会社にとって「資金繰り」や「資金調達」は、会社の将来を左右する重要なポイントです。資金繰り・資金調達が順調であれば、ストレスなく、本業の業務に集中することできますよね。
しかし業績が思うように伸びず、赤字決算になった場合、資金調達は可能なのでしょうか?
本記事では、赤字決算でも資金調達できるテクニックについて解説します。
この記事を読むことで、下記のことが実現することができます。
- 赤字決算の種類が理解できる
- 赤字決算での資金調達のコツや注意点がわかり、スムーズに融資を受けられるようになる
それでは早速、みていきましょう。
赤字決算でも資金調達はできる!覚えておくべき3つの赤字決算
赤字決算というと、非常にネガティブなイメージを持つでしょう。たしかに赤字決算は、一定期間内の支出が売り上げを上回っている状態であり、決して望ましい状況ではありません。
それでも国税庁の調査では平成29年度において全国約269万社ある法人のうち、実に62.6%が赤字決算となっており、赤字決算が決して珍しいわけではないことが分かります。
では、赤字決算の会社でも資金調達はできるのでしょうか。
結論をいえば資金調達は可能です。というのも、赤字決算には大きく分けて下記の3つの種類があり、すべてが悪いというわけではないからです。
- 創業赤字
- 臨時的赤字
- 恒常的赤字
それでは、赤字決算の3つの種類について見ていきましょう。
1. 創業赤字
赤字決算のひとつ目は創業赤字です。
創業赤字とは、その名のとおり創業時に支出が増えて赤字になっている状態です。会社を興したばかりの時期は思った以上に収入が増えず、業績が軌道に乗るまでかなりの時間がかかります。
また運転資金や設備資金が多くなると、利益が発生するまでに時間を要する場合もあるでしょう。こうしたケースではたとえ赤字決算であっても、それほど問題視されないことがほとんどです。
もちろん創業計画書にある支出を大きく上回る支出がある場合には、計画の見直しが必要かもしれません。
それでも5年以内に黒字化されることが見込まれ、当初の計画の7割程度の実績があるならば、赤字決算であっても資金調達できる可能性は高いです。
2. 臨時的赤字
続いての赤字決算のパターンは臨時的赤字です。
設備投資など一時的に大きな出費があったために赤字決算になっている場合が該当します。新規に事業を立ち上げたり、事業を拡大したりするためにはお金がかかります。
そのためある年度は赤字決算になっているものの、将来的に黒字化が見込めるのであれば金融機関は融資してくれるでしょう。なぜ赤字決算になっているのかという理由さえはっきり分かっていれば、とくに問題視されることはないはずです。
このケースでも、融資が必要な理由と使途、一時的に赤字になっている理由について明快に説明できれば、資金調達できる可能性はあります。
3. 恒常的赤字
赤字決算でもっとも危険なのは恒常的赤字です。
これは会社が常に赤字決算になっている状態です。会社の支出が恒常的に利益を上回っているため、いずれ仕入れ代金などの支払いができず倒産してしまうでしょう。
とくに資本金が少なかったり、不動産などの資産が少なかったりする企業は注意が必要です。金融機関は融資が焦げ付くことを非常に嫌います。
そのため恒常的赤字に陥っている企業に融資することは、まずないでしょう。
赤字決算でも資金調達を成功させる6つのコツ
赤字決算になっている会社でも資金調達が可能なケースがあることはわかりましたが、実際に資金調達を成功させるには下記6つのようなコツがあります。
- 金融機関を選ぶ
- 赤字が解消できると証明する
- 資金繰り計画書を作る
- 経営改善計画書を作る
- 融資を受ける金額と使途を明確にする
- ビジネスローン、ファクタリングを利用する
それぞれ、詳しく解説していきます。
1. 金融機関を選ぶ
銀行などの金融機関で、融資の可否を決める審査基準が同じだと思うかもしれませんが、実はそうではありません。金融機関のなかでもとくに借入れしやすいところがあるのです。
それが、「日本政策金融公庫」と地域密着型の「地方銀行」や「信用金庫」「信用組合」です。
政策金融公庫では中小企業の支援を積極的に行っているので、融資の面でも親身に相談に乗ってくれることが期待できます。さらに地域密着型の地方銀行や信用金庫なども、地域に根差した中小企業の支援には前向きです。
もちろん恒常的に赤字決算になっている企業への融資は難しいかもしれませんが、黒字化が期待できる程度の赤字であれば融資を受けられる可能性は十分あります。
大手銀行で融資を断られても、地方銀行であれば融資を受けられることはそれほど珍しいことではありません。
とくに中小企業が行っている事業が、地域振興や伝統を守るうえで重要なものであるなら、積極的に援助してくれるはずです。
2. 赤字が解消できると証明する
銀行は返済能力のない個人・企業に融資することはありません。したがって赤字の補填をするための融資には応じません。
しかし返済する能力があると証明できれば、赤字決算であっても融資してくれます。そこで重要となるのが、赤字が一時的なものであることや次年度に赤字が解消することを客観的な証拠に基づいて証明するという点です。
たとえばある年度では退職金の支払いや固定資産の売却損などによってたまたま赤字決算になっているのかもしれません。在庫処分などを行ったために利益が圧縮されてしまったという可能性もあります。
そうであればその支出は特別損失に区分することで、経常利益を黒字にできるかもしれません。過去何年かの決算書によって赤字が一時的なものであること、解消可能であることを証明できれば、銀行は安心して融資してくれるでしょう。
3. 資金繰り計画書を作る
銀行から融資を引き出すのに重要な書類が資金繰り計画書です。資金繰り計画書とは、月ごとの会社の収支をまとめたもので、毎月の支出や収入、さらにある特定の時期にだけ発生する費用や売り上げなどが記載されています。
現在までの資金繰り計画書だけでなく、数ヵ月先までの計画書を作成することでどのように返済するのかを金融機関側に明示することができます。たとえば現時点では赤字決算でも、新規事業によって数か月後に大幅な収益アップが見込めるとします。
この点を資金繰り計画書に記して金融機関に提出すれば、金融機関側は返済の見込みがあると判断するかもしれません。
一方資金繰り計画書を提出しないと、資金の流れを把握していないのではないかと思われる恐れがあります。赤字決算で資金調達する場合には、できるだけ資金繰り計画書を見せて説明できるようにしましょう。
4. 経営改善計画書を作る
資金繰り計画書と同様、経営改善計画書の作成も必須です。経営改善計画書とは、会社の経営状態をどのように改善させるかについて数値を用いて示したものです。
繰り返しになりますが、赤字決算の会社が融資を受けるためには、赤字が一過性のものであることを証明しなければなりません。
経営改善計画書において重要となるのが現状の分析と対策です。
現状分析では、何が原因で赤字決算に陥っているのかを数値で分析します。たとえば商品ごと、部門ごと、取引先ごと、月ごとなどに分類して、赤字の原因となっている部分を明確に把握します。
その後、赤字の原因を解消するための対策を明記します。
対策の例としては資産の売却、役員報酬の削減、新規顧客の開拓、リストラなどが挙げられます。売り上げの増加が見込めることも含めたいところですが、経営改善計画書ではやめておいたほうが賢明です。
売り上げの増加は確実なものではないため、金融機関を納得させるのには不十分だからです。あくまで、基本は現在の費用を圧縮・削減する対策を盛り込みます。
5. 融資を受ける金額と使途を明確にする
赤字決算の会社が融資を受ける場合に限りませんが、金融機関から融資を受ける場合には金額と使途を明確に示すべきです。
「借りられるだけ借りたい」、「いくらまで借りられるか」という発言は、融資を受ける際のタブーとしてよく知られています。
金融機関は、なぜその金額の融資が受けたいのか、どのようにお金を使うのかを注視しています。
そのため金額や使途が明確でない場合には融資しません。赤字決算であっても、自己資金の金額と必要となる金額が分かっていれば融資を必要とする金額がいくらかは分かるはずです。
金融機関としても、融資の申請者が使途を説明できないと非常に不安になります。運転資金であれ設備資金であれ、会社の成長のために必要な融資であることを金融機関に納得してもらえるよう、融資金額と使途はしっかりと説明できるようにしておきましょう。
6. ビジネスローン、ファクタリングを利用する
もし金融機関での借り入れが難しい場合、ビジネスローンやファクタリングを利用して資金調達を行うという方法もあります。
ビジネスローンは銀行などの金融機関と比較すると金利が高いのですが、その分審査が緩めで赤字決算の会社でも資金調達できる可能性があります。担保や保証人がいるとかなりの確率で融資を受けられることでしょう。
一方ファクタリングは、売掛債権を売却することで、最短で即日に資金を得ることができます。ファクタリングを利用すれば信用情報などにも情報が載らないので経営者たちから注目されています。
たとえ会社が赤字経営であっても、売掛先が安定した会社であれば、ファクタリング会社としては問題ありません。売掛債権が回収できればよいので、赤字決算の会社に対しても資金を提供してくれるでしょう。
すぐに資金を得られるという大きなメリットがありますが、場合によっては売掛債権の30%前後というかなり高い手数料がかかるのがデメリットです。
赤字決算の会社が資金調達をする際に注意すべき3つのこと
赤字決算の会社が資金調達する際に注意すべき点は、以下の3つです。
- 調達した資金で経営改善は
- NG公的な支払いは適正に行う
- 正直さ・誠実さが重要
こちらもそれぞれ、解説していきます。
1. 調達した資金で経営改善はNG
赤字決算の会社が調達した資金は、設備資金などの明確な使途を決めて使う必要があります。ときおり調達した資金で赤字を補填しようとする会社がありますが、これはNGです。
もちろん将来的に大きな利益が見込める場合は別ですが、赤字の補填や借り入れの返済に受けた融資をあてていると、いずれ自転車操業になります。
結果としてそれ以上の融資が受けられなくなり、会社が倒産してしまうかもしれません。赤字決算で返済のめどが立たないような状況では、融資を申し込むのではなく返済計画の見直しを金融機関に依頼した方がよいでしょう。
2. 公的な支払いは適正に行う
融資とはあまり関係ないと思えるかもしれませんが、税金や社会保険料などの支払いが滞っている場合には融資が受けにくくなります。
公的な支払いにかかる費用を業務に回したくなる気持ちはわかりますが、税金を滞納していると資金繰りに窮している企業という印象を持たれてしまいます。
とくに数年間にわたって税金を納めていなかったり、社会保険料を支払っていなかったりすると、金融機関は警戒するでしょう。
3. 正直さ・誠実さが重要
資金調達を行うために融資を申し込む場合、嘘をついて業績をよく見せようとする経営者もいます。
しかし融資において嘘は絶対についてはいけません。嘘はばれることがほとんどですし、ばれてしまった場合融資は受けることは絶望的です。
さらに、会社や経営状況の良い点だけを話すのもやめておきましょう。誠実に会社のよい点と悪い点を両方伝えた方が、金融機関の印象ははるかによくなります。正直さと誠実さが融資を受けられるかどうかの分かれ道になることも少なくないのです。
赤字決算の会社は専門家に資金調達を相談するのがおすすめ
赤字決算でも資金調達は可能といえど、黒字の会社に比べて融資が受けにくいことは間違いありません。そのため赤字決算の会社の経営者の方は、融資を受けられるか不安になることでしょう。
もし自分一人で金融機関に融資を申し込むのが不安なのであれば、資金調達の専門家に相談するのがおすすめです。
私たち「中小企業の資金調達プロ.com」のような資金調達代行業者や、行政書士や税理士、中小企業診断士など専門的な知識を持つ専門家であれば、経営改善計画書や資金繰り計画書の書き方や面談での答え方などについて具体的にアドバイスしてくれることでしょう。
さらに、赤字を早期に解消するために必要な対策についても、親身になって相談に乗ってくれるはずです。専門家と一緒に資金調達をすれば、融資を受けられる可能性も高まっていくでしょう。
【まとめ】赤字決算でも資金調達をあきらめない
赤字決算の会社であっても、原因の分析と具体的な黒字化のビジョンによって融資を受けることは十分に可能です。
ただし金融機関の融資担当者を納得させるためには、しっかりとした根拠と業績が伸びるという経営者の方の革新が必要となります。「中小企業の資金調達プロ.com」では資金繰り計画書作成や金融機関との交渉などを代行しています。
1人で資金調達するのが不安という経営者の方は、お気軽に「中小企業の資金調達プロ.com」にご相談ください。