旅館業の開業・事業承継には多額の費用がかかるため、金融機関の融資を効果的に活用することは、資金繰りを悪化させないためにも重要です。
旅館業を営んでいる、もしくはこれから開業予定の方は、以下のようなお悩み・疑問をお持ちではないでしょうか?
「旅館業の開業で施設を新築するので、まとまった融資を受けられる融資制度を探している」
「旅館業が融資を受けるには、何から始めるべき?あまり余計な時間はかけたくない」
「融資を受けるのは初めてだから自信がない…。審査を通過するコツを知りたい」
旅館業の経営者が「開業」や「事業承継」に向けて融資制度を活用すれば、潤沢な資金を確保しながら、資金繰りに余裕のある経営を実現できます。まとまった資金を確保することで、「景気や社会情勢、気候の影響を受けやすい」「売上入金までのタイムラグがある」といった、旅館業特有の課題も解消できるでしょう。
結論、旅館業の開業・事業承継に役立つ融資制度は、以下の8つです。
旅館業の開業・事業承継に役立つ融資制度8選
- 制度1. 日本政策金融公庫|一般貸付(生活衛生貸付)
- 制度2. 日本政策金融公庫|生活衛生改善貸付
- 制度3. 日本政策金融公庫|事業承継・集約・活性化支援資金
- 制度4. 日本政策金融公庫|新規開業・スタートアップ支援資金
- 制度5. 地方自治体|制度融資
- 制度6. 民間金融機関|プロパー融資
- 制度7. 民間金融機関|信用保証協会付融資
- 制度8. 民間金融機関|不動産担保融資
以下の資金調達方法も活用すれば、さらに効率よく資金不足を賄えるでしょう。
旅館業の開業・事業承継に役立つ資金調達方法6選
- 方法1. 補助金・助成金
- 方法2. ベンチャーキャピタル(VC)による出資
- 方法3. エンジェル投資
- 方法4. 銀行のビジネスローン
- 方法5. ノンバンクのビジネスローン
- 方法6. ファクタリング
安定した経営を実現するためにも、資金調達の目的や希望額に合った融資制度を見つけてみてください。
筆者は「融資代行プロ」という成果報酬型の「融資コンサル」サービスで、これまで多くの旅館業の融資をご支援してきました。

- 資金調達・財務コンサル会社の経営者
1.融資コンサル|融資代行プロ
2.財務コンサル|御社の財務責任者
3.社外CFOサービス|御社の社外CFO
4.事業計画書の作成代行サービス - 経営コンサル会社の経営者
新規事業コンサル|(株)Pro-D-use - その他、エクイティ支援実績なども多数
これまでの支援実績
創業前後の法人〜売上80億の法人
1人法人〜個人事業主
調達額「200万円」〜「9.5億円」
多業界の資金調達 / 財務コンサル実績
本記事では、融資のプロである筆者が、「旅館業の開業・事業承継に役立つ融資制度」や「融資を成功させるコツ」等、以下の内容を丁寧に解説します。度」や「融資を成功させるコツ」等、以下の内容を丁寧に解説します。
融資の現場で培ったリアルで濃い内容なので、「ブックマーク」して、あとから何度も読み返すことをオススメします。
- 旅館業の開業・事業承継に役立つ融資制度・資金調達方法
- 旅館業の開業・事業承継に向けて融資を受ける流れ
- 旅館業の融資審査を成功させるコツ
- 旅館業の開業に成功した日本政策金融公庫の融資事例
- 旅館業の開業・事業承継に必要な資金の内訳
「どの金融機関で融資を受けられるのかわからない」「一発で融資を成功させたい」とお考えの方は、ぜひ本記事を参考にしてください。
日本政策金融公庫、商工中金、地銀、信用金庫・信用組合の融資は、知識・経験なく「何となく」で進めると必ず失敗します。融資には「金融機関の理解」と「ノウハウと実務経験」が必要です。
融資代行プロは、金融機関出身のコンサルタントが「成果報酬型1%~」で融資コンサル/代行するサービスです。これまで4,700社以上の融資相談を受け「200万円〜9.5億円の融資成功」の実績を挙げてきました。
そんな私達に無料の融資相談をしませんか?詳細は下記ページをご覧ください。
成果報酬型の融資コンサルはコチラ>
\「旅館業の融資に強い」相談先はコチラ /
※【毎日 限定5名まで】
旅館業の開業・事業承継に役立つ融資制度8選
旅館業の開業や事業承継に役立つ融資制度は、以下の8つです。
- 制度1. 日本政策金融公庫|一般貸付(生活衛生貸付)
- 制度2. 日本政策金融公庫|生活衛生改善貸付
- 制度3. 日本政策金融公庫|事業承継・集約・活性化支援資金
- 制度4. 日本政策金融公庫|新規開業・スタートアップ支援資金
- 制度5. 地方自治体|制度融資
- 制度6. 民間金融機関|プロパー融資
- 制度7. 民間金融機関|信用保証協会付融資
- 制度8. 民間金融機関|不動産担保融資
財務状況や目的によって利用できる制度が異なるため、それぞれの特徴を十分に理解した上で最適な方法を選びましょう。
制度1. 日本政策金融公庫|一般貸付(生活衛生貸付)
日本政策金融公庫は、中小企業や小規模事業者の創業・事業承継などに関する資金調達を支援することで、民間金融機関の取り組みを補完する政策金融機関です。民間金融機関の融資を受けにくい事業者の資金調達をサポートする仕組みが整っているため、信用力に不安のある方でも、低金利かつ長期での借入を実現できます。
旅館業を営む方におすすめの融資制度は「一般貸付(生活衛生貸付)」です。旅館業(旅館・ホテル営業、簡易宿所営業、下宿営業)は生活衛生関係営業に該当するため、この制度を活用して融資を受けられます。なお、「民泊は対象外」となる点には注意しましょう。
「一般貸付」の詳細情報を以下にまとめました。
▼日本政策金融公庫「一般貸付(生活衛生貸付)」の詳細情報
| 利用対象者 | 生活衛生関係の事業を営む方、理容学校・美容学校を経営する方 |
| 資金使途 | 設備資金 |
| 融資限度額 | 4億円 |
| 金利 | ・有担保:1.1〜3.9% ・無担保:2.0〜4.3% ※2025年10月28日時点の金利 |
| 返済期間 | 13年以内(うち据置期間1年以内、返済期間が7年超の場合は2年以内) |
「一般貸付」の融資限度額は最大4億円と非常に高く、館内改装や耐震工事、大規模なリニューアルなど、さまざまな設備投資に資金を活用できるのがメリットです。
返済期間は最長13年で、そのうち元金の返済を猶予される「据置期間」は1〜2年設定できるため、収益が安定するまでの間も資金繰りに余裕を持ちやすくなります。
一方、資金使途は「設備資金」に限定されており、人件費や広告宣伝費など毎月発生する「運転資金」には利用できない点に注意が必要です。また、利用の際は「旅館業法に基づく営業許可を受ける」「都道府県知事の推薦書が必要」などの条件を満たす必要があるため、事前に公式サイトを確認しておきましょう。
なお、「日本政策金融公庫の融資を攻略するコツ」について詳しく知りたい方は、以下記事を合わせてチェックしてみてください。

制度2. 日本政策金融公庫|生活衛生改善貸付
日本政策金融公庫の「生活衛生改善貸付(生活衛生関係営業経営改善資金特別貸付)」は、旅館業を含む生活衛生関係の小規模事業者におすすめの制度です。
経営改善に必要な資金を無担保・無保証人で借りられるため、財産を失うリスクや保証人に負担をかける心配がなく、事業の安定に向けた取り組みに専念できます。
「生活衛生改善貸付」の詳細情報は、以下のとおりです。
▼日本政策金融公庫「生活衛生改善貸付」の詳細情報
| 利用対象者 | 生活衛生関係の事業を営む小規模事業者であって生活衛生同業組合等の長の推薦を受けた次の方 ・常時使用する従業員が20人以下の会社または個人 |
| 資金使途 | 経営改善に必要な資金 |
| 融資限度額 | 2,000万円 |
| 金利 | 2.0% ※2025年10月28日時点の金利 |
| 返済期間 | 10年以内(うち据置期間2年以内) |
「生活衛生改善貸付」の資金使途は「経営改善に必要な資金」と幅広く設定されているため、柔軟に活用することでスムーズに運営体制を立て直せます。
通常、無担保・無保証人の融資制度は金利が高く設定されがちですが、この制度は2.00%と低水準で利用でき、毎月のコスト負担を抑えられる点も嬉しいポイントです。
ただし、「生活衛生改善貸付」は生活衛生同業組合に加入し、経営指導や組合長の推薦を受けている事業者でなければ利用できません。そのため、経営改善を検討している小規模事業者の方は、生活衛生同業組合の事業相談や研修・セミナーを積極的に活用し、良好な関係を築いておきましょう。
制度3. 日本政策金融公庫|事業承継・集約・活性化支援資金
日本政策金融公庫の「事業承継・集約・活性化支援資金」は、事業承継計画を実施するために必要な「設備資金」「運転資金」の調達を支援する融資制度です。事業承継後の第二創業や、PMI(Post Merger Integration)費用にも資金を活用できます。
小規模事業者向けの「国民生活事業」と、中小企業向けの「中小企業事業」でそれぞれ限度額や金利などが異なるため、事業規模に合った制度を活用しましょう。
なお、旅館業法において、2023年12月13日より旅館業のM&A(事業譲渡)による事業承継が可能になりました。そのため、M&Aによる事業承継を予定している方も、この制度の利用を検討してみてください。
「事業承継・集約・活性化支援資金」の詳細情報は、以下のとおりです。
▼日本政策金融公庫「事業承継・集約・活性化支援資金(国民生活事業)」の詳細情報
| 利用対象者 | ・中期的な事業承継を計画し、現経営者が後継者とともに事業承継計画を策定している方 ・安定的な経営権の確保等により事業の承継・集約を行う方および事業を承継・集約される方 など |
| 資金使途 | 設備資金および運転資金 |
| 融資限度額 | 7,200万円(うち運転資金4,800万円) |
| 金利 | ・有担保:1.25〜3.9% ・無担保:2.25〜4.3% ※2025年10月28日時点の金利 |
| 返済期間 | ・設備資金:20年以内(うち据置期間5年以内) ・運転資金:10年以内(うち据置期間5年以内) |
▼日本政策金融公庫「事業承継・集約・活性化支援資金(中小企業事業)」の詳細情報
| 利用対象者 | ・中期的な事業承継を計画し、現経営者が後継者とともに事業承継計画を策定している方 ・安定的な経営権の確保等により事業の承継・集約を行う方および事業を承継・集約される方 など |
| 資金使途 | 設備資金および長期運転資金 |
| 融資限度額 | 14億4,000万円 |
| 金利 | 上限2.5% ※2025年10月12日時点の金利 |
| 返済期間 | ・設備資金:20年以内(うち据置期間5年以内) ・運転資金:10年以内(うち据置期間5年以内) |
融資限度額は「国民生活事業」が7,200万円、「中小企業事業」が14億4,000万円と高く設定されているため、事業承継に必要な資金を幅広くカバーできます。
「中小企業事業」の場合、金利は上限2.50%と比較的低い利率に抑えられており、返済期間や条件によってはさらに低金利で融資を受けられるのもメリットです。
また、どちらの制度も「設備資金20年以内」「運転資金10年以内」と長期の返済期間を設定できるため、コスト負担を抑えながら経営を安定させられるでしょう。
なお、「事業承継・集約・活性化支援資金」には細かな利用条件が設けられています。そのため、融資を申込む際は、利用条件を満たしているか事前に確認しておきましょう。
また、「事業承継の融資で活用すべき金融機関」や「M&A目的の資金調達を成功させるポイント」について詳しく知りたい方は、以下記事を必ずチェックしてください。


制度4. 日本政策金融公庫|新規開業・スタートアップ支援資金
日本政策金融公庫の「新規開業・スタートアップ支援資金」は、新たに事業を開始する方や、事業開始後おおむね7年以内の方を対象に提供している融資制度です。
女性、若者、シニアの方や廃業歴のある方など、民間金融機関の融資を受けにくい事業者が金利負担を最小限に抑えて資金調達できる仕組みが整っています。
「新規開業・スタートアップ支援資金」の詳細情報は、以下のとおりです。
▼日本政策金融公庫「新規開業・スタートアップ支援資金」の詳細情報
| 利用対象者 | ・女性 ・若者 ・シニア ・廃業歴等があり創業に再チャレンジする方 など |
|---|---|
| 資金使途 | 設備資金および運転資金 |
| 融資限度額 | 7,200万円(うち運転資金4,800万円) |
| 金利 | ・有担保:1.9〜3.9% ・無担保:2.8〜4.3% ※2025年10月28日時点の金利 |
| 返済期間 | ・設備資金:20年以内(うち据置期間5年以内) ・運転資金:10年以内(うち据置期間5年以内) |
「新規開業・スタートアップ支援資金」の融資限度額は7,200万円と高額なため、旅館業の開業に必要な建物の建設・改修や備品購入などの設備投資にも十分対応できます。
返済期間は設備資金が20年以内、運転資金が10年以内となっており、無理のない返済計画で事業を安定させられる点も嬉しいポイントです。利率の引き下げ要件に適用する方であれば、さらに返済負担を抑えられるため、開業初期の売上が不安定になりやすい時期も資金繰りに余裕を持てるでしょう。
また、「新規開業・スタートアップ支援資金」は原則として無担保・無保証人での資金調達が可能です。担保となる資産や保証人を用意する必要がないため、返済が滞ったときに財産を失ったり周囲に負担をかけたりするリスクを軽減できます。
旅館業の開業に向けて少しでも有利な条件で融資を受けたい方は、利率の引き下げ要件に該当するかどうか、公式サイトで事前に確認しておきましょう。
なお、「新規開業・スタートアップ支援資金の審査に通るポイント」を詳しく知りたい方は、以下記事も合わせてチェックしてみてください。

制度5. 地方自治体|制度融資
制度融資は、「地方自治体」「民間金融機関」「信用保証協会」の3機関が連携して中小企業や小規模事業者に提供している融資制度です。
信用保証協会が保証人となり、自治体が利息や信用保証料の支払いを「一部」または「全額」負担することで、金融機関からの融資を受けやすくする仕組みとなっています。
たとえば、東京都新宿区が創業者向けに提供している制度融資「創業資金」の詳細情報は、以下のとおりです。
▼東京都新宿区制度融資「創業資金」の詳細情報
| 資金使途 | 創業時の運転・設備資金 |
|---|---|
| 貸付限度額 | 2,000万円 |
| 金利 | 1.8%以下(自己負担0.2%以下、区負担1.6%以下) |
| 信用保証料の補助 | 1/2補助(上限26万円) |
| 返済期間 | 7年以内 |
「創業資金」の金利は1.80%以下に設定されていますが、その大部分を区が負担するため、実質的な自己負担は0.2%以下に抑えられます。信用保証料についても、最大26万円を上限に半額の補助を受けることで、さらに返済負担を軽減しながら開業準備を進められるのは嬉しいポイントです。
また、東京都江東区では、事業承継をする事業者向けに以下のような融資制度を実施しています。
▼東京都江東区制度融資「事業承継支援資金」の詳細情報
| 資金使途 | 運転資金、設備資金 |
| 貸付限度額 | 2,000万円 |
| 金利 | 2.1% |
| 金利負担 | ・1年目:無利子 ・2年目以降:0.3%(区が1.8%補助) |
| 信用保証料の補助 | 区が全額補助 |
| 返済期間 | 9年以内(うち据置期間1年以内) |
「事業承継支援資金」は、信用保証料の支払いを区が全額補助し、利息についても大部分を負担することで、事業者の返済コストを大幅に抑えられる点が魅力です。事業承継の直後は資金繰りが不安定になりやすいため、特に初年度から無利子で資金を確保できるのは、事業を軌道に乗せる上で大きな安心材料となります。
ただし、制度融資の内容は自治体ごとに異なり、全ての地域で新宿区や江東区と同様の補助を受けられるとは限らない点に注意が必要です。また、3機関が連携することで審査期間も2〜3ヶ月程度かかる傾向にあるため、利用の際はスケジュールに余裕を持って申込み手続きを進めましょう。
なお、「制度融資の概要や、申込みの流れ」を詳しく知りたい方は、以下記事を必ずチェックしてください。

制度6. 民間金融機関|プロパー融資
「プロパー融資」は、信用保証協会の保証を付けずに、民間金融機関が100%の貸し倒れリスクを負って企業に直接貸し付ける融資制度です。
事業者の返済が滞った場合に金融機関が大きな損害を受けるため、利用できるのは信用力の高い企業が中心となっており、審査も厳格に行われます。
「プロパー融資」の詳細情報は、以下のとおりです。
▼プロパー融資の詳細情報
| 借入可能額 | 上限なし |
|---|---|
| 金利 | 1.0〜3.0%程度 |
| 審査期間 | 3週間〜2ヶ月程度 |
| 返済期間 | 運転資金:最長5年程度 設備資金:最長20年程度 |
「プロパー融資」は審査基準が厳しいものの、信用力の高さを金融機関に認めてもらえれば、低金利かつ上限なく事業規模や資金使途に応じた融資を受けられます。旅館業は開業時や事業拡大時にまとまった資金が必要となりますが、「プロパー融資」を活用することで、返済負担を抑えながら安心して経営基盤を整えられるでしょう。
また、一度審査に通ると企業の信用度が向上するため、取引先や他の金融機関に対するアピール材料となり、契約交渉や融資審査を有利に進められる点も大きなメリットです。
少しでもプロパー融資の成功率を高めるには、日頃から金融機関との関係構築を意識したり「信用保証協会付融資」で返済実績を作ったりして、信頼を積み重ねましょう。
なお、「プロパー融資の審査基準や成功のコツ」を詳しく知りたい方は、以下記事も合わせてチェックしてみてください。

制度7. 民間金融機関|信用保証協会付融資
「信用保証協会付融資」は、民間金融機関から融資を受ける際に、信用保証協会の保証を付けることで資金調達のハードルを下げられる融資制度です。
借入金の返済が難しくなった場合、信用保証協会が代わりに返済義務を負って弁済する仕組みのため、信用力の乏しい事業者でも金融機関から融資を受けやすくなります。
「信用保証協会付融資」の詳細情報は、以下のとおりです。
▼信用保証協会付融資の詳細情報
| 借入可能額 | 2億8,000万円 |
|---|---|
| 金利 | 銀行に支払う利息(2.0%前後)+信用保証協会に支払う保証料(0.45〜1.9%) |
| 審査期間 | 2週間〜1ヶ月程度 |
| 返済期間 | 運転資金:7年以内 設備資金:10年以内 |
「信用保証協会付融資」の限度額は最大2億8,000万円と高額なため、大規模な改修工事や新館建設といった設備投資にも十分対応できます。返済期間は運転資金が最長7年、設備資金が最長10年となっており、毎月のコスト負担を抑えながら無理のない計画で返済を続けられる点もメリットです。
また、信用保証協会は事業承継を行う事業者向けに、以下のような保証制度を用意しています。
▼信用保証協会で利用できる事業承継の保証制度
| 特徴 | 対象者 | 資金使途 | 限度額 | |
|---|---|---|---|---|
| 事業承継特別保証 | 経営者保証不要の事業承継を支援 | 3年以内に事業承継を予定している法人など | ・事業資金 | 2億8,000万円 |
| 事業承継サポート保証 | 持株会社による事業会社の株式買取を支援 | 新設持株会社 | ・事業会社の株式取得資金 | |
| 経営承継関連保証 | 中小企業者の事業承継を支援 | 経済産業大臣の認定を受けた中小企業者 | ・株式の取得資金 ・納税資金 ・運転資金など | |
| 特定経営承継関連保証 | 後継者による株式等取得を支援 | 経済産業大臣の認定を受けた中小企業者の代表者 | ・株式等の取得資金 ・事業用資産の取得資金など | |
| 経営承継準備関連保証 | M&Aによる事業承継を支援 | 経済産業大臣の認定を受けた中小企業者 | ・株式等の取得資金 ・事業用資産等の取得資金など | |
| 特定経営承継準備関連保証 | EBO等による事業承継を支援 | 経済産業大臣の認定を受けた事業を営んでいない個人 | ・株式等の取得資金 ・事業用資産等の取得資金など | |
| 経営承継借換関連保証 | 経営者保証なしの融資への借換 | 経済産業大臣の認定を受けた中小企業者 | ・経営の承継に必要な資金のうち、認定日から経営承継日までの借換資金 |
上記の制度を活用すれば、通常の保証では対応できない「事業承継に必要な費用」に多額の資金を充てられるため、株式や事業資産の取得などの承継準備をスムーズに進められます。
ただし、「信用保証協会付融資」で資金調達する際は、利息と信用保証料の支払いを事業者が全て負担しなければならない点に注意が必要です。利率は低めに設定されているものの、返済負担が大きくなることで資金繰りを悪化させるリスクが高まるため、事前に返済額を計算した上で計画的に利用しましょう。
なお、「信用保証協会の融資審査に落ちる理由や対処法」を詳しく知りたい方は、以下記事も合わせてチェックしてみてください。

制度8. 民間金融機関|不動産担保融資
「不動産担保融資」は、土地や建物などの不動産を担保にすることで、民間金融機関から資金を借り入れる融資制度です。
一般的に資金使途の制限がないため、運転資金や設備資金はもちろん、事業承継に伴う株式や事業資産の取得、相続税の支払いなどにも資金を活用できます。不動産を担保に差し入れることで金融機関の貸し倒れリスクが軽減され、十分な信用力や実績がない事業者でも融資を受けやすくなる点もメリットです。
「不動産担保融資」の詳細情報を、以下にまとめました。
▼不動産担保融資の詳細情報
| 借入可能額 | 不動産の評価額に掛け目(評価額の50〜80%程度)を乗じた金額 |
|---|---|
| 金利 | 1.0〜5.0%程度 |
| 審査期間 | 2週間〜2ヶ月程度 |
| 返済期間 | 最長30〜35年程度 |
「不動産担保融資」の借入額は、不動産の評価額に基づいて決定されるため、土地や建物の市場価値が高ければ数億円規模の融資を受けられる可能性があります。不動産を担保にすることで、低金利かつ長期での借入を実現でき、毎月の返済負担を抑えながら資金繰りを安定させられるのも嬉しいポイントです。
ただし、融資の実行後に借入金の返済が難しくなった場合は、金融機関に不動産を差し押さえられるリスクがある点に注意しなければなりません。宿泊施設を担保に設定すると、差し押さえによって事業継続が困難になる可能性があるため、利用の際は慎重に計画を立てて確実に返済しましょう。
なお、融資のプロである筆者がおすすめする「低金利の不動産担保ローン14社」を詳しく知りたい方は、以下記事も合わせてチェックしてみてください。

旅館業の開業・事業承継に役立つ資金調達方法6選
旅館業の開業準備や事業承継を行う際は、以下6つの資金調達方法も積極的に活用しましょう。
- 方法1. 補助金・助成金
- 方法2. ベンチャーキャピタル(VC)による出資
- 方法3. エンジェル投資
- 方法4. 銀行のビジネスローン
- 方法5. ノンバンクのビジネスローン
- 方法6. ファクタリング
それぞれのメリットを活かして融資制度に足りない部分をカバーすれば、さらに効率よく資金調達できます。
方法1. 補助金・助成金
「補助金・助成金」は、中小企業等が国や地方自治体の政策目標に沿った事業を行う場合に支給される、返済不要の資金です。
融資とは異なり返済義務が発生しないため、コスト負担を大幅に軽減しつつ、多額の資金を旅館業の開業準備や事業承継に充てられます。
旅館業の開業・事業承継におすすめの「補助金・助成金」は、以下のとおりです。
▼旅館業の開業・事業承継におすすめの「補助金」
| 補助金 | 限度額 |
|---|---|
| 観光庁「観光地・観光産業における人材不足対策事業」 | 500万円 |
| 経済産業省「事業再構築補助金」 | 1億円 |
| 経済産業省「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」 | 2,500万円 |
| 中小企業基盤整備機構「IT導入補助金」 | 3,000万円 |
| 中小企業庁「事業承継・M&A補助金」 | 1,000万円 |
▼旅館業の開業・事業承継におすすめの「助成金」
| 助成金 | 限度額 |
|---|---|
| 各都道府県「地方創生起業支援事業 起業支援金」 | 200万円 |
| 全国商工会連合会「小規模事業者持続化補助金(創業枠)」 | 200万円 |
| 東京都「創業助成事業」 | 400万円 |
| 厚生労働省「キャリアアップ助成金」 | 120万円(1人あたり) |
| 厚生労働省「人材確保等支援助成金」 | 150万円 |
| 厚生労働省「働き方改革推進支援助成金」 | 150万円 |
「補助金・助成金」は返済不要の資金であるものの、どちらを選ぶかによって支給限度額や審査難易度が大きく変わります。
たとえば、補助金は数千万円〜数億円規模の資金を確保できる可能性がある一方、厳格な審査を通過しなければ受給できないのが特徴です。
助成金の支給限度額は、数十万円〜100万円程度と比較的少額ですが、審査ハードルは低く、条件を満たせばほぼ100%の確率で受給できます。ただし、助成金は補助金に比べて対象となる経費が限られているため、利用を検討する際は、自社の目的と合致しているか十分に確認することが重要です。
申請する際は、2つの違いを理解してから必要な準備を進めることで、効率的に資金を調達し、安心して開業準備や事業承継に取り組めるでしょう。
なお、「補助金・助成金の申請方法や注意点」について詳しく知りたい方は、以下記事を必ずチェックしてください。

方法2. ベンチャーキャピタル(VC)による出資
「ベンチャーキャピタル(VC)」は、成長が期待されるベンチャー企業やスタートアップに対して資金提供し、株式を取得することで将来的な利益の獲得を狙う投資会社です。
ベンチャーキャピタルによる出資は返済義務が発生しないため、コスト負担を最小限に抑えつつ、旅館業の開業や事業承継に向けて準備を進められます。
他の資金調達方法に比べて難易度は高いものの、事業の魅力が伝われば、希望額に応じて数億円規模の資金を得られる可能性があるのは大きなメリットです。
その他、ベンチャーキャピタルから出資を受けるメリットには、以下のようなものがあります。
- 返済義務がないことで事業失敗時のリスクを減らせる
- 経営に役立つノウハウをVCから学べる
- 広い人脈を軸にビジネスチャンスを広げられる
ベンチャーキャピタルは、企業を成長させた上で上場時に株式売却益を得るビジネスモデルです。そのため、出資を受けると、経営に役立つアドバイスやサポートを受けられる可能性があります。
しかし、ベンチャーキャピタルが株主となることで経営の自由度が下がるリスクもあるため、主導権を握られないよう、譲渡する株式の割合には注意しなければなりません。また、市場の変動や競合の出現で「期待通りの成果を出せない」と判断されれば、早い段階で資金回収を求められる場合もあるでしょう。
ベンチャーキャピタルからの資金調達を成功させるには、自社の経営方針に合う会社を選び、丁寧なコミュニケーションを通して良好なパートナーシップを築くことが重要です。
なお、「ベンチャーキャピタルからの資金調達で押さえておくべきポイント」を詳しく知りたい方は、以下記事も合わせてチェックしてみてください。

方法3. エンジェル投資
「エンジェル投資」は、創業したてのベンチャー企業やスタートアップ企業に対して、「エンジェル投資家」といわれる個人投資家が投資・資金援助を行う仕組みです。
ベンチャーキャピタルと同様に返済不要の資金を得られるため、返済に備えた資金調達に頭を悩ませることなく、事業成長に必要な取り組みに専念できます。
その他、エンジェル投資家から出資を受けるメリットは、以下のとおりです。
- VCに比べてスピーディな資金調達を見込める
- 経営者として必要な知識を提供してもらえる
- 人脈を活用して他業界の企業と協力関係を築ける
エンジェル投資家は個人投資家のため、審査や承認プロセスを必要とせず、ベンチャーキャピタルに比べて迅速な投資判断を行えます。出資額は数百万円〜2,000万円程度と少なめであるものの、事業が軌道に乗るまでの運転資金や一時的な支出を賄う目的であれば、デメリットは少ないでしょう。
事業成長に役立つノウハウや人脈を得られる一方で、株主となったエンジェル投資家が経営に介入してくるリスクがある点は、ベンチャーキャピタルと同じです。とはいえ、中には経営者の判断を尊重する投資家もいるため、交流会やマッチングサイトなどを活用して相性の良い投資家を見つけましょう。
「投資に積極的なエンジェル投資家の探し方」を詳しく知りたい方は、以下記事を必ずチェックしてください。

方法4. 銀行のビジネスローン
「ビジネスローン」は、法人や個人事業主が銀行などの民間金融機関から事業資金を借り入れる資金調達方法です。
一般的にビジネスローンは金利が高く、借入額も少ない傾向ですが、銀行のビジネスローンであれば、比較的低金利で多額の資金を確保できる可能性があります。
たとえば、首都圏を中心に事業を展開する「きらぼし銀行」が提供しているビジネスローン「事業承継・相続対策サポートローン」の詳細情報は、以下のとおりです。
▼きらぼし銀行「事業承継・相続対策サポートローン」の詳細情報
| 利用対象者 | 東京都中小企業振興公社で事業承継計画の策定支援を受け、公社が作成した「提案書」および「外部専門家による意見書」を開示できる方 |
| 資金使途 | ・事業承継に必要な株式取得資金・納税資金 ・その他事業承継に必要な資金 |
| 借入可能額 | 1,000万円〜5億円 |
| 金利 | 所定利率 |
| 返済期間 | 15年以内 ※承継計画に基づく場合、最長5年間の据置期間を設定可能 |
借入可能額は最大5億円で、資金使途も事業承継に特化しているため、株式取得や納税といった承継に伴う大規模な資金需要に十分対応できます。承継計画をもとに借入する場合は最長5年の据置期間を設けられ、事業が安定するまでの体制づくりに専念できる点もメリットです。
ただし、銀行のビジネスローンは融資制度に比べると金利が高く設定されるケースも多いため、コスト負担を事前に見積もった上で利用を検討しましょう。また、取引先の銀行が旅館業向けのビジネスローンを提供しているかどうかを確かめておくことも重要です。
方法5. ノンバンクのビジネスローン
旅館業の開業や事業承継には、消費者金融や信販会社など貸付業務に特化した金融機関である「ノンバンク」のビジネスローンも活用できます。
ノンバンクのビジネスローンは、銀行や信用金庫のビジネスローンに比べて審査難易度が低く、最短即日などスピーディに資金を確保できる点が大きな特徴です。そのため、信用情報に不安がある事業者や「今すぐお金が必要」という事業者にとって、非常に役立つ資金調達方法といえます。
「ノンバンクのビジネスローン」の詳細情報は、以下のとおりです。
▼「ビジネスローン」の詳細情報
| 借入可能額 | 50万円〜1,000万円 |
|---|---|
| 金利 | 8.0〜18.0%程度 |
| 審査期間 | 即日〜1週間 |
| 返済期間 | 1年〜5年程度 |
ノンバンクのビジネスローンは、原則として担保や保証人が不要となっており、経済的・心理的な負担を軽減して融資を受けられる点がメリットです。担保の設定手続きや保証人に対する審査がないことから、資金調達までのスピードが早く、急な支払いが発生したときも迅速に対応できます。
ただし、金利は8.00〜18.00%と高めに設定されており、無計画に借りると総返済額が膨らんでコスト負担が重くなる点に注意しなければなりません。返済期間も1〜5年程度と比較的短いため、利用の際は事前に返済シミュレーションを行い、確実に返済できる分だけを借り入れましょう。
なお、筆者が厳選した「審査に通りやすいおすすめのビジネスローン」や「即日融資に対応したおすすめのビジネスローン」を知りたい方は、以下記事も合わせてチェックしてみてください。


方法6. ファクタリング
「ファクタリング」は、企業が持っている売掛金(売掛債権)をファクタリング会社に売却することで、支払期日よりも前に現金化する資金調達方法です。
将来の売上を前倒しで受け取る仕組みとなっているため、運転資金が枯渇するリスクを未然に防ぎ、安定した経営を維持できます。
「ファクタリング」の詳細情報は、以下のとおりです。
▼ファクタリングの詳細情報
| 買取可能額 | 「無制限」が多い |
|---|---|
| 金利 | 2社間:10.0〜30.0%程度 3社間:1.0〜10.0%程度 |
| 審査期間 | 最短2時間〜1週間 |
| 返済期間 | 売掛金の支払いサイトまで |
「ファクタリング」は、最短2時間〜1週間で審査が完了する「圧倒的なスピード感」が大きなメリットです。設備の故障や客室トラブルなどで急な支払いが発生しても、売掛金があればすぐに資金調達できるため、顧客の信用を失わずに適切なサービスを提供し続けられます。
なお、旅館業の中でも、個人消費者によるクレジットカード決済が多い事業者は「クレジットカード債権」をファクタリングに利用するのがおすすめです。審査では、売掛先であるクレジットカード会社の信用力が重視されるため、赤字決算や債務超過のある事業者でも安心して資金繰りを改善できます。
一方、クレジットカード会社によっては債権譲渡を禁止しているケースがあり、「ファクタリング」を利用することで契約を解除されるリスクがある点に注意が必要です。また「ファクタリング」の手数料は高く、買取額は売掛金の範囲内に限定されるため、あくまでも一時的な資金繰り対策として活用しましょう。
なお、筆者がおすすめする「即日入金ファクタリング14社」について詳しく知りたい方は、以下記事を必ずチェックしてください。

旅館業の開業・事業承継に向けて融資を受ける流れ
旅館業の開業・事業承継に向けて融資を受ける際の流れは、以下のとおりです。
事前相談・申込みを行う
融資を受ける際は、まず金融機関の窓口や電話で事前相談・申込みを行います。自社に合う融資制度について具体的な話を聞きたい場合は「事業計画書」や「決算書」を用意し、金融機関の窓口で直接相談しましょう。
必要書類を準備する
担当者から聞いた情報をもとに、必要書類を準備します。融資審査に必要な書類は、主に以下のとおりです。
- 決算書または確定申告書(直近3期分など)
- 試算表
- 資金使途明細・受注明細
- 事業計画書
- 資金繰り表
- 登記簿謄本
- 印鑑証明書
- 納税証明書
- 銀行取引明細書 など
開業前の事業者は「決算書」を用意できないため、代わりに将来の売上予測や資金計画を裏付ける資料を提出しましょう。
金融機関の審査を受ける
融資審査では、主に「担当者との面談」「現地調査」「書類審査」が行われます。面談では、事業内容や返済計画について詳しく聞かれるため、事業計画書と矛盾がないよう一貫性のある回答を心がけましょう。
金融機関や利用する制度によって多少違いはありますが、一般的な審査期間は2週間〜1ヶ月程度です。
融資契約を締結する
審査に通過したら、金融機関と融資契約を締結します。返済期間や金利、担保・保証人の有無などを確認し、不備がなければ契約手続きを進めましょう。
融資実行後は、資金繰り表などでお金の流れを常に把握し、余裕を持った資金計画で確実に返済することが重要です。
なお、「法人の銀行融資を成功に導くポイント」を詳しく知りたい方は、以下記事も合わせてチェックしてみてください。

旅館業の融資審査を成功させる7つのコツ
旅館業の融資を成功させるコツは、以下の7つです。
- コツ1. できるだけ多くの自己資金を確保する(希望額の3割程度が目安)
- コツ2. 「何のために」「どれくらいの資金が必要なのか」を整理する
- コツ3. 旅館業ならではのリスクを踏まえて事業計画書を作成する
- コツ4. 旅館業特有の財務評価基準「償却前営業利益」を意識する
- コツ5. 「隠れた負債」を適正に扱う【事業継続に不可欠な5大設備チェックリスト】
- コツ6. エース社員と経営者の一族構成をもとに人材力・組織体制をアピールする
- コツ7. 融資の専門家からアドバイスを受ける
旅館業ならではの評価基準を押さえ、事前に対策しておくことで融資を受けやすくなります。
なお、旅館業の中でもホテルの開業を検討している方には、以下の記事がおすすめです。「ホテル開業の融資を成功させるポイントや事業計画書の書き方」を詳しく解説しているため、ぜひ参考にしてください。

それでは、一つずつ見ていきましょう。
コツ1. できるだけ多くの自己資金を確保する(希望額の3割程度が目安)
旅館業の融資を成功させるには、希望額の3割程度を目安にできるだけ多くの自己資金を確保しておくことが重要です。
金融機関は融資審査で「必要な金額に対する自己資金の割合」をチェックし、「借入金に依存していないか」「確実に返済できるか」などを見極めています。審査に向けて十分な自己資金を用意しておけば、事業に対する本気度や返済能力の高さを評価され、審査を有利に進められるでしょう。
現時点で自己資金が不足している場合は、以下の方法で資金を確保するのがおすすめです。
- 補助金・助成金
- クラウドファンディング
- 退職金
- 保険の解約返戻金
- 家族・親族による贈与
- 資産の売却 など
上記の方法で資金調達する際は、第三者から一時的に借りたお金を自己資金のように見せかける「見せ金」を疑われないように注意しましょう。
基本的に自己資金として認められるのは、「貯金」「出資」などの返済義務が発生しないお金です。一時的な借入で資金を多く見せかける行為は、金融機関からの評価を下げるだけでなく、法律違反として罪に問われる可能性があります。
贈与や資産売却によって多額の資金が動く場合は、「契約書」「領収書」「通帳の入出金明細」などの資料を準備し、お金の出所を証明することも重要です。お金の流れを明確に示すことで自己資金だと認めてもらえれば、金融機関からの信頼を得やすくなり、融資の成功率を高められるでしょう。
なお、「融資以外の資金調達方法」を詳しく知りたい方は、以下記事も合わせてチェックしてみてください。

コツ2. 「何のために」「どれくらいの資金が必要なのか」を整理する
融資審査で高い評価を得るためには、「何のために(資金使途)」「どれくらいの資金が必要なのか(希望額)」を整理し、明確に示しましょう。
金融機関が融資審査で重視するのは、「貸したお金が事業を通じて収益を生み出し、そこから返済に充てる資金(返済原資)を確保できるかどうか」です。旅館業は、施設整備やスタッフ採用などで多岐にわたる資金が必要となるため、審査に臨む際はこれらの内訳を整理し、具体的な金額を提示しなければなりません。
資金使途や希望額を整理する際は、まず「設備資金」と「運転資金」を区別し、それぞれ必要な費用を明確にしましょう。
旅館業の経営に必要な「設備資金」「運転資金」は、以下のとおりです。
▼旅館業の経営に必要な「設備資金」「運転資金」
| 設備資金 | ・宿泊施設の建設・改修費用 ・客室や浴室などの整備費用 ・家具や什器などの備品購入費 など |
| 運転資金 | ・スタッフの人件費 ・備品や消耗品の購入費 ・食材等の仕入れ費 ・施設の光熱費 ・広告宣伝費 ・システム維持費 など |
金融機関に対しては「改修費3,000万円」「広告宣伝費200万円」のように、各項目の金額を明示すると説得力が増します。見積書や契約書といった金額の根拠を示す資料を添付すれば、希望額の妥当性を裏付けることができ、さらに信頼性を高められるでしょう。
これから旅館業を開業する場合は特に、事業が軌道に乗るまでの期間を考慮した上で、数ヶ月分の運転資金が必要であることを説明するのも重要なポイントです。
コツ3. 旅館業ならではのリスクを踏まえて事業計画書を作成する
融資審査を有利に進めるには、旅館業ならではのリスクを踏まえて事業計画書を作成しましょう。
旅館業は「外部環境の影響を受けやすい」「季節・時期による売上の変動が大きい」などのリスクを抱えており、資金繰りに大きな影響を与える可能性があります。これらのリスクを無視して事業計画を立てると、金融機関に「返済原資を確保できる見込みが低い」と判断されやすくなり、審査で不利になるかもしれません。
そのため、事業計画書には楽観的な売上予測だけでなく、これらのリスクを織り込んだ具体的な経営戦略を盛り込み、事業の安定性をアピールすることが大切です。
まずは基本的に押さえるべき項目として、以下の要素を事業計画書に記載しましょう。
▼旅館業における事業計画書の重要要素
売上計画は「客室単価 × 客室数 × 稼働率 × 営業日数」といった具体的な計算式に基づく予測で根拠を示しましょう。開業初期は低い稼働率からスタートし、徐々に上昇させる現実的な計画を立てます。
売上高の根拠を伝えるには、前職での実績や、業界の市場動向・成長率データなどのエビデンスを提示するのが有効です。
Web上の情報収集は集客の起点となるため、HP作成や最新情報への更新・刷新の計画を記載しましょう。ITに慣れていない経営者でも着手は必須です。
具体的には、以下のようにきめ細やかな販売方法を提示します。
▼詳細な「販売方法」の例
・OTA(オンライン旅行代理店)への登録
・ニーズに沿ったプラン設定
・日時や周辺の需要を加味した料金設定(ダイナミックプライシング) など
「誰にどのような体験を提供するのか」を具体的に示し、コンセプトを明確にした上で、地域の競合との差別化ポイントをアピールすることが重要です。
宿泊業では、人手不足の解消と業務効率化に向けて、DX(デジタルトランスフォーメーション)を推進することが重要な課題となっています。
そのため、事業計画書には「自動チェックイン機」「清掃ロボット」「PMS(ホテル管理システム)」などの具体的な導入計画を記載しましょう。
初期投資の負担を軽減させるために「IT導入補助金」「事業再構築補助金」「観光地・観光産業における人材不足対策事業」の活用を検討するのもポイントです。
これらの項目を記載した上で、以下のリスク要素を踏まえた対策を盛り込めば、さらに説得力を高められます。
▼事業計画書に記載すべきリスク要素
旅館業は建物、浴場、空調、ボイラーなどの「主要設備」に対する依存度が高く、これらが老朽化すると顧客満足度の低下に直結してしまいます。
そのため、事業計画書には主要設備の状態や耐用年数、更新時期を示し「いつ・いくら必要になるのか」を具体的に盛り込みましょう。
旅館業は繁忙期と閑散期における売上の差が大きく、天候や景気変動の影響も受けやすい業種です。
短期的な数値を示すだけでは利益構造を正しく理解してもらえないため、事業計画書には数年単位の売上予測を記載し、事業の収益性をアピールしましょう。
旅館業には「売上(顧客)が特定の従業員についてくる」という特性があり、集客やリピート率を上げる「エース社員」が貴重な経営資産となっています。
この点を踏まえ、事業計画書には社内全体のサービス品質向上につながる人材育成戦略を記載し、特定の人材に依存しすぎない経営姿勢を示すことが重要です。
一般的に、旅館業では「客室稼働率」「客室単価」のどちらかを上げると他方は下がる傾向にあり、どのように両者のバランスを取るかが収益を左右するといわれています。
金融機関は「値下げ競争に巻き込まれて利益率が下がるのでは」という点を懸念しているため、事業計画書には繁忙期・閑散期に合わせた価格戦略を記載しましょう。
さらに説得力を高めるには、客室1室あたりの収益額を示す「RevPAR(Revenue Per Available Room)」を活用するのもおすすめです。
このように、さまざまなリスクを考慮した上で数値計画や対応策を立てておくと、実現可能性の高い事業計画書となり、審査を有利に進めやすくなります。「本業に専念したい」「質の高い事業計画書を効率的に作成したい」などの場合は、作成代行サービスの利用も検討してみましょう。
以下の記事では「融資審査で評価が上がる事業計画書の作り方」や「おすすめの事業計画書作成代行サービス7社」を詳しく解説しているため、ぜひ参考にしてください。


コツ4. 旅館業特有の財務評価基準:「償却前営業利益」を意識する
旅館業の事業者が融資審査に臨む際は、旅館業特有の財務評価基準である「償却前営業利益」を意識しましょう。
償却前営業利益は、借入金の利息や税金、減価償却費などを差し引く前の実質的な利益を指し、「営業利益+減価償却費」の計算式で算出されます。
旅館業は景気変動や天候などの外部要因で損益が大きく変化しやすく、短期的な数値を追うだけでは収益構造を正しく把握できません。そこで、金融機関は償却前営業利益をチェックし、利払いや既存借入金の返済、事業継続に必要な設備資金を賄えているかを確認しているのです。
上記を踏まえ、融資を受ける際は、償却前営業利益を安定的に確保できていることを数字などで明確に示しましょう。老舗など業歴の長い企業は特に、「そもそもどの程度設けられる構造なのか」という長期的視座での収益構造を説明できるように準備しておくことも重要なポイントです。
コツ5. 「隠れた負債」を適正に扱う【事業継続に不可欠な5大設備チェックリスト】
旅館業の融資審査では、客室や宴会場などの外形的な設備だけでなく、事業継続に不可欠な主要設備の老朽化が「隠れた負債」とみなされる傾向にあります。そのため、固定資産台帳などで主要設備の老朽度合いを確認し、今後の対策を説明できるようにしておきましょう。
金融機関が特に注目する「5大設備」と「老朽化によるリスク」は、以下のとおりです。
▼金融機関が注目する「5大設備」「老朽化によるリスク」
- 1. ボイラー設備
-
不備・不良を放置すると火災や一酸化炭素中毒などの事故が誘発されます。ボイラー設備の故障による湯温の不調が生じると顧客満足度の低下にもつながるため、定期メンテナンスの有無を確認しておきましょう。
- 2. エレベーター設備
-
高齢者の宿泊客が多い施設では、特に必須の設備です。旧式設備では、保守契約の終了や修理部品の枯渇などのリスクがあるため、故障前の更新を検討しましょう。
- 3. 冷暖房設備
-
老朽化による温度調節の不具合は、顧客満足度に直結します。集中式か分離式かによって、更新工事が高額となる場合もあるため注意が必要です。
- 4. 配管
-
水道系給排水配管や温泉配管は、本管の老朽化が建物全体の大規模工事につながる可能性があります。部分的な更新をする場合も、未更新部分の負担が大きくなるでしょう。
また、老朽化による異臭や温度調整の不調が生じると顧客満足度が下がり、クレーム対応の増加に伴う従業員の士気低下につながるリスクもあります。
- 5. 屋上・屋根の防水工事
-
雨漏りが発生した段階では部分的な修繕が難しいほど損傷している可能性が高いため、定期的な点検が必要です。
上記を参考に施設管理の計画を立てておけば、「安全面や衛生面のリスクを適切に把握できている」と評価され、審査を有利に進めやすくなります。
コツ6. エース社員と経営者の一族構成をもとに人材力・組織体制をアピールする
旅館業は「売上(顧客)が特定の従業員についてくる」傾向があり、集客やリピート率を上げるには「エース社員」の存在が欠かせません。そのため、融資審査を受ける際は、「エース社員」の定着率を上げる方法や、次世代の人材を採用・育成する具体的な方針を明確に示しましょう。
また、家族経営を行っている場合は、代表者や一族の役割(調理場、女将、営業など)が、事業の強みや弱みと直結する傾向が強いです。たとえば、代表者が料理人の場合、「採算度外視の料理提供」「料理以外への関心不足」などのリスクがある一方で、生産性・透明性の高い部門になる可能性もあります。
家族経営を行う事業者が組織力をアピールするためには、このような両面の考察を丁寧に行った上で、強みを最大化しつつ弱みを補う具体策を示すことが重要です。
コツ7. 融資の専門家からアドバイスを受ける
旅館業の開業・事業承継に向けて融資の成功率を高めるには、専門家から具体的なアドバイスを受けることも検討しましょう。
融資の専門家は、金融機関が審査で重視するポイントを熟知しているため、説得力のある事業計画書を作るための的確なアドバイスが得られます。経営者だけでは気づきにくい改善点を指摘してもらえば、資金不足に陥るリスクを未然に回避でき、安定した事業運営にもつなげられるでしょう。
その他、「書類作成の負担を軽減できる」「自社にとって最適な資金調達方法を提案してもらえる」なども、融資の専門家からアドバイスを受けるメリットです。
専門家に依頼する際は、旅館業の支援実績やサポート体制などを確認し、無料相談も活用しながら、自社の目的やコストに合ったサービスを選びましょう。
「自社にあった融資で資金調達したい」方は、成果報酬型の融資コンサルサービスの「融資代行プロ」にお気軽にご相談(無料)ください。「融資代行プロ」は、「銀行」「公庫」「商工中金」といった金融機関に10〜30年も在籍した、豊富な知識・経験を持つプロのコンサルタントが、旅館業の融資を徹底的にサポートします。
その他の資金調達方法に関するアドバイスや手続きの代行も成果報酬1%~でコンサルティングしているため、お気軽に無料の融資相談をお申し込みください。
日本政策金融公庫、商工中金、地銀、信用金庫・信用組合の融資は、知識・経験なく「何となく」で進めると必ず失敗します。融資には「金融機関の理解」と「ノウハウと実務経験」が必要です。
融資代行プロは、金融機関出身のコンサルタントが「成果報酬型1%~」で融資コンサル/代行するサービスです。これまで4,700社以上の融資相談を受け「200万円〜9.5億円の融資成功」の実績を挙げてきました。
そんな私達に無料の融資相談をしませんか?詳細は下記ページをご覧ください。
成果報酬型の融資コンサルはコチラ>
\「旅館業の融資に強い」相談先はコチラ /
※【毎日 限定5名まで!!】
旅館業の開業に成功した日本政策金融公庫の融資事例
ここでは、日本政策金融公庫や信用金庫のサポートによって旅館業の開業に成功した「かまいたい宿 ONE and ONLY(ワンアンドオンリー)」の事例を紹介します。
「ONE and ONLY」は、北海道美瑛町で別の経営者が営んでいた「ヴィラ(一棟貸切の宿泊施設)」を引き継ぐ形で開業された宿泊施設です。障がい者の方や高齢者の方でも利用しやすい設備を整えており、宿泊施設で約14年間働いた経験を持つ岩本氏が運営しています。
岩本氏は、創業計画の検討を開始した直後にコロナ禍の影響を受け、このタイミングで事業を始めることに強い不安を抱えていました。
しかし、日本政策金融公庫や地元の信用金庫が親身に耳を傾け、丁寧でわかりやすい説明をしてくれたことで、審査をスムーズに進めることができました。
その結果、岩本氏は「ONE and ONLY」の開業に成功し、現在は美瑛町の魅力を最大限に味わってもらうサービスを提供しています。
今後は観光資源を「観る」だけでなく、「生産」体験できるようなプランも積極的に取り入れながら、夫婦で事業を展開していく予定です。
参考
かまいたい宿 ONE and ONLY(ワンアンドオンリー)|日本政策金融公庫
旅館業の開業・事業承継に必要な資金の内訳
建物を新築して旅館業を始める場合、必要な開業資金は1,500〜3,000万円程度が一般的だといわれています。建物の立地や客室数によっては、さらに多額の資金が必要となるでしょう。
事業承継を行う場合も、手続きを円滑に進めるためには多額の資金を用意しなければなりません。
旅館業の開業・事業承継に必要な資金の内訳は、以下のとおりです。
▼旅館業の開業・事業承継に必要な資金の内訳
| 開業資金 | ・建物の建設・改修費 ・旅館業営業許可証の申請・取得費 ・備品購入費 ・人件費 ・水道光熱費 ・広告宣伝費 ・システム維持費 ・食材等の仕入れ費 ・数ヶ月分の運転資金 など |
| 事業承継に必要な資金 | ・株式・事業資産の取得資金 ・相続・贈与に伴う納税資金 ・既存借入金の返済資金 ・登記・名義変更に伴い発生する手数料 ・専門家に依頼した場合の報酬 ・経営改善に向けた設備資金・運転資金 など |
融資を受ける際は、上記を参考に必要な費用を整理し、金額の根拠を示す資料を用意した上で審査に臨みましょう。
旅館業の融資についてよくある質問
旅館業の融資について、よくある質問を下記にまとめました。旅館業の事業者だからこそ抱えやすい課題について、具体的な解決策を示していますので、ぜひ参考にしてください。
融資制度を上手く活用して旅館業の開業・事業承継をスムーズに進めよう!
旅館業の事業者が融資制度を上手く活用すると、開業準備や事業承継を滞りなく進められるのはもちろん、経営の安定化も図りやすくなります。
旅館業におすすめの融資制度・資金調達方法は、以下のとおりです。
旅館業の開業・事業承継に役立つ融資制度8選
- 制度1. 日本政策金融公庫|一般貸付(生活衛生貸付)
- 制度2. 日本政策金融公庫|生活衛生改善貸付
- 制度3. 日本政策金融公庫|事業承継・集約・活性化支援資金
- 制度4. 日本政策金融公庫|新規開業・スタートアップ支援資金
- 制度5. 地方自治体|制度融資
- 制度6. 民間金融機関|プロパー融資
- 制度7. 民間金融機関|信用保証協会付融資
- 制度8. 民間金融機関|不動産担保融資
旅館業の開業・事業承継に役立つ資金調達方法6選
- 方法1. 補助金・助成金
- 方法2. ベンチャーキャピタル(VC)による出資
- 方法3. エンジェル投資
- 方法4. 銀行のビジネスローン
- 方法5. ノンバンクのビジネスローン
- 方法6. ファクタリング
融資を成功させるには、旅館業特有のリスクや評価基準を把握した上で、具体的な対応策や利益計画を事業計画書に盛り込みましょう。
他にも、自己資金を多めに確保したり「資金使途」「希望額」を明示したりすることで、金融機関から高い評価を得やすくなり、審査を有利に進められるはずです。
本記事はここまでになりますが、融資の現場で培ったリアルで濃い内容なので、「ブックマーク」して、あとから何度も読み返すことをオススメします。
「自社にあった融資で資金調達したい」方は、成果報酬型の融資コンサルサービスの「融資代行プロ」にお気軽にご相談(無料)ください。「融資代行プロ」は、「銀行」「公庫」「商工中金」といった金融機関に10〜30年も在籍した、豊富な知識・経験を持つプロのコンサルタントが、旅館業の融資を徹底的にサポートします。
その他の資金調達方法に関するアドバイスや手続きの代行も成果報酬1%~でコンサルティングしているため、お気軽に無料の融資相談をお申し込みください。
日本政策金融公庫、商工中金、地銀、信用金庫・信用組合の融資は、知識・経験なく「何となく」で進めると必ず失敗します。融資には「金融機関の理解」と「ノウハウと実務経験」が必要です。
融資代行プロは、金融機関出身のコンサルタントが「成果報酬型1%~」で融資コンサル/代行するサービスです。これまで4,700社以上の融資相談を受け「200万円〜9.5億円の融資成功」の実績を挙げてきました。
そんな私達に無料の融資相談をしませんか?詳細は下記ページをご覧ください。
成果報酬型の融資コンサルはコチラ>
\「旅館業の融資に強い」相談先はコチラ /
※【毎日 限定5名まで!!】
本記事で紹介した内容をもとに、融資制度を有効活用し、スムーズな開業準備や事業承継にお役立ていただければ幸いです。
_20250924.png)


