ベンチャーキャピタル(VC)から資金調達する方法や注意点を解説

事業を急成長させるため、ベンチャーキャピタル(VC)からまとまった資金を調達したいと考えている経営者の人もいるでしょう。

ただ、ベンチャーキャピタルとひと言でいっても、下記のように種類はさまざまであり、どこから、どうやって資金調達すればいいのかわからぬ人も多いでしょう。

◆ ベンチャーキャピタルの種類

  • 銀行系
  • 独立系
  • 証券会社系
  • 事業会社系

そこで本記事では、「御社の社外CFO」という財務・資金調達コンサルティングサービスを経営する筆者が、「ベンチャーキャピタルから資金調達する方法」について詳しく解説します。注意点も合わせてまとめているので、ぜひ最後まで読んでみてください。

記事の筆者
「岡島光太郎」の写真

著者プロフィール

  • 資金調達コンサル会社「(株)融資代行プロ」創業者
  • 財務・資金繰りコンサルティング「御社の社外CFO」創業者
  • 経営コンサル会社「(株)Pro-D-use」創業者
  • 中小企業の融資・補助金など資金調達支援の実績多数

これまでの支援実績
個人事業主 / 創業後スグの1人法人 / 売上300億の法人
資金調達額「100万円」〜「5億円」
あらゆる業界の資金調達 / 財務・資金繰りコンサル実績


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目次

ベンチャーキャピタルからの資金調達とは

ベンチャーキャピタルは、成長が予測できるベンチャー企業に出資して、上場することで出資資金の回収や利益を出す投資専門会社のことです。将来性の高い企業や市場に出資し、大きな企業に成長させることで投資した株価が何倍もの利益になることを狙います。

投資資金は投資家から集めているので、当然、資金を増やして投資家に返すことで成り立っているのです。そのため、投資する企業に将来性があるか、IPO(上場)の可能性があるか?などは厳しく調査が入ります。

また、ベンチャーキャピタルにも、スタートアップ段階のシードラウンドや、商品やサービスの提供が決まった段階のアーリーステージなど、投資先企業のステージに合わせた種類があります。

つまり、自分の会社に合ったベンチャーキャピタルを選び、申し込むところからスタートしなければなりません。

ベンチャーキャピタルからの資金調達は難易度が高いのですが、調達限度額はなく、返済義務もありません。そのため、多額の資金調達ができ、アドバイスやサポートも得られるなど多くのメリットもある方法です。

ベンチャーキャピタルから資金調達する方法

ベンチャーキャピタルから資金調達するには、自分の経営する会社に将来性があることを証明する必要があります。

具体的には、下記の項目を具体的に明示する必要があるのです。

◆ ベンチャーキャピタルに明示すべき項目

  • 明確なビジョンや差別化できる要素
  • 経営のスキル
  • 将来性のある市場
  • IPOや会社売却(バイアウト)の可能性

そもそもベンチャーキャピタルから出資を受けることは、そんなに簡単なことではありません。

筆者の知り合いの経営者は自力でベンチャーキャピタルから資金調達を成功させましたが、50社以上に連絡を取って、7社話す機会を得られ、うち1社から出資が決定する、といった具合でした。

つまり、数多くのベンチャーキャピタルにアプローチをする必要があることを覚えておきましょう。そして、ベンチャーキャピタル自身の投資スタンスや条件もあるので、それらと合致することが資金調達するために必要な条件になります。

ベンチャーキャピタルから資金調達する際に、押さえておくべき「事業の9つのポイント」

ベンチャーキャピタルは、経営者本人の素質を見抜くとともに、その経営者が運営する事業の将来性も見極めています。一般的に、ベンチャーキャピタルが見ている事業の9つのポイントは下記のとおりです。

◆ ベンチャーキャピタルが見ている事業の9つのポイント

  1. 市場
    • 魅力的な市場を狙っているのか?
  2. 顧客(ターゲット)
    • 本当に顧客は存在するのか?
    • その顧客が抱える課題は、お金を払ってでも解決したいものか?
  3. ソリューション/価値の質
    • 顧客が抱える課題にフィットしたソリューションか?
    • ソリューションはどんな価値があるのか?
  4. 競合優位性
    • 競合をしっかり調べているのか?(競合がいるのか?)
    • 競合と明確な差別化ができているのか?
  5. 仕組み
    • 製品、デリバリー、経営チームなど再現性のある仕組みがあるのか?
  6. 収益性
    • 採算性の高い事業であることを証明できるか?
  7. 持続性
    • 利益を出し続けるビジネスを構築できそうか?
  8. チーム(特に経営陣)
    • なぜ、その経営陣がこの事業をやる必要があるのか?
    • その経営陣がやると、なぜ上手くいくのか?
    • 経営陣が、事業をやり切れる理由はあるのか?
  9. 計画性
    • 出口戦略(IPO/バイアウト等)をどう描いているのか?
    • どのくらいの期間で出口を描いているのか?

上記の事業のポイントを押さえた上で、ベンチャーキャピタルに面談するように心がけましょう。

ベンチャーキャピタルから資金調達する3つのメリット

ベンチャーキャピタルから資金調達をするメリットは以下の通りです。

◆ ベンチャーキャピタルから資金調達する3つのメリット

  1. 調達額が大きいため、会社が急成長できる
  2. 一定期間赤字でも、耐えられる
  3. 返済義務がなく、失敗しても借金にならない

ベンチャーキャピタルからの資金は融資ではなく、出資なので事業に失敗したときのリスクは減らせます。そして、融資限度額がないので大きな事業展開ができ、会社を急成長させることも可能です。

事業をはじめたばかりの人でも、ビジネスモデルさえ魅力的であれば、数億円単位の出資が得られる点が最大の魅力といえるでしょう。

ベンチャーキャピタルから資金調達する3つのデメリット

リスクが少なく、メリットが多いように感じるベンチャーキャピタルからの資金調達ですが、気を付けるべきデメリットもあります。

◆ ベンチャーキャピタルから資金調達する3つのデメリット

  1. 短期間での急成長を求められる
  2. ベンチャーキャピタルが株主となり、会社経営に関わってくる
  3. 成長が見込めなくなると早期資金回収の恐れがある

出資を受けると、ベンチャーキャピタルも株主(オーナー)としての権利が発生します。そのため、あなた自身の給与もホイホイと自由に決めることが難しくなります。

そして、会社の株主(オーナー)であるベンチャーキャピタルが経営に口出しするのはもちろん、投資資金の回収や利益のため遅くても5年以内に上場するようプレッシャーをかけられることになります。

また、市場の急変や競合の出現により、会社の成長が見込めなくなると、早期に資金回収を行うケースもあることを知っておきましょう。

返済義務はない出資ではありますが、早期回収の動きが起これば、経営者側の意見や意思が尊重されることはありません。

ベンチャーキャピタルからの資金調達は、「巨額な資金調達が必要なビジネスモデル」「自分の会社を急成長させて上場させたい」など、会社を大きくしたい人にとって大きなメリットがありますが、その分、デメリットもかなりも大きいものになることを認識しておきましょう。

ベンチャーキャピタルを探す6つの方法

ベンチャーキャピタルを検討していても、「探し方がわからない」という方も多いでしょう。本章では、あなたに最適なベンチャーキャピタルを探す6つの方法について解説します。

◆ 最適なベンチャーキャピタルを探す6つの方法

  1. 知り合いから紹介してもらう
  2. ネットで検索し、直接アポイントを取る
  3. コンテストやイベントに出る
  4. 自社地域のローカルベンチャーファンドにアプローチ
  5. J-Startupに参加する
  6. ベンチャーに積極的な銀行にアプローチする
    →いわゆる「ベンチャーデッド」です

方法1. 知り合いからの紹介

ベンチャーキャピタルの探し方として、これまでの仕事関係者、友人、知人から紹介してもらうという方法があります。ベンチャーキャピタルと繋がりがある人を自分の知り合いから探すのです。

また、すでにベンチャーキャピタルから出資を受けている経営者や、商工会議所など、当たれるところにはあたってみましょう。紹介を受けるスタイルのほうが、個人が直接連絡をするより、話を聞いてもらえる可能性は高まります。

方法2. ネットで検索し、直接アポイントを入れる

周囲にベンチャーキャピタルと繋がる知り合いがいないようなら、インターネット検索で探す方法もあります。

紹介もなく、突然連絡をすることになるので、返信がある可能性はあまり高くありませんが、積極的にアプローチをすれば話を聞いてもらえる確率も上がります。また、ベンチャーキャピタルのなかには定期面談会などを開催している会社もあるので、そこから機会を掴むのもひとつの方法です。

方法3. コンテストやイベントへ参加する

起業家を支援するためにコンテストやイベントが多く開催されています。こういった場所は多くの起業家やベンチャーキャピタルが集まるので、たくさんの出会いのチャンスでもあります。

入賞することで出資が決定する場合もあるので、ベンチャーキャピタルを探している方は、積極的にコンテストやイベントに参加するようにしましょう。

方法4. 自社地域のローカルベンチャーファンドにアプローチする

東京都や愛知県、その他の地域でも、そのエリア独自のファンドが設立されています。これは、それぞれの都道府県と、民間のファンドが手を組んで有望なベンチャー・中小企業に対して、成長支援として資金を提供する目的で設立されています。

その種類や、ファンドの目的も多岐に渡っていますので、あなたの会社の状況に合わせた出資先を見つけられる可能性も高まります。例えば、東京都のファンド愛知ベンチャーファンドなどが代表例です。東京都においては、2019年に元Yhaoo!!代表の宮坂氏が副知事として参画されてから、スタートアップ支援がさらに加速しています。

東京都外の方であっても、下記のようなキーワードで検索することで最適なファンドに辿り着くことができるでしょう。

◆ 自社エリアのローカルベンチャーファンドを探すための検索キーワード

●●県 出資 ファンド

方法5. J-Startup

J-Startup」とは、政府によるスタートアップ支援策(育成支援プログラム)です。2018年に「日本からグローバルへと事業拡大を目指すスタートアップを集中支援する」べく、立ち上がったプログラムです。

事務局が選定したスタートアップ企業と、政府機関や民間企業、VCなどを繋ぐ活動をしています。

【 事務局 】
経済産業省、日本貿易振興機構(JETRO)、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)

J-Startupに採択されると、言わば国からお墨付きをもらったようなもの。かなり手厚い支援や、VCからの資金調達が期待できます。

方法6. ベンチャーに積極的な銀行へアプローチ

従来から、ベンチャー企業と銀行融資は相性が悪いと言われてきました。その理由は、銀行融資の特色と、スタートアップやベンチャー企業のニーズが合致しないことが起因していました。

銀行融資の特色

  • 短期間での黒字化を求める
    →返済原資を重視するため、短期で利益化を求める
  • 明確な資金使途を求める
    →計画性を重視するため、使い道を制限する
  • 銀行の知見のあるビジネスモデルが求める
    →新しいビジネスは想像できないし、焦げ付きも怖い

スタートアップ・ベンチャーのニーズ

  • 中長期で成長を見届けて欲しい
    →赤字先行。3~5年で黒字化の計画も多い。
  • 成長フェーズで柔軟に資金使途を変えたい
    →広告に使いたい、採用に使いたいなど、多岐に渡る
  • 新しいビジネスモデルにお金を出して欲しい
    →旧知のビジネスモデルでないもので起業します

改めて見ると、全くニーズが合致していないことがわかります。

しかし近年、銀行もリスクを取ってスタートアップやベンチャーに融資や出資をする機会が増えています。いわゆる「ベンチャーデッド」というものです。

ベンチャーデットの仕組みは、各種金融機関(政府系金融機関、民間銀行など)が無担保や低金利の融資を実施し、それに対して、スタートアップからは金融機関に「新株予約権を無償で発行」してリスクを補完するものです。徐々に、こういったベンチャーデッドで出資をする銀行も各地に増えています。

なお、ベンチャーデットについてもっと詳しく知りたい方は、下記の記事が参考になるはずです。ぜひご一読ください。

ベンチャーキャピタルが投資する際の「4つの株価算定方法」

株価算定方法には、下記4つの算定方法があります。

◆ ベンチャーキャピタルの4つの株価算定方法

  1. 時価純資産方式
  2. DCF法
  3. 配当還元方式
  4. 類似業種比準方式

さまざまな方式がありますが、どれも決定的な算定方法とは言えず、状況や対象によって使い分けされているのが現状です。

ただ、結局のところ、どの算定方法をとったとしても株価は企業価値を発行した株式総数で割った金額になります。そのため、経営者側としては、可能な限り高い株価で発行して、あまりシェアを下げないように努めるでしょう。

しかし、ベンチャーキャピタルのほうは可能な限り安く株式を買い取り、シェアは高く取りたいはずです。

未公開会社は、上場会社と異なり、客観的な株式市場がないので、ベンチャーキャピタルと経営者側との交渉によって決定するしかありません。会社の資金調達がうまくいっていない状態なら、当然ベンチャーキャピタルが優位に交渉を進めることになります。

逆に会社に将来性があり、他の投資家が多く集まっているような状態なら、投資を受ける会社のほうが優位に交渉を進められるのです。

ベンチャーキャピタルが投資したい企業の特徴

ベンチャーキャピタルが投資したくなるような会社には、どんな特徴があるのでしょうか?

ベンチャーキャピタルにもそれぞれ投資スタンスが異なるので一概にはいえませんが、参考までにベンチャーキャピタルが投資がしたくなるポイント5つ上げてみました。

◆ ベンチャーキャピタルが投資したくなる5つのポイント

  1. 市場の将来性
  2. 経営陣の実績
  3. 競合との差別化・優位性
  4. 販売戦略が明確に描けていること
  5. IPO、もしくはM&Aによる資金回収ができそうか

紹介するすべてが絶対必須なわけではありませんが、ポイントを意識することで資金調達がしやすくなることは間違いありません。

ポイント1. 市場の将来性

ベンチャーキャピタルは、投資先企業のターゲット市場が成長傾向にあるかを慎重に判断します。世の中の流れに乗った市場なら、今後の成長が見込まれるので、投資家からの資金集めもしやすいのです。

また、新商品の投入や市場への参入のタイミングも重要視されます。タイミングが合っていないと、どんなに成長が見込まれる市場でもうまく波に乗れないといったこともあるでしょう。

結論を言えば、投資先企業がターゲットにする市場の規模や将来性が良ければ、現在優良企業でなくても、赤字経営であってもベンチャーキャピタルから資金調達することは可能です。

ポイント2. 経営陣の実績

ベンチャーキャピタルは大金を出資するので、経営陣の実績や手腕の見極めには慎重です。どんなに成長が見込まれる市場で、よいビジネスモデルと十分な資金があったとしても、経営者が優秀でないと成功できる可能性は激減します。

何をやるのかも重要ですが、誰がやるのかはもっと大切なのです。

そのため、経営陣の経歴や実績、スキルと人脈については具体的に示す必要があります。もし現状、経営陣の経験やスキル、能力などが不足していると感じるのなら、新たに別のメンバーを参加させることも検討するようにしましょう。

ポイント3. 競合との差別化・優位性

事業をより高い確率で成功させるには、競合との差別化や優位性を確保しておく必要があります。製品やサービス、技術が競合より強くないと、どんなに将来性の高い市場でも成功することはできません。

そのため、自社製品のどこが優れているのかをベンチャーキャピタルに明確に示し、将来性があることを認めさせることが重要です。

たとえ、画期的な新商品で一見競合がいないように見えても、個人がお金を払うのなら、代替となる何かを諦めていることになります。同じような商品がなくても、同じニーズを解決する何かがあるのなら競合はいることになるのでしっかりリサーチしましょう。

ポイント4. 販売戦略が明確に描けていること

どんなに良い商品やサービスでも、販売戦略が明確に描けていなければ、売り上げは見込めません。そのため、下記については最低限緻密に設計された状態でベンチャーキャピタルとの面談に臨みましょう。

◆ 事前に設計すべき販売戦略の項目

  • 営業のしかた
  • 営業する相手(ターゲット)
  • サービス提供エリア
  • インターネットや広告での展開

販売戦略があってはじめて受注予測金額や見込み顧客数も現実味が出てくるのです。販売戦略に説得力を持たせるには、販売戦略や営業戦略で実績がある人物を経営陣に加えるのもよいでしょう。

ポイント5. IPO、もしくはM&Aによる資金回収ができそうか

ベンチャーキャピタルは、最終的にIPO、もしくはM&A(事業売却)による資金回収を目的にしています。そのため、IPOもしくはM&Aまで最短距離で走りきれる事業計画がしっかり描けていることが必要です。

例えば、IPOをするときの売り上げ、経常利益などの事業規模を明確にしたり、利益が上がる具体的根拠があったり、IPOを現実的に視野に入れて動いていることをアピールできることが大切です。

完璧な事業計画は難しいため、ベンチャーキャピタルやあなたの会社のCFOに相談しながらブラッシュアップすることもできます。あまりにも中途半端な事業計画だと、最初から考えがないと思われ、話を聞いてもらう機会も失いかねません。

そのため、自分なりにしっかり考え、情報を集めて、ある程度の完成度にしてからベンチャーキャピタルにアプローチすることをおすすめします。

もしも、「社内にCFOがいない…」そんな場合は、「御社の社外CFO」のような財務コンサルティングサービスを使うことが最適です。社内にCFOを採用することなく、ベンチャーキャピタルからの資金調達を進めることが可能になります。


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現状、ベンチャーキャピタルとの繋がりがないのなら、まず話を聞いてもらうために知り合いに紹介してもらったり、コンテストやイベントなどに積極的に参加したりする必要があります。

ベンチャーキャピタルから資金調達をするには市場の将来性、経営力、事業の競争力や技術などが重視されるので、これらを示す準備もしておくようにしましょう。経営に口出しされたり、株式上場を急かされたりするデメリットもありますが、賢く利用すればよいパートナーシップも築けるはずです。

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参考
資金調達のシリーズとは?ラウンドごとのポイントと注意点|株式会社パラダイムシフト

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