新株予約権付融資は、株式発行(エクイティ)と融資(デット)の両方の性質を持つ資金調達方法で、株式の希薄化を抑えたい企業や、融資を受けにくい企業にとって大きなメリットがあります。
新株予約権付融資の活用を検討している方は、以下のようなお悩み・疑問をお持ちではないでしょうか?
「新株予約権付融資をウチの会社で利用するメリットはある?どのようなリスクがあるのかも知りたい」
「新株予約権付融資はメリットが多いと聞いたが、いまいち仕組みがわかっていない。実際どのような融資制度なんだろう」
「新株予約権付融資を利用している企業はあまりないため、自社で取り入れるべきか迷っている」
新株予約権付融資は、将来的に株式を取得できる権利(新株予約権)を金融機関に付与することで、無担保・無保証での借入を実現できる融資制度です。
新株予約権付融資には、以下5つのメリットがあります。
新株予約権付融資を活用する「5つのメリット」
- メリット1. 株式の希薄化を防げる
- メリット2. 経営権を維持できる
- メリット3. ダウンラウンド回避のつなぎ資金として利用できる
- メリット4. 調達資金を柔軟に活用できる
- メリット5. エクイティ調達よりも迅速に実行される
ただし、利用の際は、以下5つのデメリットにも注意しなければなりません。
新株予約権付融資を活用する「5つのデメリット」
- デメリット1. 権利行使によって株式の希薄化が生じる
- デメリット2. 元本や利息の返済義務が発生する
- デメリット3. 金利は若干高い傾向にある
- デメリット4. コベナンツ(債務者の義務)により経営の柔軟性が制限される
- デメリット5. 数百億円規模の資金調達は難しい可能性がある
新株予約権付融資では、企業の財務状況よりも将来性が重視されるため、信用力が乏しいベンチャー企業やスタートアップが利用しやすい資金調達方法だといえます。
安定した経営を実現させるためにも、これらのメリット・デメリットを正しく理解し、効果的に融資を活用しましょう。
筆者は「融資代行プロ」という成果報酬型の「融資コンサル」サービスで、これまで多くの会社の新株予約権付融資をご支援してきました。

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本記事では、融資のプロである筆者が、「新株予約権付融資の仕組み」や「メリット・デメリット」等、以下の内容を丁寧に解説します。融資支援の現場で培ったリアルで濃い内容なので、「ブックマーク」して、あとから何度も読み返すことをオススメします。
- 新株予約権付融資の仕組み
- 新株予約権付融資のメリット・デメリット
- 新株予約権付融資を活用すべきタイミング
- 新株予約権付融資の戦略的な活用方法
- 新株予約権付融資の会計処理や評価
「デットとエクイティのメリットを最大限に活かしたい」「新株予約権付融資を活用すべきか検討したい」とお考えの方は、ぜひ本記事を参考にしてください。
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新株予約権付融資とは?仕組みを解説
「新株予約権付融資」は、金融機関に対して新株予約権(将来的に株式を取得できる権利)を発行する代わりに、融資を受ける資金調達方法です。
「デットファイナンス(借入による資金調達方法)」と「エクイティファイナンス(株式発行による資金調達方法)」の両方の性質を併せ持った手法となっています。
新株予約権付融資の大きな特徴は、新株予約権を発行することで金融機関のリスクが軽減され、「無担保」「低金利」の融資を受けやすくなることです。
そのため、不動産や知的財産など、担保にできる資産を持たない創業初期のベンチャー企業やスタートアップにとって、有効な資金調達方法だといえます。
「融資」との違い
新株予約権付融資と一般的な融資は、どちらも金融機関から資金を借り入れる方法ですが、審査で重視されるポイントが大きく異なる点に注意が必要です。
一般的な融資では、「企業の返済能力」が重視されるため、過去の財務諸表やキャッシュフロー、担保・保証人の有無などが主な審査項目となります。そのため、実績の少ないベンチャー企業やスタートアップにとっては、資金調達のハードルが高くなる点が特徴です。
一方、新株予約権付融資では「企業の将来性」が判断基準となるため、審査では「事業モデルの優位性」「チームの実行力」などが評価されます。
このように、返済能力よりも成長性を重視する審査基準によって、創業間もない企業でも資金調達を実現しやすくなる点が、一般的な融資との大きな違いです。
「転換社債型新株予約権付社債(転換社債)」との違い
「転換社債型新株予約権付社債(転換社債)」とは、発行時に定められた価格で、一定期間内に債券を株式へ転換できる権利が付与された社債です。
投資家は、社債を満期まで保有して定期的に利息を受け取るか、将来の株価上昇を見込んで株式に転換するかを選択できます。
株式に転換できる権利を付与することで、企業は低金利で資金を調達でき、投資家はリスクを抑えながらリターンを狙える点がメリットです。
なお、転換社債は金融機関や投資家から幅広く資金を集められるのに対し、新株予約権付融資は金融機関のみが貸し手となる点が大きく異なります。
また、転換社債は株式に転換された時点で元本の返済義務がなくなりますが、新株予約権付融資は株式取得の有無に関わらず、元本と利息の返済が必要です。
ただし、転換社債も満期までに株式へ転換されなかった場合は、額面金額を償還する必要があります。一度に多額の資金が流出するため、資金繰りが悪化しやすくなる点に注意しましょう。
新株予約権付融資を活用する「5つのメリット」
新株予約権融資を活用するメリットは、以下の5つです。
- メリット1. 株式の希薄化を防げる
- メリット2. 経営権を維持できる
- メリット3. ダウンラウンド回避のつなぎ資金として利用できる
- メリット4. 調達資金を柔軟に活用できる
- メリット5. エクイティ調達よりも迅速に実行される
デットとエクイティ両方のメリットを活かすことで、資金繰りを安定させながら、自由度の高い柔軟な経営を実現できます。
メリット1. 株式の希薄化を防げる
新株予約権付融資の大きなメリットは、株式発行による資金調達という「エクイティファイナンス」の側面を持ちながら、株式の希薄化を防げる点です。
通常、エクイティファイナンスで資金調達すると、返済不要の資金を得られる一方、新株発行によって既存株主が持つ株式の価値が下がってしまいます。
しかし、新株予約権付融資は融資を受けた時点で株式が発行されるわけではないため、持株比率が低下したり、株式の価値が減少したりする心配がありません。
株式の希薄化を防げると、株価の下落によって既存株主が不満や不信感を抱くリスクが軽減され、従来通り安定的な支援を受けやすくなります。
また、金融機関が新株予約権を行使するかどうかは任意であるため、株式取得が行われない場合は、持株比率を維持したまま資金を確保できる点もメリットです。
まとまった資金を確保しつつ、既存株主との関係を保持できれば、事業拡大に向けた取り組みを進めやすくなり、結果として安定した経営につなげられるでしょう。
メリット2. 経営権を維持できる
株式の希薄化を防ぐことで経営権を維持し、自由な事業運営を続けられる点も、新株予約権付融資のメリットです。
株式発行による資金調達は、株主の増加によって経営者の持株比率が低下し、経営の自由度が下がってしまう点がデメリットとなります。
一方、新株予約権付融資は、金融機関が権利を行使するまで株主構成が変わらないため、資金調達後も自由度の高い経営を行えるのです。
経営権を維持したまま必要な資金を確保できれば、長期的な成長を見据えた投資判断や事業戦略も進めやすくなり、着実に安定した経営基盤を築けるでしょう。
メリット3. ダウンラウンド回避のつなぎ資金として利用できる可能
新株予約権付融資は、次のエクイティファイナンスを実行するまでの「つなぎ資金」として活用することで、ダウンラウンドを避けられます。
「ダウンラウンド」は、前回の資金調達よりも低い株価で出資を受けることです。多くの株式を発行する必要があるため、既存株主の損失に直結するリスクとなります。
評価額が大きく下がることで、顧客や取引先から「売上に影響を及ぼす懸念事項があるのでは」と不信感を抱かれる可能性もあるでしょう。しかし、新株予約権付融資は、株式の希薄化が生じるリスクを最小限に抑えつつ、事業成長に向けた資金を確保できるよう設計されているのが特徴です。
比較的短期間で資金を調達できるため、次のエクイティファイナンスを実行するまでの間も、アクセルを踏み続けながら事業拡大を図れます。
投資家との交渉が長引いて手元資金が不足し、交渉力が低下するのを防ぐには、エクイティファイナンスを実行する前に融資を受けるのがおすすめです。
結果として、企業は適切なタイミングや有利な条件で次回の資金調達を実施でき、既存株主も高いリターンを得やすくなります。
メリット4. 調達資金を柔軟に活用できる
新株予約権付融資の多くは資金使途に制限がないため、事業の成長段階や経営状況に応じて柔軟に資金を活用できます。
一般的な融資では、「設備資金」「運転資金」などの資金使途が明確に定められており、それ以外の目的で使うのは認められていないケースがほとんどです。融資を受ける際に申告した目的と異なる用途で資金を使用すると、一括返済を求められたり、将来的な融資に悪影響を及ぼしたりする可能性もあります。
一方、新株予約権付融資は、調達した資金を「人材採用費」「研究開発費」「広告宣伝費」など、事業の成長に向けて幅広く活用できる点がメリットです。
特に、創業初期のベンチャー企業やスタートアップは、ビジネスモデルが十分に確立していない段階にあり、資金需要も大きく変動しやすい傾向があります。
そのため、調達した資金を自由に活用できることは、資金繰りの安定化を図りながら成長スピードを加速させる上で大きな安心材料となるでしょう。
メリット5. エクイティ調達よりも迅速に実行される
新株予約権付融資は、株式発行(エクイティファイナンス)に比べて審査期間が短く、迅速に資金を調達できる点もメリットです。
エクイティファイナンスを実行するには、以下のプロセスを踏む必要があり、多くの場合は資金調達までに数ヶ月程度かかります。
エクイティファイナンスに必要なプロセス
- 投資家へのプレゼン
- 企業価値評価(バリュエーション)の精査と合意
- 企業のリスクを特定するデューデリジェンス(DD)
- 複雑な契約交渉
一方、新株予約権付融資は返済期間が設けられており、返済時の優先度もエクイティファイナンスより高いのです。つまり、金融機関側にとって資金回収の見通しを持ちやすく、株式を発行する場合に比べてリスクも低いため、審査が短期間で終わるケースが多いのです。
ただし、金融機関が新株予約権付融資の可否を判断する際は、エクイティファイナンスの実現可能性が審査されます。スタートアップ評価のノウハウがない金融機関に融資を申し込むと、予想以上に時間がかかる可能性があるため、金融機関選びは慎重に行いましょう。
新株予約権付融資を活用する「5つのデメリット」
新株予約権付融資を活用するデメリットは、以下の5つです。
- デメリット1. 権利行使によって株式の希薄化が生じる
- デメリット2. 元本や利息の返済義務が発生する
- デメリット3. 金利は若干高い傾向にある
- デメリット4. コベナンツ(債務者の義務)により経営の柔軟性が制限される
- デメリット5. 数百億円規模の資金調達は難しい可能性がある
融資を受けた後に資金繰りを悪化させないよう、想定されるリスクをあらかじめ把握しておきましょう。
デメリット1. 権利行使によって株式の希薄化が生じる
新株予約権付融資を活用する最大のデメリットは、金融機関が新株予約権を行使した際に、株式の希薄化が生じることです。
権利を行使すると、新株発行によって「発行済株式総数」が増加するため、既存株主の持株比率が相対的に低下し、株式の価値も分散されてしまいます。
株式の希薄化によって持株比率が低下すると、既存株主が不満や不信感を抱きやすくなり、安定した資金援助を受けにくくなるでしょう。また、経営者の持株比率が下がって株主に経営権を握られると、自由な意思決定が難しくなり、機動的な経営判断を行えなくなるかもしれません。
これらのリスクを防ぐためには、まず新株予約権が行使されるケースを想定した上で、慎重に条件を設定することが重要です。希薄化の影響を最小限に抑えられるように発行数を調整すれば、金融機関が権利を行使した後も、安心して自由度の高い経営を続けられます。
既存株主に対しては、「新株予約権を発行する目的」や「将来的な企業価値向上の見込み」を丁寧に説明し、融資を受ける前に理解を得ましょう。
デメリット2. 元本や利息の返済義務が発生する
新株予約権付融資は、あくまで「借入」をベースとした資金調達方法であるため、一般的な融資と同様に元本や利息の返済義務が発生する点に注意が必要です。
特に、創業初期や成長段階にあるベンチャー企業・スタートアップは、毎月の返済が大きな負担となり、事業が安定する前に資金繰りが悪化するかもしれません。だからといって、期日を守らず返済を後回しにすると、金融機関からの信用が低下し、将来的な追加融資や新たな資金調達に悪影響を及ぼす可能性があります。
新株予約権付融資を活用する際は、返済義務が発生することを踏まえ、事業計画に沿った無理のない返済スケジュールを立てておきましょう。
できる限りコスト負担を抑えたい場合は、元本の返済を一定期間猶予できる「据置期間」を設けた融資制度を活用するのもおすすめです。据置期間中に余剰資金を活用して利益拡大を図れば、元本の返済が生じた際も、資金繰りに余裕を持って支払いを続けられます。
デメリット3. 金利は若干高い傾向にある
新株予約権付融資は、一般的な銀行融資と比べて、金利が高く設定される傾向があります。
ベンチャー企業やスタートアップは事業収益が不安定、かつ不動産などの担保も無いことが多いため、返済能力は低く見積もられます。こういった企業に対して、金融機関が無担保融資を行うには、リスクの高さを補うために金利を高く設定する必要があるのです。
金利負担が重くなると、融資を受けた企業は毎月の支払いに追われることになり、かえって資金繰り悪化のリスクが高まるでしょう。
一方で、新株予約権付融資では貸し手の銀行は、融資実行と引き換えに新株予約権(エクイティ要素)を無償で取得できます。これにより、銀行は将来、新株予約権の行使と株式売却を通じてキャピタルゲイン(株式売却益)を得るというリターンも期待できるため、新株予約権が付与されない通常の融資に比べて、表面金利自体は低く設定されるケースもあります。
デメリット4. コベナンツ(債務者の義務)により経営の柔軟性が制限される
新株予約権付融資では、融資を受ける企業にコベナンツ(債務者の義務)が適用される場合があります。これにより、経営の自由度が制限される可能性がある点に注意しましょう。
「コベナンツ」は、貸し手(金融機関)がリスクを軽減するために、借り手に対して設ける義務や制限事項のことです。
企業の信用力に応じて、「自己資本額の維持」などの財務制限条項が設定される場合があります。
新株予約権付融資は、貸し手である金融機関が信用リスクを補完するために、新株予約権を取得するのが特徴です。しかし、融資先企業の与信管理やモニタリングを行うには、経営の自由度を制限するコベナンツも設定する必要があります。
特に、融資契約と新株予約権割当契約がセットで行われている場合は、コベナンツが長期的に適用される点に注意しましょう。この場合、借入金を完済した後も、金融機関が新株予約権を保有し続ける限り、コベナンツで設定された義務が残る可能性があります。
コベナンツが残り続けると、M&Aや大規模な資金調達など重要な経営判断を行う際に、契約上の制限を受けたり、金融機関の同意を得る必要が出てきたりするかもしれません。
そのため、新株予約権付融資を利用する際は、コベナンツの内容が事業拡大を図る上で障害とならないか、慎重に検討することが重要です。
デメリット5. 数百億円規模の資金調達は難しい
新株予約権付融資は、金融機関の融資枠を活用した制度であり、数百億円規模の大規模な資金調達には向かない点もデメリットです。
エクイティファイナンスのように不特定多数の投資家から資金を集める手法ではないため、調達額は数千万円〜数十億円程度に留まるケースが多く見られます。特に、大規模な設備投資や研究開発を進めたい企業にとっては、物足りなく感じるでしょう。
事業拡大に向けて多額の資金を調達するには、希望額を事前に整理した上で、新株予約権付融資とエクイティファイナンスを併用するのが効果的です。
新株予約権付融資で株式の希薄化リスクを抑えつつ、エクイティファイナンスで資金調達額を増やせば、スピード感を持って事業を運営しやすくなります。
また、事業内容や経営状況に応じて、「プロジェクトファイナンス」や「シンジケートローン」などの大型融資を組み合わせることも検討してみましょう。
以下記事では、「銀行で受けられる大型融資」や「シンジケートローンの特徴」を詳しく解説しているため、ぜひ参考にしてください。


新株予約権付融資を活用すべき「2つのタイミング」
新株予約権付融資を上手く活用するためには、資金調達のタイミングを慎重に見極めることが重要です。
具体的には、以下のタイミングで新株予約権付融資を活用しましょう。
- タイミング1. 事業拡大を目指す「アーリー期(成長期)」
- タイミング2. エクイティファイナンスを行った「直後」
適切な時期に資金調達を行えば、融資の成功率が高まり、安定的な事業拡大にもつなげられます。
タイミング1. 事業拡大を目指す「アーリー期(成長期)」
新株予約権付融資は、創業直後の事業拡大を目指す「アーリー期(成長期)」に活用しましょう。
起業前の準備段階を示す「シード期(創業期)」は、金融機関が信用リスクを適切に評価するための実績や財務データが十分に揃っていません。そのため、融資を申込んでも、金融機関が積極的に検討してくれる可能性は低いでしょう。
一方、アーリー期は、事業の方向性や収益化モデルがある程度明確になり、金融機関に対して将来的な成長可能性を具体的に説明できる段階です。金融機関も「企業価値がどの程度向上するか」「どれくらいの期間で資金を回収できるか」を見通せるようになるため、融資の可否を判断しやすくなります。
多くの支出を伴うアーリー期にまとまった資金を確保できると、事業の成長スピードが加速するのはもちろん、競合他社との差別化も図りやすくなるでしょう。
タイミング2. エクイティファイナンスを行った「直後」
「アーリー期(成長期)」以降の企業が新株予約権付融資を活用するタイミングとしては、エクイティファイナンスを実施した「直後」がおすすめです。
株式発行によって資金を調達し、企業の信用力が向上したタイミングであれば、金融機関との交渉を進めやすくなり、迅速な融資を実現できます。
エクイティファイナンスを行うと、自己資本の増加に伴い、企業の財務体質を強化できる点が大きなメリットです。金融機関は貸し倒れリスクを考慮して融資の可否を判断するため、自己資本比率が高い企業ほど信用度が高く、肯定的な評価を受けやすくなります。
新株予約権付融資は「返済能力」よりも「将来性」が重視される資金調達方法ですが、財務健全性の高い企業が審査で有利になりやすいのも事実です。
エクイティファイナンスを組み合わせることで、より多額の資金調達も可能になるため、資金戦略の一つとして活用を検討してみましょう。
「日本政策金融公庫」が提供する新株予約権付融資を紹介
「日本政策金融公庫」は、民間金融機関の取り組みを補完しつつ、中小企業や小規模事業者を対象とした融資を行う政策金融機関です。
民間金融機関では対応が難しい事業者を積極的に支援する役割を担っているため、信用力の低い企業でも資金を調達できる可能性があります。
日本政策金融公庫が実施している「新株予約権付融資」の詳細情報は、以下のとおりです。
▼日本政策金融公庫「新株予約権付融資」の詳細情報
| 融資限度額 | 融資および社債の合計限度額20億円 ※原則として、取得する新株予約権は権利を行使したものとして算出した発行済株式総数の50%以内 |
|---|---|
| 新株予約権の行使価額 | 新株予約権取得時の株式の時価 |
| 新株予約権の発行価額 | 無償 |
| 金利 | 上限2.5% |
| 返済期間 | 20年以内(うち据置期間10年以内) |
| 予約権割合 | 下限10% ※予約権割合=行使価額の総額÷融資金額 |
| 行使期間 | 新株予約権発行日から償還期限まで |
日本政策金融公庫の新株予約権付融資は、企業の成長支援を目的とした制度であり、公庫が新株予約権を行使して株式を取得することは基本的にありません。なぜなら、政策金融機関である日本政策金融公庫は、「民間企業の株式を保有しない」という立場を取っているためです。
そのため、新株予約権は「株式の時価が行使価額の2倍以上になる」「株式を公開する」など、一定の条件を満たした際に、経営責任者が買い取る仕組みとなっています。権利の行使によって株式の希薄化が生じるリスクがないため、融資を受けた企業は、経営権を維持しながら自由度の高い経営を行えるでしょう。
また、金利は上限2.5%と民間金融機関より低く、返済期間も最大20年と長めに設定されているなど、資金繰りを安定させやすいのも嬉しいポイントです。
なお、「日本政策金融公庫の融資を攻略するコツ」を詳しく知りたい方は、以下記事も合わせてチェックしてみてください。

新株予約権付融資とRBF(レベニュー・ベースド・ファイナンス)との戦略的組み合わせ
新株予約権付融資とRBF(レベニュー・ベースド・ファイナンス)は、いずれも株式発行(エクイティ)と融資(デット)のギャップを埋める資金調達方法です。
「RBF(レベニュー・ベースド・ファイナンス)」は、将来の売上を担保に資金を調達する方法を指します。将来の売上予測があれば、現時点で利益が出ていない企業でも、まとまった資金を得られる点が大きな特徴です。
新株予約権付融資とRBFを戦略的に組み合わせれば、株式の希薄化を最小限に抑えつつ、事業拡大に必要な資金をスピーディに確保できます。
新株予約権付融資とRBFの主な違いは、以下のとおりです。
▼新株予約権付融資とRBFの違い
| 新株予約権付融資 | RBF | |
|---|---|---|
| 基本的な性質 | デット(融資)+エクイティ(新株予約権) | デット(融資)に近い |
| 希薄化リスク | 低い(権利行使時まで希薄化を遅延) | なし(回避できる) |
| 資金提供者 | 日本政策金融公庫、民間金融機関など | 民間会社 |
| 返済の特徴 | ・返済期間が長い(公庫は20年以内) ・元本一括返済や月々返済など多彩 | ・将来の売上予測に応じて返済額が決まる |
上記の違いを踏まえ、SaaS企業が2つの資金調達方法を組み合わせる場合の活用例を見ていきましょう。
▼新株予約権付融資とRBFの活用シナリオ(SaaS企業の場合)
| 1. シリーズA/B間のつなぎとして活用 | |
|---|---|
| 資金ニーズ | 短期的な広告投資(CAC増加) |
| 活用すべき手法 | RBF |
| 目的 | 株式の希薄化を避けつつ、売上予測に基づき迅速に資金を調達する |
| 効果 | 短期的な成長加速に活用することで、次回ラウンドのバリュエーション向上を狙える |
| 2. PMF後(自社商品・サービスが市場で受け入れられている状態) | |
|---|---|
| 資金ニーズ | 長期的な技術・組織開発、人材採用 |
| 活用すべき手法 | 新株予約権付融資 |
| 目的 | 日本政策金融公庫などから大規模な長期資金を調達する |
| 効果 | 返済義務はあるものの、株式の希薄化を最小限に抑えながら、成長の基盤づくりに投資できる |
| 3. IPO準備期 | |
|---|---|
| 資金ニーズ | 利益水準を悪化させないこと |
| 活用すべき手法 | RBF |
| 目的 | 新株予約権付融資の実質金利によるP/L(損益計算書)への影響を回避する |
| 効果 | 会計処理がシンプルなRBFを活用することで、利益水準の安定化を図れる |
長期的な戦略で経営の安定化につなげたい場合は、上記の活用例を参考にすることで、資金計画を立てやすくなります。
なお、「RBFが向いている企業や利用できるサービス」を詳しく知りたい方は、以下記事も合わせてチェックしてみてください。

新株予約権付融資の「会計処理」「評価」
新株予約権付融資は、「デットファイナンス」と「エクイティファイナンス」を組み合わせた手法であるため、どのように会計処理を行うべきか悩む人も多いでしょう。
一般的に、新株予約権付融資を利用する際は、「融資(借入金)」部分と「新株予約権」を区分法で分離し、会計処理を行うのが適切だと考えられています。新株予約権付融資は、「金融機関からの融資」と「新株予約権の発行」が同時に行われる取引であり、両者はそれぞれ独立して存在しているためです。
会計処理を誤ると、遡及修正が求められるだけでなく、上場前の企業は想定外の費用が発生する可能性もあるため、慎重な対応が求められます。
また、新株予約権付融資を受ける際は、新株予約権の発行企業として、融資の価値を適切に評価しておくことも重要です。
たとえば、新株予約権の発行によって通常の融資より金利が低くなる場合には、以下の方法で価値を算定しましょう。
新株予約権付融資を評価する方法
- 1. 金融機関から受ける融資の総額を確認する
- 2. 簡単に算定できる項目から評価する
新株予約権の時価は算定が難しいため、融資部分の時価を計算するのが一般的 - 3. 通常の金利を前提に「融資部分の現在価値」を求める
- 4. 融資総額から「現在価値」を差し引く
差し引いた金額が「新株予約権部分の価値」となる
上記の流れで計算すれば、新株予約権の発行によって回収している「見えないコスト」も把握できるため、新株予約権付融資の正しい価値を見極められます。
特に、上場前の企業は「自社株式」「新株予約権」の評価が必要となることから、新株予約権付融資の会計処理や評価をしっかり把握しておくと安心です。
「新株予約権付融資のメリット・デメリット」についてよくある質問
新株予約権付融資のメリットやデメリットについて、よくある質問を下記にまとめました。新株予約権付融資について理解を深めるためにも、ぜひ参考にしてください。
新株予約権の発行で株価が下がることはありますか?
新株予約権の発行時点で株価への影響はありませんが、権利が行使されて「発行済株式総数」が増えると、1株あたりの価値は相対的に下がってしまいます。
この現象は一般的に「株式の希薄化」と呼ばれており、既存株主の経営に対する影響力の低下や、信頼関係の悪化を招くリスクがある点に注意が必要です。
新株予約権付融資を利用する際は、権利行使後に生じるリスクを踏まえ、あらかじめ発行数を調整しておきましょう。
新株を発行するメリット・デメリットは何ですか?
新株発行によるメリット・デメリットを、下記にまとめました。
▼新株発行のメリット・デメリット
| メリット | ・返済義務のない資金を得られる ・自己資本が増えて財務体質が強化される ・企業の信用力向上に伴い融資を受けやすくなる |
| デメリット | ・持株比率の低下により自由な経営が難しくなる ・既存株主に不満や不信感を抱かれやすくなる ・法人税などの税負担が増える可能性がある |
新株予約権付融資は、金融機関から融資を受ける「デット」だけでなく、株式を発行する「エクイティ」の性質も併せ持っています。
資金調達を行う際は、これらのメリット・デメリットを十分に理解した上で、融資を申込むことが大切です。
新株予約権を行使しなかった場合はどうなりますか?
新株予約権付融資において、新株予約権が行使されなかった場合、金融機関や融資を受けた企業の双方に影響が生じます。
融資を受ける企業は、持株比率が維持されるため、「経営権を維持しながら事業に取り組める」というメリットを得られるでしょう。
金融機関は、新株予約権の価値が消滅することで、企業価値の向上に伴うキャピタルゲインを獲得できなくなってしまいます。
新株予約権の行使については、金融機関の判断に委ねられますが、上記の影響が生じることも一つの可能性として押さえておきましょう。
新株予約権に返済義務はありますか?
新株予約権は、将来的に株式を取得できる「権利」であるため、原則として返済義務はありません。
ただし、新株予約権付融資はあくまで「借入」を前提とした資金調達方法であり、元本や利息の返済義務が発生する点に注意が必要です。
返済が滞ると信用力が低下し、今後の融資を受けにくくなる可能性があるため、無理のない返済計画を立て、確実に返済していきましょう。
新株予約権付融資のメリット・デメリットを理解して資金調達に活かそう!
新株予約権付融資のメリット・デメリットを理解した上で資金調達に臨むと、必要なタイミングで十分な資金を確保でき、経営の安定化や事業拡大を効率的に実現できます。
新株予約権付融資のメリット・デメリットは、以下のとおりです。
新株予約権付融資を活用する「5つのメリット」
- メリット1. 株式の希薄化を防げる
- メリット2. 経営権を維持できる
- メリット3. ダウンラウンド回避のつなぎ資金として利用できる
- メリット4. 調達資金を柔軟に活用できる
- メリット5. エクイティ調達よりも迅速に実行される
新株予約権付融資を活用する「5つのデメリット」
- デメリット1. 権利行使によって株式の希薄化が生じる
- デメリット2. 元本や利息の返済義務が発生する
- デメリット3. 金利は若干高い傾向にある
- デメリット4. コベナンツ(債務者の義務)により経営の柔軟性が制限される
- デメリット5. 数百億円規模の資金調達は難しい可能性がある
新株予約権付融資は、デットとエクイティ両方の性質を兼ね備えた手法である以上、それぞれのメリット・デメリットがあることを押さえておく必要があります。
「アーリー期」や「エクイティファイナンスの直後」など、適切なタイミングで融資を申込むことも、資金調達を成功させる上で重要なポイントです。
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