企業の経営者にとって、資金調達は非常に重要な業務のひとつです。
金融機関から融資を受ける場合、タイミングを間違えると資金調達ができないだけでなく、ほかの金融機関からの借り入れも難しくなる恐れがあります。
そこで今回は、資金調達を受けるべきタイミングについて解説します。
資金調達は早いほうがいいのか

資金調達は早ければ早い方がよいと考えている経営者は少なくありません。早い段階でまとまった資金が確保できれば、スムーズに事業を軌道に乗せることができるからです
もちろん早めに資金調達のために動き始めることは大事です。しかし、一概に早い方がよいともいえません。その理由をいくつか見ていきましょう。
1. 会社としての実績がない
早めに動かない方が良いもっとも大きな理由は、会社としての実績がまだないということでしょう。
一般的に銀行などの金融機関は、会社としてすでにある程度の利益を上げている企業や、今後利益を上げる可能性が高い企業に融資を行います。
金融機関としては、融資したお金がきちんと返済されることが最重要なので、融資を申し込んだ企業がどの程度の実績や将来性があるのかを細かくチェックします。その点で起業したばかりの経営者の方は不利な立場にあります。
まだ業務が始まったばかりで実績がなかったり、利益を上げられていなかったりすれば、銀行から融資を受けるのはかなり難しいでしょう。
今後の業績の予測などを提示して将来性があることをアピールすることも可能ですが、説得力のある根拠に基づいた説明が求められます。
2. 資金調達に割く時間が少ない
例えば会社を立ち上げたばかりの時期などは、業務を軌道に乗せるために多く働かなければならず、非常に忙しい時期です。本業に集中しなければならない時期に、資金調達の準備を並行して行うのはかなり大変でしょう。
あまり時間がないなかで資金調達の準備を行うと、書類にミスが出たり必要書類を揃えられなかったりして余計に時間がかかってしまう恐れがあります。
資金調達については、業務が軌道に乗って少し落ち着いてから考えた方がよいかもしれません。
3. 準備が整わない
資金調達のため金融機関に融資を申し込む際には、準備が必要です。
書類の作成はもちろんですが、現状の分析や将来の業績の予測などもしっかり行っておかないと、説得力のある資料作りはできません。
資金調達をする前にしなければいけないこと

資金調達は非常に重要な業務であるとともに、入念な準備が必要な業務でもあります。ここでは、資金調達をする前にしておかなければならないことを見てみましょう。
1. 事業計画書・収支計画表の作成
何よりも重要なのは、事業計画書と収支計画表の作成です。
事業計画書とはその名のとおり、どのような事業を行っていくのかを記した書類です。しかし、事業計画書とは事業内容を説明するためだけのものではありません。
事業計画書は、第三者に事業の魅力や将来性を伝えるためのものです。将来のビジョンや経営理念を記載することに加え、自社商品やサービスの強みを説明します。メインとなる顧客層や収益の見込みについても、客観的な証拠に基づいて作成しなければなりません。
資金調達を申し込む際には事業計画書が必ず必要となるので、しっかり準備しましょう。
さらに、収支計画表も必要書類のひとつです。
収支計画表は事業計画書を作成する際に重要となる書類で、経営にどのくらいのお金がかかるのか、自己資金や融資でその支出を賄えるのかを記したものです。
とくに資金調達の場合には、自己資金の割合なども融資の可否に大きな影響を与えるので、収支計画表の作成も綿密に行う必要があるでしょう。
2. 融資額・使途を明確にする
資金調達を行う前には、どのくらいの融資を申し込むのか、どんな目的で用いるのかを明確にしておかなければなりません。
資金調達において経営者が絶対に言ってはいけないのは、「どれだけ借りられますか」「借りられるだけ借りたい」などの言葉だといわれています。
経営者が金融機関から融資を受ける場合には、いくら借りたいか、なぜ借りたいかを経営者がしっかり把握しておかなければなりません。もし経営者が資金調達したい金額や使途について理解していないのであれば、事業計画書や収支計画表の内容が信頼に値しないものと見なされてしまう恐れがあります。
たとえば機材を購入するために資金が必要なのであれば、機材の価格、今後半年の運転資金を調達したいのであれば6ヵ月分の人件費や製品の材料費などが融資額となるでしょう。
金融機関による融資を受けるためには、融資額や資金の使途に強い説得力がなければならないのです。
3. 自己資本をできるだけ増やす
金融機関から融資を受けたいのであれば、できるだけ自己資本を増やしておくことが重要です。
金融機関は融資の審査の際に、自己資本率も重視します。つまり総資本に対する自己資本の割合の高い企業は倒産する確率が低いので、金融機関はあまり警戒せずに融資できるということです。
自己資本を増やすためには、使っていない資産を圧縮する、負債を圧縮する、親族や友人からの借入金を資本金にするなどの方法があります。さらに未納の税金を支払うことによっても、自己資本率を増やすことができます。
資金調達を行う前に、こうした方法で自己資本率を上げておけば融資を受けやすくなるでしょう。
資金調達を始めるべきタイミング

資金調達を始めるべきなのは、創業前・成長初期・事業拡大時のタイミングです。それぞれについて詳しく解説します。
創業前:事業開始にむけた準備金や売掛金が入るまでの資金
まず資金調達を始めるべきタイミングとして考えられるのは、創業前です。
資金が不足してから資金調達を始めても、実際に資金調達が成功するかはわかりません。資金が不足する前に資金調達を始める必要があります。
創業前は起業にむけて、さまざまな準備を行わなければなりません。実際に業務を始めても、いきなり黒字になるということはまずないでしょう。商品やサービスが順調に売れていたとしても、売掛金が入ってくるのはしばらく先になるからです。
どれほどよいスタートを切ったとしても、業務が始まってしばらくは支出の方が多くなるのが一般的で、場合によっては大幅な赤字になることもあります。一方資金調達は、事業計画書・収支計画表の作成などから最低でも3〜6ヵ月はかかるものとされています。
よって、まだ自己資金や別の借入金が十分にある段階で資金調達を始めるべきです。
ただし、創業前や創業直後はまだ会社としての実績がないため、かなり綿密な準備が必要になります。税理士や中小企業診断士など専門家の力を借りながら、説得力のある事業計画書・収支計画表の作成や、経営者自身の熱意が必要となるでしょう。
成長初期:事業継続のための経常運転資金
資金調達を始められる別のタイミングは成長初期です。
自社の商品やサービスが順調に売り上げを伸ばしているのであれば、資金調達のよいタイミングといえるでしょう。
自社製品やサービスが売れていれば融資など必要ないのではないかと思うかもしれませんが、実はそうではありません。会社の業績が伸び始める時期は、売り上げが計上されているものの営業利益としてはまだ黒字になっていないことが多いからです。
将来的には黒字になることが予想されるものの、売掛金がまだ入ってきていないため資金が不足する恐れがあるというケースは珍しくありません。
営業利益が黒字ではないのに、毎月仕入れや家賃、人件費は発生してきます。こうした支払いに充てるための資金を銀行から融資してもらわなければならないのです。成長初期は業績が伸び始めたタイミングで、売り上げの記録もあることから、将来黒字になると融資担当者に納得してもらいやすい状況です。
また、銀行は売上維持に必要な経常運転資金を積極的に融資する傾向があります。会社の業績が伸び始めたときは、資金調達を行うよいタイミングといえるでしょう。
事業拡大時:機材や人員を揃えるための増加運転資金
融資を受けるのに適した別のタイミングは、業務を拡大しようとしているときです。
会社の業績が順調に伸びている場合、不足している人員を採用したり、新しい機材を入れたりしたいと感じることもあるでしょう。そのようなときには銀行からの融資による資金調達を検討できます。
経営が順調であるなら、銀行の融資担当者にも返済能力があることを説得力のある仕方で説明できるでしょう。
事業計画書・収支計画表を使って、毎月の利益がいくらか、融資してほしい金額はいくらか、毎月どのくらいであれば無理なく返済できるかを説明すれば、資金調達はそれほど難しくないはずです。
事業拡大に使用する資金を増加運転資金といいますが、増加運転資金も銀行が積極的に融資するもののひとつなので、資金調達にはぴったりです。
資金調達を早くできる手段とは

資金調達にはいろいろなタイミングがありますが、早く融資実行になるのが望ましいのはいつも同じです。ここでは、資金調達を早く行うための3つの手段を紹介します。
1. 普段から金融機関と接触しておく
資金調達を早く行うための重要なポイントは、銀行との信頼関係です。人間関係でも同じことがいえますが、信頼関係が確立している相手とは話し合いもスムーズにいきます。
銀行も、まったく知らない経営者がいきなり来て融資してほしいといえば警戒しますが、普段から付き合いのある経営者であれば話し合いに応じやすいでしょう。
普段から金融機関と接触しておけば、資金調達をよりスムーズに行える可能性は高まります。経営者として、資金調達が必要ないときでも決算の報告をしたり、事業について相談をしたりしておくことが重要です。
2. 積極的に情報を開示する
スムーズな資金調達に役立つのは、会社の経営に関するよい情報だけとは限りません。よい情報も悪い情報も両方開示することが大切です。積極的な情報開示を心がければ、銀行から信頼してもらえるようになります。
銀行は融資の際、返済能力の有無に加え、経営者個人の信用も重視します。有利な情報だけでなく、不利な情報であっても正直に話すことで信頼を得やすくなるのです。
3. 融資を受けやすい時期を利用する
銀行も利益を出さなければならない企業のひとつなので、資金調達に応じてくれやすい時期があります。
とくに期末である3月・9月・12月は、融資担当者が親身になって話を聞いてくれやすい月です。資金調達がスムーズに行えるだけでなく、金額に関しても希望額に近い融資が受けられるかもしれません。
資金調達は代行委託が便利
資金調達を行うべきタイミングはいくつかありますが、その時期に経営者の方が融資の申請を行えるほど時間があるかは別の問題です。場合によってはほとんど時間が取れなかったり、本業に多くの時間や労力を割かなければならなかったりすることもあるでしょう。
どのような状況でも資金調達は必要なので、経営者は多忙を極めるはずです。そんな経営者の方におすすめなのが資金調達の代行委託です。
資金調達の代行委託は、融資の申請に必要な書類作成を代行してくれたり、銀行との交渉や面談をプロが行ってくれたりするサービスです。
とくに事業計画書・収支計画表など融資の申請に必ず必要な書類は、専門的な知識をもっているプロが作成するのがベストです。融資面談の際も、プロが同行してくれれば困ったときにアドバイスを受けられることでしょう。
資金調達の準備から融資の実行まで、きめ細やかにトータルサポートしてくれるのが、資金調達の代行委託なのです。
【まとめ】融資を受けるべきタイミングを見極めて順調な経営を行う
資金調達は思い立ったときにできるものではありません。会社として資金が必要になりそうなとき、銀行を説得できる材料があるときに行うべきものです。
普段から銀行とコミュニケーションをとっておいたり、プロの助けを借りたりすればよりスムーズに資金調達できるでしょう。
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「中小企業の資金調達のプロ.com」などの代行委託を利用すれば、少ない労力でスムーズに資金調達できるでしょう。