無担保・無保証の創業融資の条件や受けるためのポイント

金融機関で創業融資を受けようとすると審査の条件が厳しいうえ、保証人や担保が必要となるケースが少なくありません。担保や保証人がないと思い通りに融資を受けるのが難しいケースがあり、資金調達は頭の痛い問題として立ちはだかります。

無担保・無保証で資金調達する方法はないだろうか?」と考える起業家におすすめなのが日本政策金融公庫の融資制度です。必要な条件を満たして審査にクリアすれば、担保や連帯保証人がなくても融資を受けられます。

本記事では、無担保・無保証で借りられる新創業融資制度と中小企業経営力強化資金について、メリット・デメリットを交えながら紹介します。起業の資金調達に悩む方は、ぜひ申請を検討してください。

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目次

無担保・無保証の意味

はてなマーク無担保・無保証とは、融資の際の担保や保証人が不要なことを指します。

一般に、融資を受ける際は、担保や保証人を用意しなければなりません。万が一債務返済が滞ったとき、担保によって債務を弁済したり保証人に弁済を依頼したりするためです。貸付側は担保でリスクヘッジをすることで、貸付による損失を最小限に抑えられます。

担保・保証人が必要な融資は、

  • 「高額」
  • 「長期」
  • 「低金利」

といったメリットがありますが、担保や保証人を用意できないと融資申請さえできません。その点、無担保・無保証ならどんな人でも融資申請しやすいといえます。

無担保・無保証の新創業融資制度とは

「知ってる?」と問いかけてる人創業時、無担保・無保証で融資を受けられる制度の一つが「新創業融資制度」です。起業の資金調達に悩んだ場合、まずこちらを検討するのがよい選択でしょう。無担保・無保証の新創業融資制度について紹介します。

1. 日本政策金融公庫の創業融資制度

新創業融資制度は、日本政策金融公庫の融資制度の一つです。日本政策金融公庫とは100%日本政府出資の金融機関で、中小企業や個人情報主・スタートアップ企業などの支援を行っています。

新創業融資制度は、数ある制度の中でも創業者支援に特化した制度です。起業を考えている人なら誰でも利用できますが、日本政策金融公庫が定める条件をクリアしなければなりません。

2. 条件を満たした人が利用できる

新創業融資制度を利用できるのは、以下の全ての条件を満たす人です。

  • 新たに事業を始める人または事業開始後税務申告を2期終えていない
  • 創業時において創業資金総額の10分の1以上の自己資金(事業に使用される予定の資金)の用意がある

ただし、新たに事業を始める場合でも「適正な事業計画」「当該計画を遂行する能力」が不足している場合、融資は受けられません。また、

  • 「現在勤めている企業と同じ業種の事業を始める人」
  • 「産業競争力強化法に定める認定特定創業支援等事業を受けて事業を始める人」

については、自己資金の要件は満たしていると見なされます。

3. 他の融資制度と併用して利用するのが原則

新創業融資制度は、日本政策金融公庫が提供する他の融資制度と併せて使う制度です。新規事業融資なら、以下のような融資制度と組み合わせることとなるでしょう。

  • 新規開業資金:新たに事業を始める人または事業開始後おおむね7年以内の人
  • 女性、若者/シニア起業家支援資金:女性または35歳未満か55歳以上で事業開始後おおむね7年以内の人
  • 新事業活動促進資金:経営多角化、事業転換などにより、第二創業などを図る人

なお、融資金の返済期限については、ベースとなる融資制度に準じます。

新創業融資制度のメリット

いいね!マーク新創業融資制度の最大のメリットは無担保・無保証という点です。このほかどのようなメリットがあるのか、具体的に紹介します。

1. 無担保無保証で最大3,000万円まで借り入れできる

新創業融資制度は無担保・無保証で最大3,000万円までの借り入れが可能です。ただし、運転資金として認められるのは1,500万円までと定められています。

一般的な金融機関だと、よほど条件がそろっていないと高額の融資は受けられません。なぜなら、新規事業は不確定要素が多く、金融機関もリスクを取りたくないためです。

また、創業時に使える補助金や助成金もありますがこちらも金額は低めです。1,000万円を越えるような融資を受けたい場合、新創業融資制度は非常に有益な選択肢といえるでしょう。

ただし、上限ギリギリの3,000万円の融資を受けられることはまれです。現実には上限1,000万円くらいを上限とするケースが多いようです

2. 返済期間が長い

選ぶ制度にもよりますが、新創業融資制度の返済期限は長めに設定されています。前述の制度ならいずれも、

  • 運転資金は7年
  • 設備資金は20年
  • さらに2年間は据え置き期間

です。必然的に毎月の返済額が少なくなり、事業の負担を軽減できます。

新規事業を始めても、安定的に利益を出すには時間がかかるかもしれません。このとき毎月の返済額が高額だと、黒字でも倒産する恐れがあります。事業が軌道に乗るまでは、毎月の返済負担は少ない方が安心です。

新創業融資制度のデメリット

警告してる人無担保・無保証の新創業融資制度は起業家にとってはうれしい制度ですが、デメリットと見える面がないわけではありません。どのような点がデメリットと言われるのか見ていきましょう。

1. 担保を設定した方が金利の面では有利

無担保・無保証が新創業融資制度のよい点ではありますが、担保有りに設定した方が金利の面では有利です。例えば、令和3年6月1日時点の無担保・無保証と担保有りのケースを比較してみましょう。

  • 無担保・無保証:41~2.90%
  • 担保有り:11~2.20%

無担保・無保証がこの制度のメリットですが、長い目で見ると「担保を設定しておいた方がよかった」ということがあるかもしれません。

2. 他の融資を申し込んでいると不利になる

創業資金を集めようと、さまざまな金融機関や制度に融資申請を行う人もいるかもしれません。それ自体は問題ないのですが、すでに融資を受けている場合は、新創業融資制度の審査が非常に厳しくなります。

例えば本命を新創業融資制度だと考えていた場合、非常に不利益を被ることとなるでしょう。

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無担保・無保証の中小企業経営力強化資金とは

無担保・無保証で利用できる融資制度として、同じく日本政策金融公庫「中小企業経営力強化資金」があります。どのような制度なのか概要を紹介します。

1. 日本政策金融公庫の融資制度

中小企業経営力強化資金とは、国が認定する認定支援機関の指導や助言を受けながら融資を受ける制度です。ただ単に「創業資金が欲しい」というだけでは受けられません。

日本政策金融公庫では、この制度を利用できる人について「次の”1”または”2”に該当する方」のように定めています。

1. 次のすべてに該当する方

  1. 経営革新または異分野の中小企業と連携した新事業分野の開拓等により市場の創出・開拓(新規開業を行う場合を含む)を行おうとする方
  2. 自ら事業計画の策定を行い、中小企業等経営強化法に定める認定経営革新等支援機関による指導および助言を受けている方

2. 次のすべてに該当する方

  1. 「中小企業の会計に関する基本要領」または「中小企業の会計に関する指針」を適用している方または適用する予定である方
  2. 事業計画書を策定する方

※日本政策金融公庫「中小企業経営力強化資金

なお、「認定経営革新等支援機関」とは、先述した国が認定する認定支援機関のことです。一定レベル以上の専門知識を持った個人・法人が選定され、制度を利用する人の経営指導を行います。

2. 創業後にも使える

先述の新創業融資制度は、創業時にしか使えない制度です。しかし、中小企業経営力強化資金にはそのような縛りがありません。財務内容や創業年数等は問われないため、創業後に資金調達が必要となった場合も選択肢のひとつとして加えることが可能です。

中小企業経営力強化資金のメリット

たくさんのいいね!マーク中小企業経営力強化資金を使うと、新創業融資制度にはないメリットがあります。具体的に見ていきましょう。

1. 自己資金要件がない

中小企業経営力強化資金を利用する場合、自己資金の割合や有無は問われません。

新創業融資制度が「創業資金総額の10分の1以上」と定められていることと比較すると、自己資金が不足している人には大きなメリットです。とはいえ実際のところ、審査時には自己資金がある方が有利といわれます。

確実に審査に通りたいなら、ある程度自己資金を用意して望むのがベターです。

2. 融資限度額が高い

中小企業経営力強化資金では、最大で7,200万円(うち運転資金4,800万円)の融資を受けられるとしています。新創業融資制度の上限が3,000万円であること考えると、高額だといえます。

ただし、こちらも上限いっぱいの融資を受けられるケースはまれです。無担保・無保証で融資を受ける場合、各支店の決済額の上限は2,000万円なのだとか。これ以上になると本部決済となるため、7,200万円の融資を受けるのは非常に難しいといえます。

とはいえ、2,000万円でも高額融資には違いありません。無担保・無保証と考えれば、かなりメリットは大きいでしょう。

中小企業経営力強化資金のデメリット

中小企業経営力強化資金は、「融資の妥当性を承認してもらうこと」「定期的な経過報告が必要なこと」などをデメリットに感じる人が多いようです。

どのようなことなのか、具体的に見ていきましょう。

1. 事業計画書の提出義務がある

中小企業経営力強化資金を利用する際は、日本政策金融公庫の指定に従った事業計画書の提出が必要です。申し込み企業と認定支援機関双方の押印が必要で、認定支援機関に依頼した場合はコストが掛かります。

2. 報告義務がある

中小企業経営力強化資金を利用した場合、年1回以上、事業計画の進捗状況について報告しなければなりません。万が一報告を怠ると、融資期間中でも融資の一括返済を求められるケースがあります。

無担保・無保証で創業融資を受けるための条件

天秤

無担保・無保証で創業融資を受けるためには「融資しても問題ない人・事業」であることを証明しなければなりません。どのような条件が必要なのか、見ていきましょう。

1. 税金・公共料金の未納がないこと

創業融資では、税の滞納や公共料金の未納があると審査に不利となります。特に税金は「優先債権」とされるため、わずかでも滞納していると融資を受けられる可能性がグッと低くなるでしょう。

また、公共料金等の未納があると支払能力を疑われます。現状滞納・未納がある人は、完納することが必須です。

2. 矛盾のない資料を提出すること

創業融資をする側は、融資が創業以外の目的に使われることを警戒しています。融資審査ではさまざまな書類・計画書等を提出することとなりますが、資料の矛盾や怪しい点がないように注意しましょう。

資料を提出する前は一から精査して、どこを突っ込まれてもきちんと説明できるようにしておくのがベターです。

無担保・無保証の創業融資を受けるときのポイント

3本のダーツが刺さった的

無担保・無保証で創業融資を受けたいときは、「この人になら融資しても大丈夫」と思ってもらわなければなりません。審査に通るよう、提出書類や面接態度には十分に気を付けましょう。融資を受けるとき、気を付けたいポイントを紹介します。

1. 事業計画書に万全を期す

創業融資の成否は事業計画書に掛かっているといっても過言ではありません。申請時に提出する事業計画書には、説得力と整合性が必要です。

押えておきたいポイントとしては、次のようなものがあります。

  • ターゲティングを明確にする
  • 市場調査・競合分析を行う
  • 売上予測の根拠が明確
  • 実現可能な返済計画を上げているなど

なお、テンプレートやひな型を丸ごとまねても、説得力のある事業計画書とはなりません。自社の強みをしっかりとアピールできるよう、事業計画書は独自のフォーマットで仕上げることをおすすめします。

2. 資金使途と返済原資の説明ができるようにしておく

融資をどのように使い、どうやって返済していくかを明確にしておきましょう。ここがあいまいだと、どんなに素晴らしい事業計画書を提出しても「融資しても大丈夫」とは思ってもらえません。

資金使途には、下記のように大きく2つの種類があります。

  • 設備資金
    →設備購入の資金(土地/建物/機械/車/備品など)
    →金額が大きいことが多い為、見積書提示が必須になる
  • 運転資金
    →設備資金以外のお金(支払い代金/経費など)

上記の中でも、多くの会社が活用するのは「運転資金」です。運転資金は、さらに下記7種類があります。

  • 経常運転資金
    →運転資金の代表格。売掛金・受取手形回収までのつなぎ資金
  • 増加運転資金
    →売上が増えたことによる、経常運転資金の増加分の資金のこと。
    →シンプルに、売上が増えると一時的に資金繰り悪化の対策資金ということ。
  • 季節資金
    →小売業などで多く見られる、季節変動の売上の波に対応する資金
  • 決算資金
    決算後に発生する大きな税金支払い(消費税除く)のための資金
    →税金発生は黒字経営が前提のため、銀行が貸しやすい資金。
  • 賞与資金
    賞与時期の短期的な賞与支給のための資金
    →短期的な資金貸与のため、返済期間は短期になる。
    →賞与を出せるくらい会社が好調と判断されるため、銀行が貸しやすい資金。
  • 赤字補填資金)
    →基本的に銀行は「赤字を補填するために融資をする」という論理は皆無です
    →メインバンクが、顧客からの精緻な経営改善計画書の提出があって資金を出すことはあります。
  • 余裕資金
    「経常運転資金+α」の資金のこと。いざという時のために資金を増やすために使われる。
    →赤字や、現金が少ない会社は余裕資金は認められない。(黒字/現金がたくさんある時に使うべき)

お金の流れが見通せない不安な起業家と思われないよう、今後の経営計画や資金繰りの方法をしっかり把握しておいてください。

3. 面接は丁寧な態度で

融資の面談では、態度・身だしなみ・言葉遣いも非常に重要です。どのような人でも、非常識でマナーのない起業家よりは、きちんとして礼儀正しい起業家の方に好印象を抱くものです。面談相手の心証を悪くしないよう、真摯な態度で面談に臨みましょう。

また、面談する人によっては意地悪な質問をしてくることもあるかもしれません。このときも決して感情的にならず、冷静に話をするよう努めましょう。


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「無担保・無保証の創業融資」でよくある質問(Q&A)

2023年3月に始まった「スタートアップ創出保証」とは?

創業時における「新しい信用保証制度」のことです。創業時の不確実(銀行からすると怖い)な融資なのに、「経営者保証」も「担保」も必要ないという驚愕の保証制度です。(指定の簡単な創業計画書の提出が義務付けられています。)

スタートアップ創出保証の特徴を抜粋すると、下記5つに絞られます。

  1. 経営者の保証不要
  2. 創業〜創業後5年未満の法人(個人事業はNG)
  3. 保証限度額3,500万円(全員に3500万円が約束されるわけではない)
  4. 据置期間:1年
  5. 自己資金1/10以上(あくまで、1/10あれば審査はできるということ)

特に、❶の経営者保証不要というのはかなり大きい制度です。仮に融資を返せなくなっても、会社を畳めば経営者個人からの返済義務はない、ということです。(挑戦しやすくなりますね)

また、創業後1年以上経っていて、業歴も1年以上経っている場合は、マル経融資(外部サイト)MAX2,000万円との合わせ技で、「5500万円まで経営者保証なし」で調達できる可能性も出てきました。

一方で、銀行などの金融機関からするとあまり旨味がない(儲からない&手間がかかる)制度のため、スタートアップ側からメリットを提示できないと、活用しても融資が出ない可能性の方が高く、難易度が高いのが現状です。

参考> 中小企業庁:「スタートアップ創出促進保証

日本政策金融公庫以外の、民間の銀行・信用金庫から創業融資を受けたいが、ポイントはありますか?

まず基本的には、民間の銀行・信用金庫は「創業融資には消極的である」と言うことは知っておきましょう。

なぜなら、創業融資を受ける会社は潰れやすく、融資したお金が戻ってこない確率が高いため、銀行・信用金庫からすると「創業融資は儲からない融資」のため、彼らに創業融資への情熱はないからです。

その上で、もし民間の銀行・信用金庫で創業融資を受けるのであれば、下記のポイントを抑えることが重要です。

  • 「給与の振り込み口座の銀行」に持ち込む
    →口座のお金の動きが全て見れるため、銀行が融資をしやすくなります。(メガバンクは除く)
  • 商工会や税理士から紹介をしてもらう
    →鉄板パターンです。銀行・信用金庫から信用されている「税理士」「商工会」から繋いでもらうのが良いでしょう。

また最近の傾向としては、創業後すぐに創業融資を申し込むよりも、事業を始めて3~6ヶ月経過した後に創業融資を申し込む方が審査がスムーズです。つまり、あるていど実績を積んでからの方が、融資が出やすくなっていると言うことですので、これも覚えておきましょう。

無担保・無保証の創業融資でスムーズな起業を目指そう

握手創業融資が必要な場合、日本政策金融公庫の融資制度なら無担保・無保証です。条件さえ満たせば使える「新創業融資制度」、国が認定する認定支援機関の支援を受けることが条件の「中小企業経営力強化資金」があるので、自社の目的・融資額に合うものを選びましょう。

ただし、いずれの場合にも綿密な事業計画と返済計画は必須です。申請書類の不備で弾かれることのないよう、しっかりと準備をしてください。不安な場合は、創業の資金調達に強い専門家に頼ることも検討してみてはいかがでしょうか。

もしたくさんある資金調達方法から、「自社に適切な資金調達方法を模索したい方」は、資金調達代行サービスの「中小企業の融資代行プロ」にご相談(無料)ください。

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<外部参考サイト>
日本政策金融公庫「新創業融資制度
日本政策金融公庫「融資制度一覧から探す
日本政策金融公庫「国民生活事業(主要利率一覧表)

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