信頼を失わないためにも、企業は営業権譲渡についての的確な説明を行うなど、従業員や取引先から理解を得られるような対応を求められます。

4. 譲渡益に税金がかかる

営業権譲渡によって利益が生じた場合、その譲渡益に対して法人税が課税されます。税率は30%程度で、譲渡益が高額であればあるほど税額も高くなります。

また、譲渡した事業が課税資産だった場合は、譲渡益に10%の消費税が課税されます。課税資産に分けられるものとしては、土地以外の有形固定資産、無形固定資産ほか、棚卸資産、営業権などがあります。

事業譲渡における営業権の評価方法(譲渡金額)

事業譲渡(営業権譲渡)の譲渡金額は、時価純資産額+営業権によって算定します。この計算式で使用される営業権は、事業の正常利益3〜5年分で計算するのが一般的です。

営業権を算出するために正常利益は、次の4項目のフローに沿って計算します。

1. 企業会計による企業会計の見直し

中小企業のなかには、税務会計によって作成した決算書の損益計算書に、経営成績が正しく反映されていないケースがあります。営業権をできるだけ正しく算出したい場合は、企業会計によって企業皆生を見直し、修正する必要があります。

2. 損益や支払い利息を省く

営業権を算出するには、撤退事業に関する損益や特別損益、一時的な損益ほか、支払い利息を省いておくと良いでしょう。

3. 役員報酬の確認や修正

役員への報酬や保険、経営者への地代家賃などを確認し、必要であれば修正しましょう。 

4. 営業権を確定する

最後に、企業会計による方式で損益計算書の見直し、修正を済ませたあと、営業権を算出します。

営業権譲渡による資金調達の基本的な流れ

歯車営業権譲渡によって資金調達する際の基本的な流れは次のとおりです。

 1. 買い手企業の選定をする

まずは営業権譲渡の交渉をする買い手企業を選定します。

買い手企業の候補を探す際は、M&Aアドバイザーなど、M&A専門の仲介業者に依頼するのが一般的です。営業権譲渡によって達成した自社の目的を明確に伝えることで、最適な買い手企業をピックアップしてもらいましょう。

買い手候補のなかから前向きに交渉したい企業を選定したら、外部に情報が漏れないよう予め、秘密保持契約を交わしたあと、機密情報を含めた話し合いを進めていきます。

2. 双方の意向表明と合意

秘密保持契約締結後は、営業権譲渡の交渉を進めることについて、売り手側と買い手側の経営者同士が面談し、双方の意向を表明します。

話し合いが進んで双方の意見が合うようであれば、売買内容をまとめた基本合意契約を結びます。大まかな売買内容が決まったら、基本合意契約を締結しましょう。

3. 買い手側のデューデリジェンス

基本合意契約締結後は、買い手側がデューデリジェンスを行います。

デューデリジェンスは売り手企業を査定することです。財務状況では簿外債務の有無や収益力などを確認し、法務面についてはコンプライアンスなどについて確認します。

買い手企業は、営業権を譲渡されたあとのリスクについても念入りに調査しましょう。

4. 条件交渉と営業権譲渡契約書の作成

双方の譲渡条件や価格帯などの交渉を行い、取締会議によって営業権譲渡の承認が下りたら、事業譲渡契約書を作成します。事業譲渡契約書には、営業権譲渡する日付、売り手側の株主に交付する対価とその算出方法、株主総会の日時などを記載します。

営業権譲渡契約書を作成する際の注意点は2つあります。

  1. 譲渡範囲を明確に提示すること
  2. 従業員の転籍・配置転換について定めておく

のちのちのトラブルを回避するためにも、この2つについてはしっかり明記しておきましょう。

このほか、営業権譲渡によって30%以上の純資産額増減がある、または売上高が前年比の10%以上増減が予想される場合は、国に対して臨時報告書の提出が必要です。営業権譲渡契約書の作成以外に必要な書類がないか、しっかり確認しておきましょう。

5. 株主への通知・公告&株主総会で承認を得る

営業権譲渡を行う際は、譲渡を行う20日前までに株主への通知・公告が必要です。

株主総会は売り手・買い手の双方で行い、営業権譲渡をする前日までに営業権譲渡契約の承認を得なければなりません。承認を得るには、議決権の3分の2以上を確保が必要です。

営業権譲渡に反対する株主が株式の買取を請求してきた場合、企業はそれに応じなければなりません。

6. 譲渡手続きを行う

最後に、営業権の引き継ぎのための名義変更や、譲渡代金を受け取るための手続きを行います。手続きが全て済んだら、営業権譲渡が完了します。


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営業権譲渡は譲渡する事業を自由に選択できる

「赤」「緑」「青」から選択している株式譲渡と並んで代表的なM&A手法である営業権譲渡は、譲渡する事業を自由に選択できるという特徴を持っています。そのため、不採算の事業を譲渡し、その譲渡益で企業の中核となる事業への充填や新規事業の立ち上げに投下するといったことができます。

営業権譲渡の評価方法は、時価純資産額+営業権によって算定します。営業権は事業の正常利益3〜5年分で計算するのが一般的です。

営業権の価値を左右するのは「無形固定資産」です。企業の成長・発展には、無形固定資産が企業価値を高めるための重要な資産であることを認識することが重要です。

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<外部参考サイト>
企業法:第二十一条 譲渡企業の競業の禁止

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