仮払金の相殺処理の方法とは?資金調達方法やリスクも解説

仮払金役員貸付金として法人から経営者に対して資金を支給している経営者も多いですが、その精算や以下のようなことに頭を悩ませている方も多いではないでしょうか?

中小企業経営者A

仮払金や役員貸付金は、企業や経営者にとってデメリットが多いということを聞いた。本当であれば精算をしたいが、方法がわからない。

中小企業経営者B

仮払金や役員貸付金を精算して資金調達をしたいけど、役員が応じてくれるかわからない。適切な対処法を知りたい

実は、仮払金や役員貸付金を精算することで、まとまった資金を調達することができます

一方で、仮払金や役員貸付金の精算による資金調達は、実行したくてもなかなか実現しにくいのも事実でしょう。仮払金や役員貸付金を放っておくことにはリスクが伴うため、資金調達を機に精算し、健全な企業経営を目指すことが肝心です。

筆者プロフィール
岡島光太郎_(株)融資代行プロ 代表取締役

これまでの支援実績
創業前後の個人/法人中堅企業
調達額「200万円」〜「9.5億円」
多業界の資金調達 / 財務コンサル実績

本記事では仮払金や役員貸付金の精算による資金調達の方法を解説します

  1. 仮払金や役員貸付金の概要
  2. 仮払金や役員貸付金の精算が難しい理由
  3. 仮払金や役員貸付金のリスク
  4. 仮払金や役員貸付金を精算する具体的な方法

この記事を読めば、仮払金や役員貸付金のリスク、生産方法についての知識が他の経営者と比べても格段に上がります。


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目次

仮払金の相殺処理とは

仮払金の相殺処理は、支払い済みの仮払金を、後日確定した実際の勘定科目に振り替えることで精算する会計処理です。これにより、帳簿上で一時的に計上されていた仮払金を、正式な費用として確定できます。

そもそも仮払金は、目的や金額が未確定な経費を支給する場合に使用する勘定科目です。何にいくら使われるのか確定していない状態で支給するため、相殺処理を行わずに放置すると、会計情報が実態と乖離する可能性があります。

仮払金は、あくまで一時的に用いる勘定科目です。決算上のトラブルを防ぎ、自社の財務状況を正しく把握するためにも、仮払金を計上した後は、必ず相殺処理を行って精算しましょう。

仮払金の相殺処理を行う理由

仮払金の相殺処理を行うべき理由は、自社の会計業務に対して、金融機関や取引先から不信感を抱かれることを防ぐためです。

仮払金は、資金の用途や金額が未確定な場合に用いる勘定科目であるため、外部からは「使途不明金」と見られてしまいます。多額の仮払金が計上されたままになっていると、「資金管理能力が低い」「実態とは異なる資産が含まれているのではないか」と信用を損なうかもしれません。

また、相殺処理を行う際は、伝票や領収書との照合作業が必要になるため、後回しにすると担当者の業務負担が大きくなり、ミスも増えやすくなるでしょう。

上記から、仮払金の計上後は、正式な勘定科目が確定した時点で迅速に相殺処理を行うことが重要です。

仮払金の相殺処理の流れ

仮払金の計上から相殺処理を行うまでの流れは、以下のとおりです。

仮払金の相殺処理の流れ

  • 従業員に仮払金の「申請書」を提出してもらう
  • 申請者に仮払金を支給する
  • 帳簿上に仮払金として計上する
  • 従業員に仮払金の「精算書」を提出してもらう
  • 精算書の内容をもとに、仮払金の相殺処理を行う

従業員向けに申請書や精算書の様式を作成し、お金の流れを把握できる仕組みを整えておくと、スムーズに作業を進められます。

仮払金の相殺処理を確実に行うためにも、申請書や精算書は迅速に提出してもらうよう徹底しましょう。

仮払金の相殺例

ここでは、仮払金の相殺処理を行う具体的な事例を紹介します。従業員に出張費として30,000円を支給したケースをもとに、「仮払金の支給時」と「相殺処理時」の仕訳例を、下記にまとめました。

▼仮払金を支給する際の仕訳例

借方貸方
仮払金30,000円現金30,000円

▼仮払金の相殺処理を行う際の仕訳例

借方貸方
旅費交通費15,000円仮払金30,000円
交際費10,000円
現金5,000円

従業員に支給した仮払金に余りが出た場合は、「現金」の勘定科目に振り替えるのがポイントです。

仮払金が実際の費用を下回った場合は、以下のように仕訳することで、正しく相殺処理できます。

▼仮払金が不足している場合の仕訳例

借方貸方
旅費交通費20,000円仮払金30,000円
交際費15,000円現金5,000円

仮払金の相殺処理を行う際は、他の経費計上と区別をつけられるよう、摘要欄に「仮払金の精算」と記載しておきましょう。

経営者への貸付「仮払金」「役員貸付金」とは?

経営者への仮払金とは、取引などの事業活動に使用する可能性があるお金を法人である会社から支給することです。一方、役員貸付金とは、法人である会社から経営者や役員などに貸し付けているお金のことを指します。

仮払金は、実際の経費がかかる前に支払われるお金なので、あくまで一時的に使用すべき勘定項目です。従業員に仮払金が支払われた場合、従業員が実際に使って経費の領収書などを用いて精算を行い、「交際費」や「交通費」など正確な項目に変更しなければなりません。

しかし、経営者や役員に支給された仮払金の場合、事業に使用されず経営者個人が使うお金として計上されていることも珍しくないのです。つまり、仮払金という名目ではあるものの、実態は役員貸付金になっている場合があります。

仮払金や役員貸付金の使われ方

仮払金は事業活動に使用しなければならないはずですが、中小企業ではその実態が異なることも多くあります。たとえば、領収書がもらえなかったり忘れたりした場合に仮払金や役員貸付金を使って補填することがあるかもしれません。

さらに、一時的な役員報酬の代わりに仮払金や役員貸付金を使うこともあります。役員報酬を損益参入するためには、1年以上一定の金額にしておかなければなりません。

しかし、会社の業績が伸びてくると、より多くの報酬を得るために仮払金や役員貸付金を利用します。一定額の報酬はそれほど多くなくても、役員貸付金を大きくすればそれだけ経営者の収入が増える計算です。

さらに、領収書などがなく、税理士に使途を説明できないものを役員貸付金や仮払金として処理する企業もあります。こうした仮払金や役員貸付金を回収することで、企業として資金調達することができる可能性があるのです。

役員借入金は返済期間で勘定項目が変わる

「役員借入金」は、会社が経営者や役員から借り入れるお金を指します。役員借入金は、返済期間によって勘定科目が変わる点が特徴です。

たとえば、1年以内に借入金を返済する場合は「短期借入金」として計上します。返済期間が1年を超える場合は、「長期借入金」として処理しなければなりません。

ただし、契約書がなく、明確な返済時期も定められていない場合に「役員借入金」として処理されるケースも多く見られます。

会計処理のルールが曖昧になると、決算上のトラブルを引き起こす可能性があるため、どの勘定科目で処理するのか事前に決めておきましょう。

経営者への「仮払金」「役員貸付金」精算による資金調達方法

経営者への仮払金や役員貸付金の精算による資金調達方法の理屈は、それほど難しいものではありません。仮払金や役員貸付金を返済してもらうだけで資金調達ができるというものです。

しかし、仮払金や役員貸付金とはそもそも何かを理解していなければ資金調達が行えません。さらに、仮払金や役員貸付金をどのように回収できるのかも知る必要があるでしょう。

経営者への仮払金や役員貸付金を精算する方法や、計上している仮払金や役員貸付金をそのままにしておくリスクなどについても知っておく必要があるのです。

経営者への「仮払金」「役員貸付金」の精算が難しい3つの理由

経営者への仮払金や役員貸付金を精算することで資金調達ができるのであれば、どの企業も実行すればよいと思うかもしれませんが、実はそう簡単ではありません。仮払金や役員貸付金を精算しての資金調達が難しいのにはいくつかの理由があるのです。

今後仮払金や役員貸付金の精算によって資金調達したい方のために、3つの理由を見ていきましょう。

理由1. 会社の資金と自分の資産を混同している

最初の問題は、経営者が会社の資産と自分の資産を混同している場合がある点です。中小企業の経営者によくあるパターンですが、会社のお金を自分のものだと思っている方は少なくありません。

そのような経営者に対して仮払金や役員貸付金の精算による資金調達を提案した場合、気分を害するであろうことは容易に想像できます。場合によっては、進言した従業員の評価を下げるなどの行動を取るかもしれません。

理由2. 経営者に対して進言しにくい

中小企業で仮払金や役員貸付金の精算による資金調達が難しい別の理由は、一般の従業員と経営者との力の差にあります。中小企業であれ、一般の従業員は経営者に雇用されている身です。

経営者の意に沿わないことを言ったり行ったりすれば、評価を下げられたり不当な扱いを受けたりする恐れがあります。ワンマンの経営者の場合は、とくにその心配があるでしょう。経理担当者や役員であっても、経営者に仮払金や役員貸付金の精算を持ちかけるのは勇気のいることです。

一方で、税理士や会計士も、経営者に進言するのは簡単ではありません。税理士や会計士の多くは企業と顧問契約を結んでおり、毎月一定の収入を得ています。もし、経営者の意に沿わない仮払金や役員貸付金の精算を申し出た場合、顧問契約が解消されてしまうかもしれません。

仮払金や役員貸付金の精算以外に資金調達方法があれば、そちらを提案する方がよいという判断になるのも頷けます。

理由3. 経営者に返済能力がない

仮払金や役員貸付金の精算でもっとも大きな問題となるのが、経営者の返済能力です。仮払金や役員貸付金は数百万円単位に上ることもあり、これを一度の返済するのは簡単ではありません。

しかも、仮払金や役員貸付金が多額になっている場合、経営者がほとんどお金を持っていないことがあります。というのは、役員貸付金が多額になるのには主に2つの理由があるからです。

一つは、経営者が立て替えた経費をそのまま計上すると赤字になってしまうため、役員貸付金としてごまかしているケースです。もう一つは税負担を回避するために設定した役員報酬が非常に低額で、生活費を役員貸付金から捻出しているケースです。

どちらも経営者が資産を持っていないために、役員貸付金を使っているというケースなので、精算を求めても返済能力がないことがあります。

経営者への「仮払金」「役員貸付金」を放置する3つのリスク

経営者への仮払金や役員貸付金が難しいとはいえ、実行しなければならない理由があります。それは、仮払金や役員貸付金があると企業にとってリスクとなるからです。

仮払金や役員貸付金を放置しておくことによるリスクを3つ見ていきましょう。

リスク1. 会社の対外的評価が低下する

仮払金や役員貸付金が企業に与えるリスクの代表的なものは、対外的評価の低下でしょう。主に、銀行などの金融機関からの信用が低下します。

金融機関からの信用が低下すると、融資が受けにくくなるという大きなデメリットが生じます

仮払金や役員貸付金は、帳簿では資産に記載されますが、金融機関は資産とは評価してくれません。というのは、仮払金や役員貸付金は基本的に返済されることがないので、金融機関からすれば「損失」という扱いになります

企業の中には、この点を考慮して、仮払金や役員貸付金を差し引いた金額を資産として計上しているところもあるほどです。したがって、企業が持っている資産がより少なく評価されるので融資が受けにくくなるのは言うまでもありません。

さらに、経営者の誠実性が疑問視されることもあります。仮払金や役員貸付金は、経営者が自由に使えるお金です。毎年多額の役員貸付金が計上されていたり、仮払金が増える一方で一向に返済されていなかったりすると、金融機関の印象は非常に悪くなります。

どのような理由であれ、仮払金や役員貸付金という名目で経営者が自由にお金を使っているように見えるからです。金融機関からすれば、経営者が会社の資金と自分の資産を混同している企業に融資しようとは思わないでしょう。

さらに融資をしたとしても、経営者によって役員貸付金として使い込まれてしまうのではないかと危ぶむのが自然です。会社の評価が一気に悪くなる恐れがあるため、仮払金や役員貸付金の精算は非常に重要なのです

リスク2. 仮払金や役員貸付金には金利が発生する

仮払金や役員貸付金の別のリスクは、金利の発生です。経営者が会社から借りているお金なのだから金利など発生しないだろうと考えている経営者は少なくありませんが、法律上は金利が発生します

役員貸付金がいつ発生したかによって、1.6%から4.5%の金利が発生し、経営者はこの利息を支払わなければなりません。低金利や無利息で役員貸付金を利用した場合、災害や病気などの特殊なケースを除いて給与として課税されることになります。

この金利が会社にとって大きな問題となります。

会社にとって役員貸付金にかかる利息は、収入もしくは利益として計算されます。仮払金や役員貸付金が精算されない場合、会社は多額の未収入金があることになるでしょう。

さらに、実際に利益は増えていないのに、利息分の利益が増えたことになるため、法人税も増えます。仮払金や役員貸付金を放置しておくと、経営者は返済すべき金額が増え、会社は法人税が増えていくのでデメリットしかありません。経営者への仮払金や役員貸付金は、できるだけ早く解消するのが得策です

リスク3. 退職金の大幅減額につながる

経営者への仮払金や役員貸付金をそのままにしておくと、退職金を大幅カットせざるを得ない場合があるので注意が必要です。経営者が仮払金や役員貸付金を精算せずに退職に至った場合、役員退職金と相殺しなければならなくなります。

当然、それまでに支払うべきだった利息を含めての精算となるので、かなりの金額が退職金から差し引かれることになりかねません。本来受け取れるはずの退職金から、大幅に減額される恐れもあるので、仮払金や役員貸付金を早急に精算することが必要となります。

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経営者への「仮払金」「役員貸付金」を精算する4つの方法

経営者への仮払金や役員貸付金はデメリットが大きいので、早急に精算しなければなりません。仮払金や役員貸付金を精算する4つの方法について見ていきましょう。

方法1. 役員報酬を上げる

仮払金や役員貸付金を精算するもっともオーソドックスな方法は、役員報酬を上げるというものです。

役員報酬が少ないために、生活費などを役員貸付金や仮払金から支払っているケースでは、役員報酬を上げるのが有効です。役員報酬が上がれば、経営者はより多くの給与を得ることができ、余ったお金の中から徐々に役員貸付金を返済していくことができます。

経営者が比較的同意しやすい精算の仕方です。

方法2. 個人の資産を売却する

仮払金や役員貸付金を精算する別の方法は、経営者個人の資産を会社に売却するものです。

経営者に現金がなくても、自動車や有価証券、不動産などを所有している可能性があります。資産を会社に売却しても、経営者が自動車や不動産を使えるようにしておけば、同意を得やすいでしょう。

ただし、経営者に売却益が発生した場合には所得税の申告が必要となるので注意が必要です。さらに、自動車や不動産の価値を相場から逸脱するほどに高く設定して役員貸付金と相殺するのは、脱税の疑いをかけられる恐れがあります。

必ず適正価格で売却することを心掛けるべきです。

方法3. 経営者が金融機関から融資を受ける

仮払金や役員貸付金を精算する別の方法は、経営者が金融機関から融資を受けるものです。現金や資産を持たない経営者が融資を受けるのは難しいと思われますが、生命保険を担保にすれば融資を受けられる可能性があります。

生命保険から貸したお金が回収できるので、金融機関も比較的低金利で融資をしてくれるでしょう。

方法4. 会社が債権放棄する

最悪の場合、会社が役員貸付金の債権を放棄することもできます。これで役員貸付金はなくなりますが、役員貸付金が役員報酬として扱われるため法人税が大幅に増える恐れがあります。

ただし、大きなデメリットがあるので、あまり利用されません。会社の経営状態が著しく悪く、役員貸付金をすぐに解消しなければならないといったケースでのみ利用される方法です。

仮払金や役員貸付金はできるだけ早く精算するのがベスト

仮払金や役員貸付金は、会社にとってデメリットになることがほとんどです。一刻も早く精算し、会社の財務状況を健全にするのがよいでしょう。信頼される会社になり、金融機関からの融資を受けやすくするためにも、仮払金や役員貸付金の精算が重要なのです。

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