近年は不動産を持たない中小企業でも円滑に必要な資金を調達できる、売掛債権担保融資を利用するケースが増えてきています。ただ、不動産担保や人的担保に比べるとまだまだ歴史の浅い融資制度であるせいか、基本的な知識や資金の調達方法について十分に浸透しているとはいえない状況です。

著者プロフィール
- 資金調達サービス「中小企業の融資代行プロ」創業者
- 中小企業の融資など資金調達支援の経験・実績多数
- 経営コンサルティング会社「(株)Pro-D-use」創業者
これまでの支援実績
個人事業主 / 創業後スグの1人法人 / 売上300億の法人 等
資金調達額「100万円」〜「5億円」
幅広い会社規模 / 資金調達額 / 資金調達手法を経験
そこで本記事では、下記について丁寧に解説していきます。
- 売掛債権担保融資の基礎知識
- 資金調達に活用する方法
- ファクタリングとの違い
銀行や日本政策金融公庫からの資金調達は、知識・経験もなしに「なんとなく」で進めると必ず失敗します。資金調達には金融機関の幅広い知見が必要で、成功には一定のノウハウが欠かせません。
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売掛債権担保融資とは
売掛債権担保融資とは、その名の通り、企業が保有する売掛債権を担保にして資金を調達する方法のことです。BtoB(企業間取引)では、商品やサービスを提供し、代金は後払いとする「信用取引」が主流ですが、売り手が後日、買い手から代金の支払いを受ける権利のことを「売掛債権」といいます。
実際に支払いが行われるまでは、売り手のもとに代金が入ってくることはありませんが、後日支払われることが約束されているお金なので、帳簿上では「資産」として計上されます。
売掛債権担保融資は、この売掛債権そのものを担保に入れることで、金融機関の貸し倒れリスクを軽減する方法です。同時に、不動産を持たない中小企業でも必要な調達できる方法でもあります。
なお、売掛債権担保融資は以前からある資金調達法ですが、2007年に後述する流動資産担保融資保証制度が創設されたことにより、現在は企業が保有する在庫などの流動資産を担保に入れて融資を受ける流動資産担保融資(ABL)を申し込む企業が増えてきています。
これにともない、金融機関でも売掛債権担保融資から、流動資産担保融資(ABL)という名称に変更しているところが多く見受けられます。しかし、流動資産の中には売掛債権も含まれていますので、これまで通り、売掛債権を担保に入れて融資を申し込むことも可能です。

売掛債権担保融資保証制度
売掛債権担保融資を利用するにあたり、ぜひ知っておきたいのが売掛債権担保融資保証制度の概要です。
売掛債権は、後日代金が支払われることが確約された債権ですが、支払い前に売掛先が破綻・倒産してしまった場合、債権を回収できなくなるリスクがあります。そのため、かつては売掛債権を担保にして融資を申し込んでも、金融機関に断られるケースが少なくありませんでした。
そこで国では、中小企業がニーズに応じて迅速に資金を調達できるよう、保証協会が売掛債権担保融資の債務を保証する売掛債権担保保証制度(2007年に流動資産担保融資保証制度に名称変更)を新たに創設しました。
売掛先の破綻・倒産など、何らかの理由によって融資の返済が不可能になってしまった場合、保証協会が借入残高の8割を保証する仕組みになっています。この保証制度の創設により、金融機関の貸し倒れリスクがさらに低減されたことから、売掛債権を担保にした融資契約はぐっと増加しました。
実際、参議院がまとめた資料によると、流動資産担保融資保証制度が創設された翌年から、メインバンク・地域金融機関ともに、売掛債権を含む流動資産を担保に入れた融資の実行額は右肩上がりに増えています。
かつて売掛債権を担保に融資を申し込み、断られてしまった…という企業でも、保証制度の創設により、現在は新たな資金調達方法として活用できる可能性が高くなっています。
売掛債権担保融資とファクタリングの違い
売掛債権担保融資と混同されがちな金融商品に「ファクタリング」というものがあります。どちらも売掛債権を活用して資金を調達する方法ですが、その内容は似て非なるものですので、両者の違いをしっかり把握しておく必要があります。
まずは売掛債権担保融資とファクタリングの違いを知るために、ファクタリングの概要について解説します。

ファクタリングとは
ファクタリング(Factoring)とは、企業が保有している売掛債権をファクタリング業者に譲渡して現金化する方法のことです。基本的な仕組みとしては、売掛先との取引によって生じた売掛債権の譲渡をファクタリング会社に申込み、譲渡契約を締結します。
ファクタリング会社は契約後、数日以内に売掛債権の買取額を債権者が指定した口座に入金します。その後、取引先から売掛金が入金されたら、ファクタリング会社に対して支払いを済ませて契約は完了です。
なお、上記の契約は債権者とファクタリング会社の間だけで締結されるため、「二社間ファクタリング」といわれています。二社間ファクタリングの場合、外部にファクタリングの事実が漏れないので、売掛先に売掛債権を譲渡した事実を知られずに済むのが利点です。
一方、あらかじめ売掛債権を譲渡する事実を売掛先に通知し、承諾を得てから売買することを「三社間ファクタリング」といいます。この場合、売掛金は債権者を介さず、直接売掛先からファクタリング会社に支払われます。
デメリットは、売掛先にファクタリングの事実を知られること、また、売掛先への通知および承諾に日数を要するなどです。しかし、そのぶんファクタリング会社へ支払う手数料を少なく抑えられる点は大きなメリットとなっています。
売掛債権担保融資との違いは?
では、ファクタリングと売掛債権担保融資には、どのような違いがあるのでしょうか。以下ではわかりやすく、両者の違いを表にまとめてみました。
売掛債権担保融資 | ファクタリング | |
契約形態 | 金銭消費賃借契約 | 債権譲渡契約 |
取引先 | 金融機関 | ファクタリング会社 |
コスト | 金利 | 手数料 |
返済方法 | 一括・分割 | 一括 |
取引対象となる売掛債権 | 現在および将来発生する予定のもの | 既に発生しているもの |
登記原因 | 譲渡担保 | 債権譲渡 |
上記の表からもわかるとおり、売掛債権担保融資とファクタリングの一番の違いは、「賃借(融資)」なのか、「譲渡(売却)」なのか、ということです。
ファクタリングは、「(債権を)売却する」という意味をもつ「Factor」が語源になっていることもからもわかる通り、売掛債権をファクタリング会社に譲渡し、その売却金で資金の調達を行います。
売掛先から入金があった場合、あらかじめ契約した買取金額をファクタリング会社側に支払う必要はありますが、いわゆる「前借り」にあたりますので、ファクタリング会社から支払われた売却金を返済する必要はありません。契約もその都度終了し、売掛先からの入金をファクタリング会社に支払うときも一括払いが原則となります。
一方の売掛債権担保融資は、現在および将来保有する売掛債権を担保にして、金融機関から資金を調達します。
賃借契約を経て獲得した資金は「融資金」に該当するため、融資を受けた後は、毎月決まった額を金融機関に返済する必要があります。融資限度額は、現在保有している売掛債権だけでなく、今後発生すると推測される未来の売掛債権も評価して決定されるため、現在保有している売掛債権の価値よりも大きな金額を借り入れることもできます。
また、取引の利用にあたってかかるコストにも違いがあります。
ファクタリングの場合のコスト
売却額に一定割合を乗じて算出した手数料を負担する。
売掛債権担保融資の場合のコスト
借入残高に一定割合をかけて算出した金利を負担する。
金利および手数料は取引先によって異なりますが、ファクタリングの場合は二社間で10~20%、三社間で1~10%、売掛債権担保融資は8~15%がおおよその相場とされています。
売掛債権担保融資とファクタリング、どちらで資金調達するのがおすすめ?
売掛債権を活用して資金調達する場合、売掛債権担保融資とファクタリングのどちらを利用するかは、債権者のニーズによって異なります。
今ある売掛債権を現金化できれば十分というのなら、ファクタリングの利用がおすすめです。売掛先に知られたくない、または今すぐ現金化したいという場合は二社間ファクタリング、売掛先に知られてもOK&時間がかかってもかまわない場合は三社間ファクタリングを選ぶと、自社のニーズを満たすことができます。
※その代わり、銀行からの融資が受けにくくなりますのでご注意ください。
一方、事業拡大や設備投資のために、より多額の資金を必要としている場合は、現在および未来の売掛債権を担保にして融資を受けられる売掛債権担保融資を利用した方が、十分な資金を調達できます。
どちらを利用するか迷った場合は、なぜ資金を調達するのか、どのくらいの資金を必要としているのかを明確にしてから検討するとよいでしょう。
売掛債権を担保にして資金調達する方法と流れ
売掛債権を担保にして資金調達するには、いくつかの手続きが必要になります。具体的な手続きの方法は金融機関によって異なりますが、ここでは一般的な売掛債権担保融資の方法や流れを8つのステップに分けて説明します。
ステップ1. 金融機関への相談
売掛債権担保融資の利用を検討していることを、すでに取引実績のある金融機関に相談します。特に初めての方は、売掛債権担保融資の基礎知識から今後の流れ、必要書類などについて担当者からくわしく話を聞き、自社のニーズに合った資金調達方法かどうか再確認しましょう。
ステップ2. 融資の申込み
金融機関に相談し、売掛債権担保融資を利用したいと思ったら、正式に融資の申込みを行います。申込みに必要な書類は金融機関によって異なりますが、以下では申込書の他に準備すべき代表的な書類を4つご紹介します。
- 譲渡担保対象売掛先一覧表
- 譲渡担保対象売掛先明細書
- 概要記録事項証明書(債券譲渡登記のもの)
- 売掛先との取引内容や、実績を証明する資料
ステップ3. 金融機関の審査
金融機関により、借り手および売掛先の審査が行われます。審査基準は金融機関によって異なりますが、事業規模や内容、財務状況などを総合的に見たうえで、信用力が評価されます。
ステップ4. 融資限度額の決定
審査の結果、融資可とみなされた場合は、担保に入れる売掛債権の価値評価から、融資限度額を決定します。融資限度額は、金融機関や保証協会の審査によって設定された売掛先ごとの掛け目(担保物件に掛けられる一定割合)を乗じて計算されます。
ステップ5. 融資契約を締結する
融資限度額に納得できたら、金融機関と融資契約を締結します。
ステップ6. 債権譲渡登記を行う
担保にする売掛債権について、債権譲渡登記を行います。
ステップ7. 融資の実行
融資契約の内容に基づき、あらかじめ設定された融資が実行されます。
ステップ8. 融資の返済
売掛債権担保融資の返済は、一般的に売掛金が入金される口座から自動引き落としになります。
売掛債権担保融資で資金調達する際の注意点
売掛債権担保融資で資金調達を検討するにあたり、注意しておきたいポイントを3つご紹介します。
1. 融資限度額と売掛債権の価額が同額とは限らない
売掛債権担保融資の融資限度額は、担保に入れた売掛債権の評価や価値に基づき、一定の掛け目を乗じて算出されます。売掛債権の場合、掛け目は70~100%が相場なので、仮に掛け目が100%を下回った場合、融資額は売掛債権の価額よりも少なくなります。
100%の保証を期待して融資を申し込んだら、70%にあたる額しか融資してもらえなかった…ということもありますので、あらかじめ注意が必要です。
2. 譲渡禁止特約が付帯された契約は担保の対象にできない
売掛債権担保融資を利用するためには、必ず債権譲渡登記を行う必要があります。そのため、売掛債権そのものに譲渡禁止特約が付帯されている場合は、担保として活用することができません。
譲渡禁止特約が付帯されている売掛債権の債権譲渡を行っても、原則無効になってしまいますので、担保に入れる売掛債権に付帯されている特約の有無や内容はあらかじめチェックしておきましょう。
3. 売掛先に債権譲渡登記したことを知られるおそれがある
売掛債権担保融資を利用する金融機関によっては、債権譲渡登記を行う際、売掛先にその旨を通知することがあります。
債権譲渡登記を行った事実が判明すると、売掛先に売掛債権担保融資を利用したことも知られてしまい、場合によってはその後の取引に支障を来すおそれがあります。
最近は融資を検討する中小企業の事情を考慮し、債権譲渡登記を行った旨をあえて売掛先へ通知しないところもあります。売掛先に事情を知られたくない場合は、金融機関に通知の有無についてあらかじめ確認しておきましょう。
ただし、通知が行われなくても、売掛先が法務局で概要記録事項証明書を取得した場合、債権譲渡登記の事実が知られてしまうことがあります。
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売掛債権担保融資を利用すれば、不動産を持たない中小企業でも融資を受けられる
売掛債権担保融資は、BtoBで信用取引を行い、売掛債権を保有している中小企業なら、原則として誰でも利用できる融資制度です。土地や建物などの不動産を所有していなくても、ビジネスで発生した売掛債権を担保に入れれば、その価値に見合った融資を受けることが可能です。
同じ売掛債権を利用する調達方法にファクタリングがありますが、売掛債権を担保にしてお金を借りる売掛債権担保融資とは異なり、売掛債権そのものを売却して資金を調達するので、根本的な仕組みに違いがあります。
売掛債権担保融資とファクタリングでは、調達できる資金額や、申込みから入金までにかかる日数、売掛先への通知の有無などにも差があります。そのため、それぞれの違いをよく理解し、自社に合った資金調達方法を選ぶことが大切です。
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<外部参考サイト>
中小企業庁:「売掛債権の利用促進について」
参議院:「動産担保融資の現状と課題」