「株式の流出を防ぎたい」と考えている企業は、従業員持ち株会を設立することをおすすめします。従業員持ち株会は従業員が自社株を購入してくれるので、株式の流出を防ぎつつ資金調達することが可能です
著者プロフィール
- 資金調達コンサル会社「(株)融資代行プロ」創業者
- 財務・資金繰りコンサルティング「御社の社外CFO」創業者
- 経営コンサル会社「(株)Pro-D-use」創業者
- 中小企業の融資・補助金など資金調達支援の実績多数
これまでの支援実績
個人事業主 / 創業後スグの1人法人 / 売上300億の法人 等
資金調達額「100万円」〜「5億円」
あらゆる業界の資金調達 / 財務・資金繰りコンサル実績
今回は、従業員持ち株会のメリットやデメリット、設立方法について解説します。
「日本政策金融公庫」や「銀行」、「信用金庫」、「商工中金」からの資金調達は、知識・経験なく「何となく」で進めると必ず失敗します。資金調達の成功には、金融機関の幅広い知見と一定のノウハウが欠かせません。
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従業員持ち株会とは
従業員持ち株会とは、従業員が共同で自社株を購入する会のことです。自社株の取引を行う際に、従業員と会社の間に従業員持ち株会が入るので、従業員は自社株取得を容易にすることができます。
株式投資の知識がない従業員でも、従業員持ち株会と共同で投資できるので財政形成の一助となる制度です。
従業員持ち株会の仕組み
従業員持ち株会では、従業員の給料や賞与から毎月一定の金額を拠出し、集めた資金で共同で自社株を購入します。拠出額に応じて、各従業員に配当金を渡していく仕組みです。
従業員持ち株会の加入は任意となるので必ず加入する必要はありません。毎月自動的に天引きされるのが嫌な人は入らずに済みます。
しかし、会社によっては出資金額に対して奨励金を支給することもあるので、通常よりも多くの金額を株の購入に充てることができるのです。そのため、一般的に会社の福利厚生として認識されています。
従業員持ち株会のメリット
従業員持ち株会のメリットには、株式の社外流出、社員のモチベーションの向上、福利厚生の充実などが挙げられます。また、オーナーにとっても相続税の対策となります。
以下で詳しく解説します。
1. 株式の社外流出の防止
従業員持ち株会が自社株を保有することで、自社の株式の社外流出を防止することができます。
株式会社は、事業を大きく成長させるために株を発行して資金を集めます。この際に、株式の対価として議決権や配当権を付与するため、自社株を多く持っている人が会社の議決権や経営権を得ることになるのです。
もし自社株を社外に多く流出してしまうと、第三者に議決権や配当権が渡り、実質買収されることになります。
しかし、従業員持ち株会を設立すれば、自社の株式の社外流出を防ぎつつ、資金調達をすることができます。株式の社外流出を防ぐことができるので、第三者から買収される心配がなくなるのです。
2. 従業員持ち株会が安定した株主となる
従業員持ち株会は、実質従業員が株の保有者となります。多くの従業員から安定して拠出できるので、安定した株主となってくれるわけです。
また、従業員持ち株会は会長に自社の部長クラスが就任することが多いです。自社の経営方針や運営を賛同してくれる場合がほとんどですので、企業側も安定した運営を行うことができます。
他にも第三者からの買収から会社を守ることができるので会社側にとって大きなメリットになります。
3. 社員のモチベーション向上が図れる
自社の業績が良くなれば配当も増えるため、社員のモチベーションアップにも期待できます。自分の頑張りが配当に直接反映されますから社員のモチベーションアップが期待できるのです。また、自社の株を持つことで経営への参画意識が生まれます。
会社の動向により注目するようになるので会社の一員としての自覚を持たすことができます。すると積極的にアイデアを発言するようになるので、会社の成長を促す効果が見込めるでしょう。
4. オーナーは相続税対策となる
従業員持ち株会は、オーナーの相続税対策にもなります。
オーナーが亡くなると自社株は後継者に相続されるのですが、相続したタイミングで相続税が発生します。この時の相続税は、自社株の評価に応じた額に科されます。
しかし、従業員の持ち株会に自社株を分散しておけば、自社株の評価を下げることができるので、課税される金額を減らすことができるのです。相続税対策ができれば、今後の運営資金を減らさずに済むことができます。
5. 福利厚生が充実する
従業員持ち株会の存在は、一般的に福利厚生の一環となります。従業員の財産形成をサポートするアピールができるので、従業員にやさしい会社として認識されやすいです。
また、従業員の給料やボーナスの支給が難しい場合でも持ち株の配当が増えることをアピールできるので、多くの人材を集めることにも期待できます。
他にも、業績が伸びたタイミングに高額配当や奨励金の支給が行えれば、従業員からの満足度も向上することが期待できるでしょう。
従業員持ち株会のデメリット
次にデメリットを紹介します。従業員持ち株に依存すればするほど、大きな影響を受けるため、事前にどのようなデメリットがあるのか把握しておきましょう。
1. 退会する会員が一時的に増えると資金難になる
従業員持ち株会を退会する会員が一時的に増えると資金難になる恐れがあります。
従業員持ち株会から拠出していた資金を頼りにしていた会社は、一時的に会員が減ることで、これまで拠出していた資金が一気に減少してしまいます。場合によっては、社員持ち株制度の維持が難しくなることや経営難に陥ることが考えられます。
規模の小さい会社や経営が不安定な会社はより影響を受けやすいでしょう。
2. 所有する株の割合が多くなると権利が強くなる
従業員持ち株会が所有する株の割合が増えると権利が強くなります。
自社株を所有する代わりに議決権を付与されるため、議決権の割合によっては少数株主権として請求権を得ることができます。以下に主な請求権についてまとめてみました。
議決権の100分の1以上または300個以上
- 株主総会の議題提案権
- 株主総会の議案通知請求権
議決権の1%以上
株主総会の招集手続等に関する検査役の選任請求権
議決権の3%以上または発行済株式総数の3%以上
- 業務執行に関する検査役選任請求権
- 会計帳簿閲覧謄写請求権
- 清算人の解任請求権
- 役員(取締役、会計参与及び監査役)の解任請求権
議決権の3%以上
- 役員等の責任軽減への異議権
- 株主総会招集請求権
議決権の10%以上または発行済株式総数の10%以上
経営自体には大きな影響はありませんが、経営陣が安定的に運営していくことに関しては難しくなることが考えられます。
特に役員(取締役、会計参与及び監査役)の解任請求権や会計帳簿閲覧謄写請求権は、会社の安定的な運営を困難にするので注意が必要です。
従業員持ち株会のオーナーを理解のある人物を選ぶなど配慮しましょう。
3. 配当金を出し続けなければならない
従業員持ち株会を設けた場合は、配当を出し続けることが前提です。たとえ業績が悪化しても配当を出す必要があるので経営を圧迫する事態を引き起こす可能性もあります。
会社の経営を安定させるための配当がかえって重荷になってしまうのです。
また、配当金を出せないと「会社が経営難なのか」と社員を不安にさせてしまいます。従業員持ち株会に加入する従業員は、ほとんどが安定的な配当を期待しているので、仕事へのモチベーション低下にも繋がってしまうでしょう。
4. 退職時の買取はトラブルになりやすい
従業員の退職時に株を売却して退職する場合、株の買取価額でトラブルになりやすいです。
株の買取は時期によって金額が異なるため、退職したタイミングが違う社員では買取価額に差が生じます。理解のない社員には納得してもらえないのでトラブルになる場合があります。
買取価額については、規約で「持ち株会の会員資格を失ったとき際に株を手放す」と決まりを設けることができます。社員に不満を持たれないためにもルールをしっかり定めておきましょう。
従業員持ち株会の導入事例
実際に従業員持ち株会を導入している企業の事例を見ていきましょう。
ここでは、従業員持ち株会が保有する金額の割合や奨励金を支給する企業の割合について紹介していきます。
株式保有金額の割合
株式会社東京証券取引所は、2019年度従業員持株会状況調査を行いました。
調査対象は2020 年 3 月末現在の東京証券取引所上場内国会社 3,708 社のうち、大和証券、SMBC 日興証券、野村證券、みずほ証券及び三菱 UFJ モルガン・スタンレー証券の 5 社のいずれかと事務委託契約を締結している従業員持株制度を有する 3,236 社です。
2020年3月31日時点を調査対象としたときに、調査対象会社全体の時価総額は516兆4,890 億円でした。
一方で、調査対象会社全体の従業員持株会が保有する株式保有金額は、4兆9,317 億円となるため、従業員持株会の株式保有金額の比率は0.95%になります。
これは議決権の1%にも満たないため、企業は従業員持株会の権利を抑えていることが考えられます。
奨励金を支給する会社の割合や金額
奨励金については、調査対象会社3,133社が支給しているため、全体の96.8%が行っていることがわかります。
また、奨励金の支給額は以下の通りです。
- 100円以上150円未満…全体の0%
- 40円以上60円未満…全体の9%
- 200円…全体の6%
- 300円…全体の6%
- 500円及び1,000円…全体の2%
奨励金は100円以上150未満がもっとも多く次に40円以上60円未満の企業が多いです。この時の拠出金が1,000円となるので、割合で表すと奨励金の10%から15%を支給する企業が多いことがわかります。
また、奨励金の支給は資金に余裕がある企業が高額であると考えられるので、10%から15%は誰もが知る大企業であることが予想できます。
一方で、それほど資金に余裕がない企業でも、4%から6%の支給を行えば不平等感はないことでしょう。
従業員持ち株会の設立方法
従業員持ち株会は、民法第667条第1項に定める組合として設立することが一般的です。設立までには検討すべき内容や手順がありますのでそれぞれ解説します。
検討すべき4つの事項
まずは、
- 「従業員持ち株会の株式保有比率」
- 「株式供給方法」
- 「出資金の拠出方法」
- 「奨励金の支給」
の4つの事項を検討していきます。
特に「従業員持ち株会の株式保有比率」や「奨励金の支給」は支配権の確保や節税対策が絡んでくるので慎重に検討しましょう。
発起人の選出
従業員持ち株会の運営する発起人を選びます。
自社の運営に理解のある人物を選ぶと運営が楽になるので、幹部クラスの社員を選任することが多いです。
事務管理方法を定める
従業員持ち株会の運営の際に事務管理方法を定めます。
自社で行うのか外部委託にするのか決めましょう。自社でする場合は事務担当者の選任を行います。
規約案の作成
従業員持ち株会の設立のために契約書等の原案を作成します。
特に退職時の株の買取はトラブルになりやすいので、買取方法や買取金額を明記するようにしましょう。
発起人会等の開催
まずは発起人会を開催して従業員持ち株会の役員となる理事・監事を選任します。
規約案を承認することで正式な規約が制定され、正式に持ち株会の発足となります。
従業員持ち株会の導入時の注意点
最後に従業員持ち株会の導入時の注意点を解説します。
後々の社員とのトラブルを防ぐことができるので要確認しましょう。
従業員持ち株会の会員資格を明確にする
従業員持ち株会の会員資格を明確にしてきましょう。
例えば会員資格に勤続年数を設けることで社員の流出を防ぐことができます。
また、社員の流出が防げれば一定の拠出額が見込めるので安定した運営をすることができます。
他にも、非正規従業員の扱いについても慎重に決めましょう。
パートや派遣社員など非正規従業員は会員になれないことが一般的ですが、正社員とほぼ同じような短時間正社員のような雇用形態で会員になれないと不公平感が生まれます。
社内全体で公平性を保つためにも正社員に近い雇用形態も会員になれるように定めましょう。
退職時の買取方法や買取金額に注意する
従業員持ち株会の会員が退職する際は、「持分返還」となります。
持分返還とは、会員が会社に対してこれまで購入した株式を買い付けてもらうことです。
ただし、株式の買い付けの価格を規約に明確にしておかないと、高額買取となってしまうケースがあります。
そうならないためにも、退職時の買取について規約で明確にしておきしょう。
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従業員持ち株会の存在は企業にとって多くのメリットがある
従業員持ち株会の存在は、企業にとって多くのメリットがあります。従業員に自社の株を所有してもらえるので、資金の調達だけでなく株式の社外流出を防ぐことにもなるので安定した運営を行うことができます。
また、オーナーにとっても相続税の節税にもなるので十分に導入を検討する価値があるといえるでしょう。
ただし、導入の際に規約を明確に記載しておかなければ後々社員とのトラブルになるので注意が必要です。会員資格や退職時の処理について明確に記載して、社員の納得のいく制度作りを行いましょう。
従業員も持株会以外でも、資金調達(資金繰り改善)の方法は存在します。
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