ベンチャーキャピタル(VC)は、ベンチャー企業やスタートアップの成長支援を目的に出資することで、ハイリスク・ハイリターンを狙う投資会社です。
ベンチャーキャピタルからの資金調達を検討している方は、以下のようなお悩み・疑問をお持ちではないでしょうか?
「ベンチャーキャピタルから出資を受けて資金調達したいが、自社に適切なのか不安…」
「ベンチャーキャピタルの種類や、具体的な見つけ方を知りたい」
「ベンチャーキャピタルからの資金調達って、具体的にどんな流れで進むの?仕組みも知りたい」
ベンチャーキャピタルからの資金調達は、短期間での事業成長を目指す企業や、「株式公開(IPO)」「M&A」を予定している企業に適した方法だといえます。
具体的には、以下の特徴を持つ企業におすすめです。
ベンチャーキャピタル(VC)から資金調達しやすい企業の特徴5選
- 特徴1. 高い成長性が見込める事業を展開している
- 特徴2. 競合と差別化できる製品やサービスがある
- 特徴3. 実績やスキルが豊富な経営陣が揃っている
- 特徴4. 販売戦略が明確に描けている
- 特徴5. 将来的なIPOやM&Aを予定している
上記に当てはまる企業がベンチャーキャピタルの出資を受ければ、事業成長に向けて多額の資金を確保できるでしょう。
ベンチャーキャピタルの仕組みや種類を理解し、自社にピッタリの会社を見つけることで、資金調達の成功率をさらに高められます。
筆者は「融資代行プロ」という成果報酬型の「資金調達コンサル」サービスで、これまで多くの会社のベンチャーキャピタルからの資金調達をご支援してきました。

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本記事では、資金調達のプロである筆者が、「ベンチャーキャピタルから資金調達しやすい企業の特徴」や「ベンチャーキャピタルを見つける方法」等、以下の内容を丁寧に解説します。現場で培ったリアルで濃い内容なので、「ブックマーク」して、あとから何度も読み返すことをオススメします。
- ベンチャーキャピタルから資金調達しやすい企業の特徴
- ベンチャーキャピタルの種類や見つける方法
- ベンチャーキャピタルから資金調達する流れ
- ベンチャーキャピタルから資金調達するメリット・デメリット
- ベンチャーキャピタルの仕組みや他の資金調達方法の違い
「企業成長のために多額の資金を確保したい」「安心できるベンチャーキャピタルから出資を受けたい」とお考えの方は、ぜひ本記事を参考にしてください。
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ベンチャーキャピタル(VC)から資金調達しやすい企業の特徴5選
ベンチャーキャピタル(VC)から資金調達しやすい企業の特徴は、以下の5つです。
- 特徴1. 高い成長性が見込める事業を展開している
- 特徴2. 競合と差別化できる製品やサービスがある
- 特徴3. 実績やスキルが豊富な経営陣が揃っている
- 特徴4. 販売戦略が明確に描けている
- 特徴5. 将来的なIPOやM&Aを予定している
ベンチャーキャピタルからの資金調達を検討している方は、まず上記の特徴に当てはまるかチェックしてみましょう。
特徴1. 高い成長性が見込める事業を展開している
高い成長性が見込める事業を展開している企業は、ベンチャーキャピタルから資金調達しやすい傾向にあります。
ベンチャーキャピタルは、短期間で企業価値を高め、将来的にIPOやM&Aが実現した際に得られるリターンを狙って投資するのが特徴です。そのため、急成長が期待できる企業ほど投資対象として高い評価を受けやすく、多額の出資を前向きに検討してもらえる可能性があります。
たとえば、市場規模の拡大が見込める領域で事業を展開している企業や、新しいサービスを提供している企業は「成長性が高い」と判断されやすいでしょう。
ただし、ベンチャーキャピタルが企業の成長性を見極める際は、「新商品の投入時期」「市場への参入タイミング」も重視している点に注意が必要です。
今後の拡大が期待される市場で、高い成長性を持つ事業を展開していれば、赤字企業でもベンチャーキャピタルからの資金調達は十分可能だといえます。
特徴2. 競合と差別化できる製品やサービスがある
競合と明確に差別化できる製品やサービスを持っている企業も、ベンチャーキャピタルから資金調達できる可能性が高いです。
将来性のある市場で事業を展開していたとしても、製品やサービス、技術力が劣っていると売上は伸びず、ベンチャーキャピタルも十分なリターンを得られません。
逆に、競争の激しい市場であっても、優位に立てる差別化ポイントを持つ企業であれば、「安定的な売上拡大が見込める」と評価され、出資を受けやすくなるでしょう。
資金調達の成功率を高めるには、自社の強みを明確にアピールすることが重要です。他社との違いが一目でわかる比較軸を示したり、製品・サービスの魅力をデータや事例で説明したりすると、「将来性が高い」と納得してもらいやすくなります。
「競合との差別化」は、ベンチャーキャピタルからの評価に直結する重要なポイントとなるため、客観的な根拠を明確に示しましょう。
特徴3. 実績やスキルが豊富な経営陣が揃っている
実績やスキルが豊富な経営陣が揃っていることも、ベンチャーキャピタルから資金調達しやすい企業の特徴として挙げられます。
優れたアイデアや技術があったとしても、最終的に事業を成功へと導くのは「人」です。経営陣が優秀でなければ、事業が成功する可能性は非常に低いでしょう。
そのため、ベンチャーキャピタルは事業内容や経営方針だけでなく、それらを実行する「チームの力」も重視しています。
経営陣の実績やスキルをアピールする際は、具体的な経歴を示すのはもちろん、過去にどのような課題と向き合い、成果を出してきたのかも説明しましょう。メンバー同士の関係性や意思決定プロセス、価値観の一致度など、互いに補完し合う協力体制が整っていることも、重要なアピールポイントです。
経営者としての熱意を示しつつ、「このチームだからこそ事業を成功に導ける」と論理的に説明することで、「高い成果が期待できる」と判断されやすくなります。
特徴4. 販売戦略が明確に描けている
「どの市場で、どの顧客に、どの方法で販売するのか」という販売戦略を明確に描けている企業も、ベンチャーキャピタルから出資を受けやすいでしょう。
事業を短期間で着実に成長させるには、良質な製品やサービスを用意するだけでなく、それらをどのように販売していくのかを考えておくことも重要です。売上拡大に向けた道筋が具体的であるほど、ベンチャーキャピタルは将来の見通しを持てるため、「高いリターンが期待できる」と判断されやすくなります。
販売戦略の方向性が定まっていない場合は、以下の項目を緻密に設計した上で、ベンチャーキャピタルとの面談に臨みましょう。
- ターゲット顧客の定義(誰に売るのか)
- 想定している市場規模や成長性
- サービス提供エリア
- 販売チャネル(オンライン・代理店・直販など)
- 価格設定と料金モデル
- 営業プロセスや商談の進め方
- 顧客の継続率やリピート率を高める施策
- 競合の販売手法との違い など
具体的かつ明確な販売戦略があることで、「受注予測金額」や「見込み顧客数」などの数値も現実味を帯びてきます。
事業戦略に説得力を持たせるには、販売や営業の実績が豊富な人材を経営陣に加え、専門的な視点を取り入れるのもおすすめです。
特徴5. 将来的なIPOやM&Aを予定している
将来的なIPOやM&Aを見据えて事業を進めていることも、ベンチャーキャピタルから前向きに出資を検討してもらえる企業の大きな特徴です。
ベンチャーキャピタルは、投資先企業がIPOやM&Aを行うタイミングで株式を売却し、それによる利益で資金回収することを目的としています。そのため、IPOやM&Aまで最短距離で走りきれる事業計画を描けている企業は、将来のリターンが見込まれる点から、出資を受けやすいのです。
資金調達の成功率を高めるには、「IPOやM&Aを実行するタイミング」「それに向けた売上拡大のシナリオ」などを事業計画書に盛り込みましょう。IPOやM&Aを視野に入れ、現実的な取り組みを進めていることをアピールすれば、ベンチャーキャピタルも投資回収のイメージを持ちやすくなります。
なお、ベンチャーキャピタルは、M&Aによる資金回収よりも、IPOを出口として見据えた戦略を好む傾向です。M&Aよりプロセスが複雑で難易度も高いですが、企業やベンチャーキャピタルが得られるメリットは大きいため、出口戦略の一つとして検討してみましょう。
ベンチャーキャピタル(VC)の種類7つと代表的なVC
ベンチャーキャピタルは、運営主体によって以下の7種類に大きく分けられます。
- 種類1. 金融機関系ベンチャーキャピタル
- 種類2. 独立系ベンチャーキャピタル
- 種類3. 大学系ベンチャーキャピタル
- 種類4. 政府系ベンチャーキャピタル
- 種類5. 事業会社系ベンチャーキャピタル(CVC)
- 種類6. 地域特化型ベンチャーキャピタル
- 種類7. 海外系ベンチャーキャピタル
それぞれ代表的なベンチャーキャピタルも紹介しているため、会社選びの参考にしてください。
種類1. 金融機関系ベンチャーキャピタル
「金融機関系ベンチャーキャピタル」は、銀行や証券会社、保険会社などの金融機関が母体となって運営しているベンチャーキャピタルです。
金融機関ならではの資金力や幅広いネットワークを活かし、ベンチャー企業やスタートアップに対して大規模な投資や経営支援を行っています。
国内の代表的な金融機関系ベンチャーキャピタルは、以下のとおりです。
代表的な金融機関系ベンチャーキャピタル
金融機関系ベンチャーキャピタルから出資を受けると、多額の資金を確保できるだけでなく、手厚いサポートで事業の成長スピードを高められます。
ただし、審査は比較的厳しく、投資判断も慎重に行われるため、財務状況やガバナンス体制が整っていない企業は出資を受けにくい点に注意が必要です。
種類2. 独立系ベンチャーキャピタル
「独立系ベンチャーキャピタル」は、金融機関や大企業など特定の親会社を持たず、独自の資本でファンドを運用するベンチャーキャピタルです。
親会社の承認プロセスに縛られる必要がないため、他のベンチャーキャピタルに比べて投資判断が早く、資金調達を迅速に進められます。出資の有無を判断する際は、「市場ポテンシャル」「PMF(プロダクトマーケットフィト)の達成状況」「経営チームの能力」を重視する点も特徴です。
独立系ベンチャーキャピタルの代表例を、以下にまとめました。
代表的な独立系ベンチャーキャピタル
独立系ベンチャーキャピタルは投資対象の分野が幅広いため、独自性の高いビジネスモデルを持つスタートアップでも、資金調達のチャンスを得られます。投資先企業との相乗効果をあまり重視しない点から、「事業の成長性や将来性」を純粋に評価してもらえる点もメリットです。
ただし、比較的規模が小さい独立系ベンチャーキャピタルを選ぶと、事業成長に必要な資金を十分に確保できない可能性があるため注意しましょう。また、IPOやM&Aを前提としているため、短期間での急成長を強く求める傾向にあります。
種類3. 大学系ベンチャーキャピタル
「大学系ベンチャーキャピタル」は、大学発のベンチャー企業やスタートアップに対し、大学・研究機関が直接出資するベンチャーキャピタルです。広義には、大学の研究成果や人的資源を活かした「イノベーションの実現」や「産業創出」を目指す、民間のベンチャーキャピタルも含まれます。
企業を成長させることで得られる「キャピタルゲイン」よりも、社会貢献や技術育成を重視している点が大きな特徴です。
代表的な大学ベンチャーキャピタルについて、以下にまとめました。
代表的な大学系ベンチャーキャピタル
国立大学法人法の改正により、2022年4月からは、東大・京大を含む指定国立大学9校による大学発スタートアップへの直接投資が可能となっています。
大学系ベンチャーキャピタルからの資金調達では、大学の専門的な知見や研究者のネットワークを活用し、最先端の技術を事業に取り入れられる点がメリットです。
ただし、あくまでも大学発の企業が対象となるため、出資を受ける際は、自社事業と大学の研究内容との関連性を明確にアピールしましょう。
種類4. 政府系ベンチャーキャピタル
「政府系ベンチャーキャピタル」は、国や自治体が運営主体となり、国内産業の活性化を目的に企業へ投資するベンチャーキャピタルです。
公的機関による出資のため信頼性が高く、民間のベンチャーキャピタルでは難しい「IPOやM&Aの予定がない企業」でも、出資を受けられる可能性があります。
国内の代表的な政府系ベンチャーキャピタルは、以下のとおりです。
代表的な政府系ベンチャーキャピタル
政府系ベンチャーキャピタルは、利益追求よりも「地域振興」「経済活性化」などの目的を最優先するため、長期的な支援を受けやすい傾向にあります。
そのため、長い目で事業を成長させたい企業にとってはメリットが大きいものの、短期間で急成長を目指す企業にとっては物足りない可能性がある点に注意が必要です。
種類5. 事業会社系ベンチャーキャピタル(CVC)
「事業会社系ベンチャーキャピタル(CVC)」は、投資以外の事業を展開する大手企業が運営主体となって出資を行うベンチャーキャピタルです。
「自社事業との相乗効果」「新規事業の開拓」「技術やノウハウの獲得」などを目的に、事業戦略の一環として出資するケースが多く見られます。優先配当だけでなく普通配当も受けられる「参加型優先株」ではない条件を設定するなど、柔軟な対応が可能である点も特徴です。
国内にある事業会社系ベンチャーキャピタルの代表例を、以下にまとめました。
代表的な事業会社系ベンチャーキャピタル
事業会社系ベンチャーキャピタルから資金調達する大きなメリットは、事業提携によって、企業の成長につながるさまざまな支援を受けられることです。自社との相乗効果による利益拡大を目的に出資するため、販路拡大や共同開発、技術導入など、幅広いサポートを受けられる可能性があります。
ただし、CVCによっては、会社との関わりを強く求められたり、親会社の方針によって意思決定が制約されたりするケースもある点に注意しましょう。
種類6. 地域特化型ベンチャーキャピタル
「地域特化型ベンチャーキャピタル」は、特定地域の経済活性化や地元産業の育成を目的に投資を行うベンチャーキャピタルです。
地域の産業構造や課題を熟知している地元の金融機関がファンドに参加する点から、地域密着型の事業を展開する企業に適したVCだといえます。
各自治体における代表的な地域特化型ベンチャーキャピタルは、以下のとおりです。
代表的な地域特化型ベンチャーキャピタル
地域特化型ベンチャーキャピタルは、他のVCとは異なり、地域特有の高い技術力を持つ中小企業を積極的に支援しています。地域ならではのネットワークを活かした支援を受けられるため、地元企業としての信用力が高まりやすく、長期的に安定した事業を続けられるでしょう。
投資領域は「農林水産」「環境」「IT」など地域によって異なるため、出資を受ける際は、自社事業に合った内容なのか事前に確認しておくことが重要です。
種類7. 海外系ベンチャーキャピタル
「海外系ベンチャーキャピタル」は、海外の投資家や企業が運営するベンチャーキャピタルです。世界中の企業に投資しているベンチャーキャピタルが多く、豊富な実績とノウハウを活かして、国境を越えた事業成長を後押ししています。
大規模な出資を積極的に行っており、国内のベンチャーキャピタルより多額の資金を調達できる可能性がある点も大きな特徴です。
海外系ベンチャーキャピタルの代表例を、以下にまとめました。
代表的な海外系ベンチャーキャピタル
世界最大級のベンチャーキャピタル「セコイア・キャピタル」は、Googleなどの大企業にも出資しており、運用額は1兆ドル以上だといわれています。
多額の資金を確保しつつ、海外展開に向けた支援を受けられるのは大きなメリットですが、国際的な契約条件に対応しなければならない点には注意しましょう。
また、出資額が大きくなるほど高いリターンを求められる傾向にあるため、将来の出口戦略も考慮した上で、計画的に資金調達することが大切です。
ベンチャーキャピタル(VC)を見つける6つの方法
ベンチャーキャピタルを見つけるには、以下6つの方法があります。
- 方法1. 取引先や知人からの紹介
- 方法2. VC向けのマッチングサイト
- 方法3. ビジネスコンテストやイベント
- 方法4. 公式サイトやSNS
- 方法5. J-Startup(経済産業省のスタートアップ支援プログラム)
- 方法6. 各自治体のローカルベンチャーファンド
自社に合った方法でベンチャーキャピタルとコンタクトを取り、円滑に資金調達を進めましょう。
方法1. 取引先や知人からの紹介
ベンチャーキャピタルを見つける方法の一つとして、取引先や知人からの紹介が挙げられます。
信頼できる人からの紹介は、有力なベンチャーキャピタルと繋がるための王道ルートであり、実際に多くの企業が活用している手段です。ベンチャーキャピタルにとっても、知人や取引先からの紹介であれば安心して話を聞けるため、面談に応じてもらえる可能性があります。
具体的には、以下のような相手に相談してみましょう。
- 取引先の担当者や経営者
- 過去に一緒に働いていた上司や同僚
- 起業家コミュニティで知り合った経営者仲間
- 顧問税理士・会計士などの専門家
- すでにVCから出資を受けている他社の経営者 など
取引先や知人にベンチャーキャピタルの紹介を依頼する際は、資金調達の目的や事業内容を明確に説明することが重要です。紹介者が安心して推薦できる状態をつくっておくことで、ベンチャーキャピタルからも「信頼性の高い企業」と判断されやすくなります。
また、紹介経由であっても、自社のビジョンと方向性が一致するかどうかを見極めておけば、資金調達後も自由度の高い経営を維持できるでしょう。
方法2. VC向けのマッチングサイト
自社と相性の良いベンチャーキャピタルを見つけるには、VC向けのマッチングサイトを活用するのもおすすめです。
近年は、企業とベンチャーキャピタルをオンラインでつなぐサービスが増えており、人脈がなくても多様なVCと出会える仕組みが整っています。多くのマッチングサイトでは、自社の成長ステージや希望額に合ったVCを検索できるため、幅広い選択肢の中から効率的に取引相手を見つけられるでしょう。
ベンチャーキャピタルとマッチングできるおすすめのサイトは、以下のとおりです。
VC向けのマッチングサイト
- StartupList(スタートアップリスト)
厳正な審査を通過した投資家のみが利用できる国内最大急のマッチングサイト - LEADERS online(リーダーズオンライン)
VCやエンジェル投資家、アクセラレーターなどと幅広くマッチングできるサイト - Smart Pitch(スマートピッチ)
5分程度のピッチ動画をアップロードするだけで、複数の投資家にアピールできるマッチングサイト
ベンチャーキャピタルとのマッチ率を上げるには、プロフィールに掲載する会社情報やピッチ資料の内容を充実させるのがポイントです。自社の事業内容や経営方針、将来のビジョンなどをできるだけ明確に示すことで、ベンチャーキャピタルとのミスマッチも防げます。
また、マッチングサイトのプロフィール情報だけを鵜呑みにせず、どのような投資会社なのか入念にリサーチしておくことも重要です。
方法3. ビジネスコンテストやイベント
ビジネスコンテストやイベントへの参加も、自社にピッタリのベンチャーキャピタルを見つける効果的な方法です。起業家を支援するためのイベントをベンチャーキャピタルが主催している場合もあり、積極的に参加することで出会いのチャンスを広げられます。
特にビジネスコンテストは、優勝すると支援金を受け取れたり、入賞をきっかけにベンチャーキャピタルから声が掛かりやすくなったりする点がメリットです。
起業家向けのビジネスコンテストやイベントには多くの経営者が集まるため、企業の成長につながる「人脈作り」「事業内容のブラッシュアップ」にも役立つでしょう。
資金調達の成功率を高めるには、イベントで出会ったベンチャーキャピタルとの関係を、その場限りで終わらせないことが重要です。
感謝のメールやピッチ資料の送付など、イベント後のフォローアップを丁寧に行うことで、今後の資金調達につながる信頼関係を構築できます。
方法4. 公式サイトやSNS
「取引先や知人からの紹介」「ビジネスコンテストやイベントへの参加」が難しい場合は、公式サイトやSNSを通じて直接コンタクトを取る方法もあります。
ただし、ベンチャーキャピタルにとっては「初対面の企業」から突然連絡が来る形になるため、難易度が比較的高い方法である点は押さえておくべきです。
公式サイトやSNSを通じて直接アプローチする際は、以下のポイントを意識し、必要な情報を丁寧に伝えましょう。
- 事業の魅力が簡潔に伝わるメッセージを送る
- ピッチ資料をすぐ提示できるように準備しておく
- 相手の投資方針を事前に調べてから連絡する
- 自社のプロフィールをビジネス向けに充実させる など
返信が来る可能性は非常に低いですが、積極的にアプローチを続けることで、面談の機会を設けてもらえる可能性が高まります。
また、ベンチャーキャピタルが開催している「定期面談会」などを利用し、直接的な関係を築いてから出資の相談を持ちかけるのもおすすめです。
方法5. J-Startup(経済産業省のスタートアップ支援プログラム)
「J-Startup」は、経済産業省が実施するスタートアップ向けの支援プログラムです。世界と戦えるスタートアップを生み出すために、将来有望な企業を選定し、成長加速に必要な支援やネットワークを提供しています。
J-Startupは、事務局が選定した企業を「政府機関」「大手企業」「ベンチャーキャピタル」などとつないでいる点が特徴です。経済産業省の「お墨付き」を得た上でベンチャーキャピタルと接触できるため、「信頼性が高い企業」として出資を前向きに検討してもらえます。
また、J-Startupの選定企業が参加できる海外のピッチイベントや展示会も活用すれば、通常は接点を持ちにくい投資家にもアプローチできるでしょう。
ただし、J-Startupに参加できる企業は事務局の推薦によって選定される仕組み上、基本的には声が掛かるのを待たなければならない点に注意が必要です。
方法6. 各自治体のローカルベンチャーファンド
「ローカルベンチャーファンド」は、地域の課題解決や活性化を目的に、自治体がファンドと連携してベンチャー企業やスタートアップに出資する仕組みです。ベンチャーキャピタルと同様、企業の株式を取得して成長を支援し、将来的な株式売却による投資回収を目指していますが、利益は地域活性化のために使われます。
地域に根ざした事業や地方創生に取り組む企業であれば、ローカルベンチャーファンドを利用することで、多額の出資を受けられるでしょう。
ベンチャーキャピタルと直接的な接点を持つ方法とは異なりますが、返済不要で数千万円〜数億円規模の資金を調達できる方法としておすすめです。
たとえば、東京都では、ベンチャー企業やスタートアップ向けに「女性活躍推進」「先端技術の活用」など、さまざまな目的に応じたファンドが用意されています。単なる資金提供だけでなく、ファンドの運営事業者によるハンズオン(経営支援)も受けられるなど、充実したサポート体制が整っている点がメリットです。
東京都以外の地域で事業を営んでいる場合は、「○○県 出資 ファンド」などのキーワードで検索し、自社にピッタリのファンドを探してみましょう。
ベンチャーキャピタル(VC)から資金調達する流れ
ベンチャーキャピタルからの資金調達は、一般的に以下の流れで進めます。
資金使途や成長戦略を明確にする
資金調達の前に、まずは「自社がどのように成長していくのか」「何のためにどれだけ資金が必要なのか」を明確にすることが大切です。
ベンチャーキャピタルは、IPOやM&Aによるリターンを期待して投資するため、資金回収に向けた出口戦略も具体的に描いておきましょう。
ベンチャーキャピタルと接触する
「知人からの紹介」「マッチングサイト」「SNS」など、さまざまな方法を活用してベンチャーキャピタルとコンタクトを取ります。
前向きに出資を検討してもらえるよう、企業の将来性をアピールする「事業計画書」などを用意しておくのがポイントです。
ベンチャーキャピタルの審査を受ける
多くの場合、ベンチャーキャピタルの審査ではプレゼンテーションが行われます。VCの審査では、将来の成長性や事業モデルの検証に重点を置かれるのが特徴です。
事業の魅力や成長性が伝わる資料を作成し、「どのような支援を求めるか」も含めてわかりやすい説明を心がけましょう。
投資契約を締結する
審査に通過したら、投資額や出資比率などの条件について、ベンチャーキャピタルと交渉します。資金調達後のトラブルを避けるためには、契約内容が適切かどうかを弁護士や公認会計士などの専門家に相談しながら、慎重に交渉を進めることが重要です。
ベンチャーキャピタルとの初回面談から入金完了までは、半年〜1年程度かかるケースが多く見られます。そのため、資金調達が遅れて事業成長のタイミングを逃さないよう、スケジュールに余裕を持って準備を進めましょう。
ベンチャーキャピタル(VC)が出資する決め手(見ているポイント)
ベンチャーキャピタルからの資金調達を成功させるには、どのようなポイントを重点的にチェックしているのか把握しておく必要があります。
ベンチャーキャピタルが出資の有無を判断する「決め手」「見ているポイント」は、以下のとおりです。
▼VCが出資の有無を判断する「決め手」「見ているポイント」
| 出資の決め手 | 見ているポイント |
|---|---|
| 市場の成長性 | ・TAM(全体の市場規模) ・SAM(獲得可能な市場規模) ・SOM(顧客の市場規模) など |
| 経営チーム | ・創業者とチームの能力 ・専門性の高さ ・熱意の強さ など |
| ビジネスモデルの独自性 | ・収益構造 ・参入障壁 など |
| 事業の実績 | ・ユーザー数 ・売上 ・成長率 など |
| 出口戦略に向けた道筋 | ・事業計画書 ・ピッチ資料 など |
ベンチャーキャピタルとの面談やプレゼンに臨む際は、上記のポイントを意識することで、交渉を有利に進めやすくなります。
ベンチャーキャピタル(VC)から資金調達する「5つのメリット」
ベンチャーキャピタルから資金調達するメリットは、以下の5つです。
- メリット1. 返済義務のない資金を得られる
- メリット2. 数千万円〜数億円規模の資金を調達できる
- メリット3. 赤字企業でも審査に通る可能性がある
- メリット4. 出資を受けた実績が信用力向上につながる
- メリット5. VCの経営ノウハウやネットワークを活かせる
企業の財務状況よりも将来性を重視するため、赤字企業など融資を受けにくい場合でも、資金調達の可能性を広げられます。
メリット1. 返済義務のない資金を得られる
ベンチャーキャピタルから資金調達する最大のメリットは、返済義務のない資金を得られることです。融資とは異なり、株式の発行を通じて出資を受ける仕組み(エクイティファイナンス)のため、元本や利息を返済する必要がありません。
創業間もないベンチャー企業やスタートアップは、キャッシュフローが不安定になりやすく、融資を受けても毎月の返済が資金繰りを圧迫する可能性があります。しかし、ベンチャーキャピタルからの出資は返済義務が発生しないため、将来のコスト負担を気にせず、調達した資金をすべて成長投資に充てられるのです。
この仕組みは、さまざまな費用が発生しやすい創業初期のベンチャー企業やスタートアップにとって、大きなメリットといえるでしょう。
毎月の返済負担を軽減しつつ多額の資金を得ることで、経営の安定化を図れるのはもちろん、事業の成長スピードを加速させる施策に集中して取り組めます。
メリット2. 数千万円〜数億円規模の資金を調達できる
ベンチャーキャピタルは複数の投資家から資金を集めて出資を行うため、事業の魅力が伝われば、数千万円〜数億円規模の資金を調達できる点もメリットです。同じ株式発行による資金調達でも、「エンジェル投資家」は資金力が比較的弱く、数百万円〜2,000万円程度しか確保できない可能性があります。
融資を受ける場合も、財務状況が不安定なベンチャー企業やスタートアップは「リスクが高い」と判断されやすいため、十分な資金を借りるのは難しいでしょう。
一方、ベンチャーキャピタルからの出資は、事業計画書やプレゼンで企業の成長性をアピールすることで、創業初期でも多額の資金調達を実現できます。
必要なタイミングで十分な資金を確保できれば、「人材採用」「広告投資」「新規事業立ち上げ」など、事業拡大に向けた取り組みをスムーズに進められるでしょう。
メリット3. 赤字企業でも審査に通る可能性がある
ベンチャーキャピタルから資金調達すると、融資を受けにくい赤字企業でも、審査に通る可能性があります。
一般的に、ベンチャー企業やスタートアップは「開発費」「採用コスト」など、創業期における先行投資が多く、事業が軌道に乗るまでは赤字決算が続きやすい傾向です。そのため、金融機関からは「返済能力が低いのでは」と疑念を抱かれ、融資を断られるリスクがあります。
しかし、ベンチャーキャピタルは企業の成長性を重視するため、今は赤字でも「将来性がある」と判断されれば、多額の出資を受けやすくなるのです。
創業初期に発生した先行支出をベンチャーキャピタルからの資金調達で回収できれば、次の成長ステージに向けた投資も滞りなく進められるでしょう。
メリット4. 出資を受けた実績が信用力向上につながる
ベンチャーキャピタルから出資を受けると、企業の信用力が向上し、金融機関の融資審査や取引先との交渉を有利に進めやすくなります。
多くのベンチャー企業やスタートアップは、実績や財務基盤が十分に整っていないため、外部からの評価を高める手段が限られているのが実情です。しかし、ベンチャーキャピタルの厳しい審査を通過して資金調達に成功すれば、「将来性が見込める企業」として高い評価を受けやすくなります。
企業の信用力が向上すると、融資を受けやすくなるのはもちろん、大手企業との取引が増えるなど、ビジネスチャンスを広げられる点もメリットです。また、次の資金調達を行う際に、ベンチャーキャピタルから出資を受けた実績をアピールすると、投資家からの信頼性を高められます。
このように、ベンチャーキャピタルの出資をきっかけに企業価値が高まり、金融機関や取引先と良好な関係を構築できれば、結果として事業成長につなげられるでしょう。
メリット5. VCの経営ノウハウやネットワークを活かせる
ベンチャーキャピタルが持つ経営ノウハウやネットワークを事業に活かせる点も、VCから資金調達する大きなメリットです。
数多くのベンチャー企業やスタートアップを支援してきた実績があるため、自社の課題に応じて適切な知識・人材を提供してもらえます。
ベンチャーキャピタルから受けられる経営支援は、主に以下のとおりです。
- 上場に向けた事業戦略の策定
- 専門的な経営ノウハウの提供
- 優秀な人材(専門家など)の紹介
- 新たな提携先・取引先の紹介 など
ベンチャーキャピタルの豊富な経営資源を事業に活用できると、より迅速かつ的確な経営判断が可能となり、企業の成長スピードを大幅に加速させられます。
新たな取引先や人材と繋がることで、事業拡大のチャンスが広がれば、IPOやM&Aに向けた準備もスムーズに進められるでしょう。
ベンチャーキャピタル(VC)から資金調達する「3つのデメリット」
ベンチャーキャピタルから資金調達する際は、以下3つのデメリットに気をつける必要があります。
- デメリット1. 株式の希薄化(持株比率の低下)が生じる
- デメリット2. VCが株主になることで経営の自由度が下がる
- デメリット3. 短期間で成長できなければ投資撤退の可能性がある
資金調達後も安定した経営を続けられるよう、一つずつチェックしておきましょう。
デメリット1. 株式の希薄化(持株比率の低下)が生じる
ベンチャーキャピタルから資金調達する上で最も注意すべきデメリットは、株式の希薄化(持株比率の低下)が生じることです。出資を受ける代わりに、新株を発行してベンチャーキャピタルに譲渡するため、「発行済株式総数」が増加し、既存株主の相対的な持株比率が下がってしまいます。
株式の希薄化によって、既存株主の利益や経営への影響力が低下すれば、リスクを懸念して株式を手放す人が増え、株価がさらに下落するかもしれません。
ベンチャーキャピタルから多額の資金を調達しても、株主が減ると企業の信用力が弱まり、将来の資金調達や取引で不利になる可能性が高まります。
株式の希薄化に伴うリスクを軽減するには、資金調達のタイミングや必要な金額を慎重に検討し、計画的に準備を進めることが重要です。企業価値が上がったタイミングで資金調達を行ったり、コスト削減を図って希望額を下げたりすれば、新株の発行による影響を最小限に抑えられます。
既存株主が株式を手放すリスクを防ぐには、新株発行の目的や今後の経営戦略を丁寧に説明し、理解を得た上で出資を受けることが大切です。
デメリット2. VCが株主になることで経営の自由度が下がる
ベンチャーキャピタルから出資を受ける際は、VCが株主になることで、自由な経営が難しくなってしまう点にも注意しなければなりません。
経営の自由度が下がるのは、ベンチャーキャピタルが出資を通じて株式(議決権)を取得し、会社の意思決定に関わる立場となるためです。ベンチャーキャピタルの持株比率が高くなると、経営への影響力も強くなり、VCの成長戦略を優先せざるを得ない場面も出てくるでしょう。
経営ノウハウやネットワークを事業に活用できる点はメリットですが、過度に介入されると、経営者の描くビジョンを思い通りに実現できません。
資金調達後も自由度の高い経営を維持するためには、ベンチャーキャピタルの持株比率が極端に高くならないよう、事前に発行株数を調整しましょう。「拒否権条項」「役員選任権」など、重要事項に関する決議ルールを契約段階で慎重に設計することも大切です。
自社の事業内容や経営方針に理解を示し、伴走型で支援してくれるベンチャーキャピタルを選べば、同じ方向性で事業拡大を目指しやすくなるでしょう。
また、ベンチャーキャピタルは出口戦略へのプレッシャーも強い傾向にあります。VCにはファンドの期限があるため、一定期間内でのIPOやM&Aを求められる点にも注意が必要です。
デメリット3. 短期間で成長できなければ投資撤退の可能性がある
短期間で事業が成長しなければ、投資撤退される可能性がある点も、ベンチャーキャピタルから資金調達する際のデメリットです。
ベンチャーキャピタルは、投資先企業が成長し、IPOやM&Aを行った際に株式売却益などのリターンを得ることを前提に出資しています。そのため、企業の成長スピードが期待値を下回ると、早い段階で見切りをつけられ、投資関係を解消されてしまうのです。
ベンチャーキャピタルに投資を引き上げられると、追加の資金調達が難しくなり、事業継続や成長そのものに支障が出る可能性があります。ベンチャーキャピタルからの評価が下がることで、他の投資家も不信感を抱けば、次の調達ラウンドで不利な状況に陥るかもしれません。
ベンチャーキャピタルに投資撤退されるリスクを防ぐには、定期的に事業の進捗を共有し、期待値のズレが生まれないよう共通認識を持っておきましょう。
短期間で成果を出すようプレッシャーをかけられる場合もありますが、丁寧な対応を心がけることで、追加投資や継続的な支援を受けやすくなります。
ベンチャーキャピタル(VC)とは
「ベンチャーキャピタル(VC)」は、成長が予測できるベンチャー企業やスタートアップに出資し、将来的な株式売却益を狙う投資会社です。企業の成長によって利益を得ることを目的としているため、単なる資金援助だけでなく、経営アドバイスやネットワークの提供も行っています。
ベンチャーキャピタルからの資金調達は、融資を受けにくい企業でも、返済不要の資金を数千万円〜数億円規模で確保できる点がメリットです。
ただし、出資を受けるためには審査に通過する必要があり、「将来性がある企業なのか」「IPO(上場)の可能性はあるか」などが厳しくチェックされます。
また、ベンチャーキャピタルは、創業初期の「シード期」や、本格的に収益化を目指す「アーリー期」など、企業の成長段階に応じたタイプがあるのも特徴です。ベンチャーキャピタルから資金調達する際は、自社の成長ステージに合った会社を選び、審査に向けてプレゼンの準備を進めましょう。
ベンチャーキャピタル(VC)の仕組み
ベンチャーキャピタルは、「投資家から集めた資金をもとに有望な企業へ出資し、成長後に株式を売却して利益を得る」という仕組みで成り立っています。
いわゆる「安く買って、高く売る」というビジネスモデルであり、高いリスク許容度を持っているのが特徴です。出資先の企業が大きくなるほど、ベンチャーキャピタルが得られるリターンも大きくなります。
ベンチャーキャピタルの投資は、ファンドを通じて行われるのが一般的です。
「個人投資家」「機関投資家」「金融機関」などから集めた資金を原資として、将来性のあるベンチャー企業やスタートアップに出資し、株式を取得します。その後、投資先企業が「IPO(上場)」「M&A(企業の合併や買収)」などを行う際に株式を売却し、出資者に「株式譲渡益」として利益を配分する流れです。最後に、残った利益の一部をベンチャーキャピタルが成功報酬として受け取ります。
つまり、投資先企業が成長しなければ、ベンチャーキャピタルは利益を獲得できません。そのため、VCは経営アドバイスや人材紹介など、幅広いサポートを積極的に行います。
ベンチャーキャピタルから出資を受ける際は、上記の仕組みを踏まえ、できる限り短期間で株式上場などの結果を出せるような経営戦略を立てることが重要です。
なお、「IPOとM&Aの違いやメリット・デメリット」を詳しく知りたい方は、以下記事も併せてチェックしてみてください。

ベンチャーキャピタル(VC)と他の資金調達方法の違い
ベンチャーキャピタルの全体像を正しく把握するには、他の資金調達方法との違いを押さえておくことも重要です。ここでは、ベンチャーキャピタルと「エンジェル投資」「融資」との違いを解説します。
それぞれの違いを理解し、自社にピッタリの資金調達方法かどうかを改めて検討してみましょう。
「エンジェル投資」との違い
「エンジェル投資」は、創業間もないベンチャー企業やスタートアップに対し、個人投資家(エンジェル投資家)が出資する仕組みです。
ベンチャーキャピタルと同じく返済不要の資金を得られる手法ですが、主に以下の5点が大きく異なります。
▼ベンチャーキャピタルとエンジェル投資の違い
| ベンチャーキャピタル | エンジェル投資 | |
|---|---|---|
| 投資主体 | 複数の投資家から資金を集めた法人 | 個人投資家 |
| 投資目的 | 主に「株式売却益の獲得」のみ | 「株式売却益の獲得」「起業家支援」などさまざま |
| 出資額 | 数千万円〜数億円 | 数百万円〜2,000万円程度 |
| 投資スピード | 遅め | 早い |
| 投資ステージ | 事業拡大期(アーリー・ミドル・レイター期) | 創業前〜創業初期(シード・プレシード期) |
エンジェル投資は個人投資家による出資のため、出資額は数百万円〜2,000万円程度と比較的少額です。しかし、審査や手続きは比較的シンプルである点から、ベンチャーキャピタルよりも早いスピードで、まとまった資金を確保できる可能性があります。
ベンチャーキャピタルは「事業拡大期」、エンジェル投資は「創業初期」におすすめの手法となっているため、自社の成長ステージに合わせて活用しましょう。
なお、「エンジェル投資家を探すのにおすすめのマッチングサイト」を詳しく知りたい方は、以下記事も併せてチェックしてみてください。

「融資」との違い
「融資」は、金融機関や公的機関から資金を借り入れ、元本に利息を上乗せした金額を返済していく資金調達方法です。ベンチャーキャピタルからの資金調達とは異なり、「返済義務」が発生します。
毎月一定のコストを負担する必要はありますが、ベンチャーキャピタルのように「短期間での急成長」を求められることはありません。
ベンチャーキャピタルと融資の違いを、以下にまとめました。
▼ベンチャーキャピタルと融資の違い
| ベンチャーキャピタル | 融資 | |
|---|---|---|
| 返済義務 | なし | あり |
| 審査基準 | 企業の成長性 | 企業の財務状況や返済能力 |
| 経営への影響 | 経営の自由度が下がる可能性がある | 特になし |
| 利用できる企業 | ベンチャー企業やスタートアップが中心 | 財務基盤が安定している企業が中心 |
融資審査では、財務諸表をもとに「過去の実績」「企業の返済能力」が慎重に評価されるため、信用力の乏しい企業は断られやすい傾向にあります。安定性を重視し、赤字企業に抵抗感があるのが特徴です。
一方、ベンチャーキャピタルの審査基準は「企業の成長性」が中心であり、資金繰りが安定しにくい新興企業でも出資を受けられる点が大きな違いだといえます。
なお、「法人の銀行融資を成功させるポイント」を詳しく知りたい方は、以下記事も併せてチェックしてみてください。

「ベンチャーキャピタル(VC)の資金調達」でよくある質問
ベンチャーキャピタルの資金調達について、よくある質問を下記にまとめました。少しでも成功率を高めたい方は、ぜひ参考にしてください。
契約書に「優先株」という記載がありました。普通株とどう違うのですか?
優先株は、M&Aや会社解散時の配当分配において、普通株主(創業者)より優先的に譲渡金額や残余財産を受け取れる権利を持つ「種類株式」です。通常、ベンチャーキャピタルからの資金調達では、普通株ではなく優先株が発行されます。
日本の投資契約では、VC側に有利となる「参加型」優先株の条項が設けられるケースが一般的です。前回調達時よりも低い評価額で株式を発行する「ダウンラウンド」でIPOやM&Aを行う場合は特に、この参加型優先株によるリスクに注意しなければなりません。
参加型優先株を持っていると、VCは投資資金を優先的に回収できるだけでなく、残りの分配金についても出資比率に応じて受け取れます。株式売却額が少ない場合、参加型優先株が行使されることで、普通株主に分配される金額は大幅に減ってしまうのです。
日本では、上記の「参加型」がスタンダードとなっているため、創業者にとって非常にリスクが高い条件だといえます。
ベンチャーキャピタルから出資を受ける際は、Exit時のシミュレーションを提示してもらい、「非参加型優先株」での条件交渉を目指しましょう。事業会社系ベンチャーキャピタル(CVC)であれば、他のVCに比べて柔軟に対応してもらえる可能性があると筆者は感じています。
ベンチャーキャピタル(VC)はどのような方法で株価を算定しますか?
ベンチャーキャピタルが取り入れている株価算定方法は、以下の4つです。
- 時価純資産方式
- DCF法
- 配当還元方式
- 類似業種比準方式
さまざまな方式があるものの、どれも決定的な算定方法とは言えず、状況や対象によって使い分けられているのが現状です。とはいえ、どの方法を選んだとしても、最終的に株価は「企業価値÷発行済株式総数=株価」という計算式で算定されています。
つまり、企業価値が上がっているタイミングで少量の株式を発行すれば、株式の希薄化を抑えつつ、効率的に資金調達できるのです。
一方、ベンチャーキャピタルはできるだけ安い価格で、より多くの株式を取得しようとする傾向があります。上場企業と異なり、未上場企業には株式市場がないため、ベンチャーキャピタルとの交渉を通じて株価を決定するしかありません。
資金調達が思うように進んでいない状態であれば、ベンチャーキャピタルが有利な立場で交渉を進めることになるでしょう。
ベンチャーキャピタル(VC)の大手企業は?
ベンチャーキャピタルの大手企業は、以下のとおりです。
ベンチャーキャピタルの大手企業
- 三菱UFJキャピタル(金融機関系VC):約40年にわたる投資実績を誇る
- ジャフコ(独立系VC):日本最大級のVCで、海外展開も行っている
- NTTドコモ・ベンチャーズ(事業会社系VC):情報通信分野の全般を得意としている
- セコイア・キャピタル(海外系VC):世界最大級のVCで、GoogleやYoutubeにも投資している
このように、ベンチャーキャピタルの種類は多様化しているため、それぞれの特徴を十分に理解し、資金調達の目的や事業内容に合った会社を選びましょう。
ベンチャーキャピタル(VC)と「投資ファンド」の違いは何ですか?
ベンチャーキャピタルと投資ファンドの大きな違いは、「投資対象」です。
投資ファンドは、複数の投資家から集めた資金をまとめて企業に投資し、そこで得た利益を投資家に還元する仕組みを指します。
ベンチャーキャピタルは「創業初期のベンチャー企業やスタートアップ」を投資対象とするのに対し、投資ファンドは「新興企業」「成熟企業」など幅広いです。
ベンチャーキャピタルの投資対象は限られますが、ベンチャー企業やスタートアップに特化した知識・経験を持っているため、より適切な支援を受けられるでしょう。
ベンチャー企業の資金調達にはどんな方法がありますか?
ベンチャー企業におすすめの資金調達方法は、以下のとおりです。
- 金融機関の融資(ベンチャーデット)
- 補助金・助成金
- クラウドファンディング
- ファクタリング
ベンチャーキャピタル以外の方法で資金調達を行う際は、まず「金融機関の融資」から検討しましょう。特におすすめなのは、ベンチャー企業やスタートアップ向けの融資制度である「ベンチャーデット」です。
融資(デット)と株式発行(エクイティ)の両方の性質を併せ持つ手法で、株式の希薄化を抑えながら多額の資金を調達できます。金融機関に対し、「新株予約権(将来株式を取得できる権利)」を発行することで、貸し倒れリスクを補完できる点も大きなメリットです。
従来から、ベンチャー企業と融資は相性が悪いと言われてきましたが、この仕組みによって、徐々に資金調達のハードルが下がってきています。
ベンチャーキャピタルからの資金調達で株式の希薄化が懸念される場合は、ベンチャーデットの活用も前向きに検討してみましょう。
なお、「ベンチャーデット」「補助金・助成金」「クラウドファンディング」「ファクタリング」を活用した資金調達方法について詳しく知りたい方は、以下記事も併せてチェックしてみてください。




ベンチャー企業は何年くらい生き残ることができますか?
ベンチャー企業の生存率に関する公的データは存在しませんが、一般的な中小企業と比較して低い傾向にあると言われています。
創業直後に廃業する主な理由は、「リスクを踏まえた資金計画を立てていない」「事業計画が曖昧」「財務面のノウハウが足りない」などです。
財務基盤が整っていないために信用力が足りず、資金調達のハードルが上がっていることも、事業が長続きしない理由として挙げられます。
特に事業計画は、ベンチャーキャピタルから出資を受ける上でも重要な資料となるため、IPOやM&Aを見据えた精密な計画を立てましょう。
ベンチャーキャピタル(VC)の特徴や仕組みを理解して資金調達に活かそう!
ベンチャーキャピタルの特徴や仕組みを理解した上で資金調達に臨めば、交渉を有利に進めやすくなり、成長投資に必要な資金を十分に確保できます。
ベンチャーキャピタルから資金調達しやすい企業の特徴は、以下のとおりです。
ベンチャーキャピタル(VC)から資金調達しやすい企業の特徴5選
- 特徴1. 高い成長性が見込める事業を展開している
- 特徴2. 競合と差別化できる製品やサービスがある
- 特徴3. 実績やスキルが豊富な経営陣が揃っている
- 特徴4. 販売戦略が明確に描けている
- 特徴5. 将来的なIPOやM&Aを予定している
ベンチャーキャピタルからの資金調達を成功させるには、まず「知人からの紹介」「マッチングサイト」など、さまざまな方法を駆使して自社に合う会社を見つけましょう。
その後、面談やプレゼンなどで「事業の魅力」「企業の成長性」を明確にアピールすれば、赤字企業でも数千万円〜数億円規模の出資を受けられる可能性が高まります。
出資を受ける際は株式発行数を調整し、株式の希薄化リスクを回避することで、資金調達後も自由度の高い経営を維持できるはずです。本記事で紹介した内容をもとに、ベンチャーキャピタルを効果的に活用し、事業のさらなる発展にお役立ていただければ幸いです。
本記事はここまでになりますが、繰り返し読み返して理解を深めるためにも、「ブックマーク」して、あとから何度も読み返すことをオススメします。
エクイティファイナンスは、知識・経験なく「何となく」で進めると必ず失敗します。エクイティには「投資側の理解」と「ノウハウと実務経験」が必要です。融資代行プロは、金融機関出身のコンサルタントが「成果報酬型1%~」でエクイティをコンサル/代行するサービスで、これまで多くのベンチャー・スタートアップのエクイティの支援実績を積み上げてきました。そんな私達に無料のエクイティ相談をしませんか?詳細は下記ボタンを押してご確認ください。
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